第172話 紫水竜対銀竜
ジルコートが悪魔の気配を感じていた。石畳を進むと、奥の山影に協会のような建物があった。
その建物の前に人影が立っていて、俺達の姿を確認すると。
『待っていた。なんとも旨そうな者達だ』
「悪いが食糧になるつもりはない」
『ならば足掻いてくれ。そうすれば更に旨いランチにありつける。さぁ、行くぞ』
ジルコートが先制攻撃を仕掛けた。球体のブレスが悪魔に襲い掛かる。
すると、空から一体の竜が舞い降りてその攻撃を防御魔法で受け止めた。
「なんだ!?」
「紫水よ」
『銀か。しばらくぶりだな』
「アナタもそちら側なのね」
『ふん、神の盟約を忘れたのか』
「いつの話をしているの?古き者達は頭が堅いわね」
『ほざけ!それは何千年経とうと変わりはしない!我等に仇なすなら此処で死ぬがいい』
「短気ね。マスター、行くわ」
「頼むぞ」
俺とアイは悪魔を、ジルコートは紫水を相手取る。
二体の竜は空へと舞い、互いがブレスを放って牽制した。
紫水が雷魔法を撃つと、ジルコートはそれを避け、光魔法を放つ。その攻撃を紫水は防御魔法で防ぐと、再び雷魔法を放ってきた。
その魔法は避けても追いかけてきて、紫水は更に魔法を放って数を増やした。
避けられないと判断したジルコートは防御魔法を展開してその雷を受け止めた。それを破ろうと手数を増して魔法、ブレスの追加攻撃を行った。
ジルコートがいる場所は爆煙に包まれていた。紫水は勝ち誇った顔をしたが、次の瞬間その表情を曇らせた。
煙の中から一直線のブレスが飛んできて紫水を襲った。
「ガァァッ!」『クッ、まだ終わってなかったか』
「危なかったけどね」
『ならばもう一度だ!』
紫水は魔法を放ったが、ジルコートのブレスによって欠き消され、続く光魔法の直撃を受けた。
怯んだ所に光魔法である無数の光の弾が放たれ、紫水を襲うもその攻撃は防御魔法で弾かれて、ブレスを放たれた。
だが、放った位置にはジルコートの姿はなかった。
『何処へ行ったのだ!』
太陽光に隠れたジルコートは隙をついて真上から紫水にのし掛かって、共に地上へと落下させる。
叩き付けられた紫水の背中に0距離でブレスをぶつけ、その背中から退いた。
終わったと思われたが、紫水は立ち上がってジルコートの方を振り向いた。
「しぶといわね」
『これほど、遅れを取るとはな』
「フラフラじゃない。もうやめなさい」
『まだだ、まだ終わらんぞ!』
爪に雷を付与させ切りつけてくる。ジルコートは近付く紫水を尻尾で薙ぎ払いをかけるが、それを飛び越えて腕を振りかざした。
翼で防ごうと前に出し、その爪は翼を貫いて止まった。紫水はもう片方の爪を立てようとするも、それより早くジルコートの爪は腹部を切り裂き、光魔法を浴びて飛ばされていく。
立とうとするも立ち上がることは出来ず、身体が粒子へと変わっていく。
『我の敗けのようだな』
「そうね」
『フ、あながち、お前の言葉も間違ってないのかもな』
「なんの話?」
『過去よりも未来と言うことだ』
紫水は光の粒子となって消えていった。
[紫水竜]
アメシストドラゴンとも呼ばれる上級種。
紫色の水晶みたいな鱗をしており、大きさはジルコートと同じ。接近戦より魔法を得意とする。




