第158話 対丘陵竜
ジルコートは距離を詰めながら光魔法を放つと、丘陵竜は土魔法で壁を造りそれを防ぐと、今度は進行してくるジルコートを木やツタを生やして妨害してくる。
それを回避しようと上昇すると、ジルコートを追って空高くまで木が伸び、当たりはしなかったが一瞬動きを止められてしまった。その瞬間にツタを絡ませたられて、地面へと叩き付けられた。
「グゥッ!」
『中々の速度だ』
「バカにして」
次々と絡まってくる植物を引きちぎりながら、4枚の翼を振るって全てを断ち切った。だが、ジルコートの足許がぬかるみへと変わり脚を取られ、次の瞬間に土の針山が襲ってきた。
しかし、その攻撃は防御魔法によって防がれ、反撃の一直線のブレスを放った。前動作もなく放たれたブレスに丘陵竜の土壁は追い付かず、一撃を貰った。
『ガァァッ!やりおるわ』
「お返しよ」
瞬時に飛び立つジルコート。それを追う土魔法だが、先程とは違い中々捉えることが出来ずにいた。
『速いの』
丘陵竜のクセを読んで華麗に回避して近付き、土壁の生成よりも速く光魔法を食らわせた。1度怯んだ丘陵竜はブレス、魔法と連続でダメージを食らい、とどめの爪を頭部に受けて倒れた。
『まだ、まだ終わらぬぞ』
「これ以上まだやるの?」
『本気を見せよう』
すると、丘陵竜の鱗がボロボロと剥がれ落ちていく。
「土?」
「ジル、どうした?」
「土みたいな鱗を剥いでるの。まだやる気みたいね」
姿形が変わって一回り小さくなった丘陵竜が姿を現した。どうやらこちらが本体で、周りには土の表皮を生成していたようだ。
『待たせたな。では行くぞ』
4足から西竜へ変わり、土の翼を生やして空へと舞った。
二体は空で接近し合い、爪による攻撃を繰り出している。離れたり近付いたりと繰り返し、スレ違いざまに仕掛けていた。
次に丘陵竜とジルコートが重なる瞬間、ジルコートは攻撃を避けて後ろを取ると、球体ブレスをその背中へと放った。
すると、背に生やした土の翼が崩れて落下していく。ジルコートは急降下して後を追うと、丘陵竜は身体を捻った。
土魔法を行使したようで、地上から生えてきた大木にジルコートは回避が間に合わず直撃した。
「やるわね、丘陵」
そこから抜け出して後を追うと、既に翼を生やした丘陵竜が上がってきていた。
それを上から迎え撃ち、二体はブレスを放つ。互いの球体ブレスはぶつかり拡散して光りが生じると、その中からジルコートが現れて上昇してきた丘陵竜をスレ違いざま引き裂いて、クルッと半回転すると光魔法を直撃させた。
『我の…敗けだ』
降ってきた丘陵竜は地面へと埋もれ、魔法であちこちに生えた草木は崩れて土塊へと変わった。
「お疲れ」
「スゴかったよジル!」
「ありがとう。危なかったけどね」
「結構余裕そうだったけどな」
「そんなことないわ。でも、強くなってるのは実感出来たわ」
「良いことじゃん!ホワイトドラゴンより強いかもね」
「それは言い過ぎよ」
「どちらにしても強くなることは良いことだ。守れるモノが増えるからな」
「そうね。マスターとアイを守らないとね」
「期待してるよ」
「俺も守るからな」
「フフッ、宜しくね。それじゃまたね」
俺はジルコートとシュヴェーラを解除してしゃがみ込んだ。




