第177話 鎧姿
その村に着くなり数人の村人がクリストファーに駆け寄ってきた。
「貴女は騎士様ですか!?」「お願いが御座います!」「村長の所までお越し下さい」
等、言葉を掛けられて困惑しながらも手を引かれ、村長に会いに行くことになった。
クリストファーに手招きされて俺達も後ろから着いていく。
「突然申し訳ない。騎士様に一つ頼みがある」
「なんだ?」
「この村を襲う魔物を退治して貰いたい」
村長の話によると、ここ最近家畜や人を拐っていく魔物がいるんだとか。しかし魔物を目撃したのは誰もいなく、朝方になって村人が被害に気付くそうだ。
「今までにも同じ事はあったか?」
「いや、今回が初めてだ。正体がなんなのか、何処から来たのかもわからない」
「そうか。サキ殿はこの件に携わるか?」
「悪魔の可能性もあるしな。クリスが良いなら一緒に探すか」
「頼もしいな。宜しく頼む」
「後ろの方は騎士様の従者ではないのか?」
「私達は仲間だ。格好は冒険者に見えないがな」
「クリス酷い」
「いや、私は装備の話を」
「まぁ、それならお二方も宜しく頼むぞ」
今晩は宿場でゆっくりするとして翌朝から周辺の調査を開始した。
しばらく歩いていると、森の中にポツンと建っている小屋を発見し、近付いてみると。
「うっ!なにこの臭い」
「これは酷い」
「肉の腐った臭いだ、あそこを見ろ」
促した先には骨と一緒に人間の頭や動物の頭が捨てられていた。
ここに犯人がいるのは間違いないだろう。アイとクリストファーをその場に残し、俺は片手剣を手にし小屋へと向かっていく。
すると、中から一人の男が飛び出してきて斬りかかってきた。
それを防ぐも、その攻撃に耐えられず剣を折られてしまった。だが、男の剣も剣先が折れていた為、服をかすった位で済んだ。
駆け寄ってきたクリストファーが男に斬り掛かり、男はガントレットで受け止めて剣を弾いた。
俺は拵えで男の脇腹を突こうとするが、クリストファーの腕を掴んで俺の前へと放り投げた。慌てて剣を引いて受け止めると、男の剣はすぐそこまで来ていた。
「アゲート!」
俺達は転移してその剣を避けた。
「すまない、サキ殿」
「いいさ。お前は何者だ!」
「お前達こそ何者だ。何故ここに来た?」
「村から依頼を受けた。そこの死体はお前の仕業か?」
「そうだ。俺も食わなくてはならんからな」
「だからって何故人間を」
「旨いぞぉ。特に女の太股と腹は格別だ」
それを聞いてついにアイが吐いてしまった。
「自分が何をしているのか分かっているのか?」
「分かっているからこそ此処にいる。と言うよりは逃げてきたんだがな」
「前の所でも同じ事をしていたのか」
「美食家だからな」
「貴様!」
「君も、そこの君も、ついでにお前も頂く」
取り乱しているクリストファーを落ち着かせて冷静さを取り戻してもらった。
残念だがこの男は強い。一瞬の油断が命取りだ。
「アイは下がれ。クリス、行くぞ」
「はい!」
左右に分かれ、男に駆け出した。




