第182話 荒野戦
街を出てしばらくすると、山に掘られた隧道を見つけた。そこを抜けた先の荒野で目撃したという話だった。
だが、この日はこの場所を見つけるのに時間が掛かった為、隧道前で野営することにした。
「居るといいね」
「ん?」
「エブルドラゴンだよ」
「ああ、随分前の依頼書だったからな。もういないかもな」
「見てみたいなぁ。絵でしか見たことないし、綺麗な逆鱗なんでしょ?」
「そう言われても俺も見たことないからな。重宝されてるとは聞いたし、何より狂暴だから余計になんだろうな」
「明日のお楽しみだね」
早めに床につき、明日に備えた。
翌朝、その狭い隧道を抜けると反対側とは売って変わって、草一つ生えていない荒野になっていた。山もこちら側だけ禿げている。
見渡す限り魔物も見かけないが、あちらこちらに穴が空いてるのが確認出来る。
「ワームがいるな」
「やだなぁ。あれ、見かけが受け付けない」
「厄介だしな、それに幼体もいるだろう。アイの魔法が頼りだぞ」
「うん。纏めてやっちゃうね」
穴に注意しながら進むと、ゴリゴリと岩を噛み砕く音とともにその姿を現した。
エーデワームと呼ばれ、サンドワームより一回り小さいが鋼のような牙を持ち、何でも食らいつく雑食の魔物。
アイが炎魔法で牽制している間に、俺はシュヴェーラを喚び出してソイツに放った。
そのエーデワームは息絶えたが、他の穴から次々と別の個体が這い出てきた。その中には幼体のエーデラーバも含まれていた。
「うわぁー」
「アイさんや、頼みますぜ」
「う、りょーかい」
アイは全体に炎魔法を放った。威力は劣る代わりに広範囲にダメージを与えられる。
これにより、手前の幼体は焼かれ、ワームもある程度のダメージを負った。
「ワームのとどめは任せてくれ」
俺はシュヴェーラで、二体同時攻撃を仕掛けて斬り裂いていく。
手前を片付けると、再び炎魔法を放って幼体を焼き払ってワームは舞っている剣で斬り伏せる。
かなりの数を退治した所で、ようやく姿を見なくなった。
「終わったな」
「うん。この残骸、どうする?」
「こればかりはなぁ。近くに何もないしほっとくか」
忍びないが、死骸をそのままに進むことにした。
何度かワーム共と対峙していると、地上に出てきたワームが地面の中へ引きずりこまれた。
ソイツの悲鳴が響き渡ってほどなく、地鳴りがしたと思ったら、勢いよく地中から別の魔物が現れた。
砂煙に紛れてシルエットだけだが、やがてその姿が明らかになった。
「アイ、象牙竜のお出ましだ」
「あれがそうなのね」
象牙竜はついに俺達の前に姿を現した。
[エーデワーム]
荒れ果てた土地に好んで住まうワームタイプ。強靭な顎を持ち、牙と合間って何でも噛み砕く。
幼体はエーデラーバ。
[象牙竜]
エブルドラゴンとも呼ばれる。
上級種で狂暴な正確。翼はないが、地中に潜れる。
象牙のような逆鱗を2本生やしており、その逆鱗で獲物を貫く。




