第162話 アイと輝竜
~アイ目線~
「サキ!やだっ!血が、血が止まらないよっ!」
サキは旧天使との戦闘で胴体を貫かれ、止血しようと手を尽くしているが止まる気配がない。
このままでは死んでしまう。泣いてる場合じゃない。
『黒き翼を翻し 奏でよ焔の夜想曲 おいで 宵闇竜ノワルヴァーデ!』
私はノワを喚び出してすがり寄った。
「ノワ!お願い、助けて!」
『主、落ち着いて。外へ運ぼう』
「う、うん!」
サキをノワの背中に乗せて、さっき機械兵が出ていった出口から脱出した。
外へ出るなり回復魔法を掛けるのだけど、傷口は塞がったがこれ以上回復する見込みはなかった。
「ノワどうしよう!」
『飛ばすから掴まってて』
「どこいくの?」
『輝の所。近くにいるはず』
何処だか分からないけどサキが助かるなら連れて行って貰いたい。その為なら何時までもノワを召喚していると心に決めた。
しかしノワの頑張りもあって、あっという間に目的地へと着いた。山脈の洞窟、そこに居たのは輝竜と呼ばれる竜だった。
『輝。久しぶり』
『ああ。急にどうした?』
『この人、銀の主。救って欲しい』
『銀のか、良いだろう』
「助かるの!?」
『わからん。コヤツの気力次第だ』
「サキなら、サキなら大丈夫!」
『そうよ。銀の主なら大丈夫』
『では始めるとする』
輝竜はホワイトドラゴンを超える回復魔法の使い手だそうだ。でも、輝竜の魔力を持ってしても助かる確率は5分だと言われた。
数人で行う蘇生の儀より遥かに高度な魔法だけど、今のサキに効くか保証もない。
私にやることはないかと聞いたのだが、特にないと。それでも傍に居たかった。
『やれるだけのことはやった。目覚めるかはわからんが』
「ありがとう。あのこれ、お礼に受け取って」
私は旧天使の残した剣を輝竜の前に置いた。
『ほう、良い剣だな。使わんのか?』
「うん、私達には必要ないもの。それに…」
『有り難く貰うとしよう。しばらくは此処に居るがいい』
「いいの?」
『ああ、構わんさ』
「ありがとう。ノワもありがとね」
『主、銀の主なら大丈夫』
「うん」
『じゃあ、還るね。輝、主達を宜しく』
『ああ』
それから10日が過ぎても意識が戻らずにいた。
「何日此処に居るの?私達の旅はまだ終わってないよ。決めたよね?故郷や両親、師匠の仇を取るって。それに夢だってあるじゃん。こんな所で終わっていいの?ねぇ、目覚ましてよサキ」
『アイよ。一つだけ方法がある』
私は輝竜の言葉に顔を上げた。
[輝竜]
シャインドラゴン。
上級種であり、銀竜達より一回り小さいが、回復魔法に関しては竜種の中でトップを誇る。
攻撃面でも光魔法を駆使するなど申し分ない力を持つ。




