第165話 継ぐ者
ギルドで報酬を受け取り、買い物を済ませて宿に戻った。
「そう言えばストーンダックは元気にしてるんだろうか」
「あの時はサキの事でいっぱいだったからね、落ち着いたらあの辺に行ってみようよ」
「そうだな。肉も大量に買ってってやらないとな」
翌朝、本来の目的地である水の都を目指して街を出た。
旧天使と戦った遺跡から逆戻りした形になってしまったが、気にせず進もう。アーシェとの約束もあるから早々に都に着きたい。まぁ、いざとなればジルコートに乗せてってもらうって手もあるが。
それから数日後、山脈を抜けた俺達の前に一人の男が立ちはだかった。
その男の手には、あの時俺を貫いた剣アスカロンが握られていた。
「お前、その剣はどうした?」
「あれって私が輝竜っていうドラゴンに渡したヤツ」
『ソナタを待っていた』
そう言うと、俺に剣先を向けてきた。
「俺を待っていただと?お前は何者だ?」
『継ぐ者の力を試させて頂く』
その男は俺へと駆け出した。理由は良く分からないがやるしかないと、拵えを出して迎え撃った。
ソイツは剣を突き出してきたがそれを避け、足を掛けて転ばした。簡単に避けられるほど、軌道が読めてしまう。
男は立ち上がり、腕を振り下ろしてきたのをカウンター魔法でその剣を弾き返すと男の手から剣が放り出された。
そして首許既でで刃を止めた。
『何故止めた?』
「お前から殺気は感じられなかった。竜なんだろ?ジル達と同じ感じがする」
『その力しかと見た。託すに値するだろう』
俺が剣を下ろすと、ソイツは数歩下がって人化を解き、淡く光り輝く竜の姿へ変わった。
「あの時の燈竜か!?」
『如何にも』
「もしかしてあのヒトに何かあったの?」
「どういうことだ?輝竜に?」
『いや、これは私の意思だ。すまなかったな、試すようなことをして。』
「問題ないが」
『この剣、私達には必要がない。サキよ、仇というべき物だが、持っておけ。いずれ使うときが来るだろう』
「いや、でもこれはアイがあげたものだが」
『先程の戦いで分かっただろ?私は戦闘は不向き、あの方も然り。それは持つに相応しい者の手にある方が良い』
「こう言ってるんだから貰っとけば?」
「そうだな。受け取ろう、何から何まで有難う」
『世界を、あの方の意思を頼んだぞ』
燈竜は俺達の前から飛び去って行き、地面に突き刺さった剣が残された。
「あの方の意思って輝竜だよな?」
「多分」
「その意志と世界か…世界を救える力なんてない。やれることをやるしかないしな」
「そうだね、取り合えず進むしかないもんね」
俺はその剣を抜き、アイテムボックスに収めた。
[聖剣アスカロン]
遥か昔、ゲオルギルスがロプスの鍛冶職人に頼み打ち出されたクレイモア。同名の槍も存在したが行方は解っていない。
幾度かの竜血を吸って聖剣へと変化した。




