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召喚師と竜の誉れ  作者: 柴光
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第179話 浄化

 


 焼かれながらイモルタルに身体を奪われた男は見るだけで吐き気を催す見た目となっていた。

 男は器に過ぎず、本体である怨念の集合体を浄化しなければ何度でも襲いかかってくる。


 アイが雷魔法で牽制し、クリストファーが斬り込んでいく。その間に俺はジルコートを喚び出した。

 森の中で少々手詰だが仕方ない。


「ジル、あれを連れていけるか?」

「イモルタルね。中々厄介ね、でも大丈夫よ」


 二人の攻撃を物ともせず、その手がクリストファーに触れようとしたが、ジルコートの光魔法がイモルタルへ直撃して事なきを得た。


「す、すまない、油断した」

「クリス、交代だ」


 クリストファーを呼び戻してジルコートに対峙してもらう。


『ねぇ、なんで邪魔するの?』『私達はまだ生きられたのに』『俺には夢が』『家族が心配しているんだ』『なんで僕は死んじゃったの?』『お前達はまた俺を殺すのか』


 男の口から幾人もの声が聞こえてくる。


「惨い…」

「ジル」

「ええ」


 ジルコートは光魔法の中でも特殊とされる浄化魔法を放った。

 しかし、竜の魔力をもっても一撃とはいかなかった。


『痛い』『止めてくれ』『また、また死ぬなんて』『せめて嫁に会わせてくれ』


 浄化魔法を放つ度に、耳を塞ぎたくなるような囁きが聞こえてくる。しかし、その囁く数は次第に減っていき最後の魔法を放った時。


『ありがとう。これでやっと、やっと…逝ける』


 そうして男はその場に倒れ灰になって骨すら残さなかった。


「切ないな」

「うん」

「ジル、ありがとな」

「役に立てて良かったわ」

「銀竜殿の力、見事だった」

「そう言えばそちらは?」

「クリス、新しい仲間だ」

「クリストファーと申す。以後お見知りおきを」

「私の事はジルで良いわよ」

「話は聞いていたがやはり竜は素晴らしい!」

「あら、ありがとう」

「ほら、行くぞ、こんな所に居たら気が滅入っちまう」


 ジルコートに礼を言って解除し、村へと報告に向かった。



 村の入り口には一人の女性が立っていた。俺達に気付くと女性は駆け寄ってきた。


「あの!」

「どうしました?」

「娘は、娘は生きて…」


 その言葉に頭を横に振ると、泣き崩れてしまった。なんともやるせない気持ちになる。


「アイ」

「うん。あの、良ければ家まで送ります」

「あ、ありが、ございます」

「アイ殿、手伝うよ」


 俺達は女性の家へと向かい、送り届けて去ろうとすると、話を聞いてほしいと引き留められる。

 少しだけと言うことで中へ案内され、お茶を出してもらった。


「落ち着きました?」

「はい。すみませんでした」

「いえ、それでお話しとは」

「この村は数ヵ月前から森の中に生け贄を用意するようになったんです。私達には何も知らされずにですよ!そしてある日、娘が選ばれてしまったんです」

「ある日突然人や動物が消えるって村長は言ってたよね?」

「ああ、確かに」

「そんな…」

「正体については?」

「いえ、何も聞いていません。旦那を含めた数人で森の中へ入って行きましたが、帰ってくることはありませんでした」

「村長は知ってるだろうな」

「それは間違いと思います」

「どちらにせよ、もうソイツは居ません。安心してください」

「でも私にはもう」

「元気出すんだ。貴女はまだ若いではないか。最後、サキ殿が供養した時ありがとうと言っていた」

「じゃあ、ちゃんと逝けたんですね」

「もちろん、俺の相棒が送ってます」

「有難う御座います!」

「元気が出たようだな。では私達は村長の所へ向かおう」

「いや、もう村を出よう。これ以上関わらないほうがいい」

「何故!?」

「感情的になってしまう」

「サキの言う通りだよ。クリス、下手したら村長を殺すことになっちゃう」

「あ、ああ。それもそうだな」


 俺達は女性に別れを告げて村を出ることにした。




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