第153話 愚鈍
「気付くのが遅いよ」
「あれは人の気配だったはず」
「騙されないように鍛えないと、この先主人を守ることも出来ないよ」
「貴方は何者なの?」
「俺はエーイリー。元悪魔だ」
ジルコートとエーイリーと名乗る者の会話に驚いている俺とアイ。
「天使なの?」
「今はね」
「ならアドラメレクを知っているか?」
天使と言うことなので、以前出会った天使の名を言ってみる。
「新星組だね、知ってるよ。もしかして、ザフキエルを捕らえるのに協力してくれた人?」
「協力と言うより共闘だな」
「なんだなんだ、君達のお陰で情報を得ることが出来て助かったよ。有難う」
「礼など。それで、天使がここの悪魔を倒してくれたのか?」
「そうだよ。目に余るモノだったからね」
「それこそ感謝する」
「天使の務めだよ。君達はこれからも悪魔退治するの?」
「そのつもりだが、一つ聞いていいか?」
「どうぞ」
「来るべく日ってなんのことだ?」
「それはまだ答えられない。いずれ自ずと知ることになる。その代わりと言ってはなんだけど、これを贈ろう。」
空に特大の魔法陣が浮かび上がった。
「倒せたらだけどね。それじゃあ、俺は帰って寝るから。おやすみぃ」
「おい、待て!」
「サキ!あれ…」
「マスター、あれは私達だけじゃ無理よ」
そこから現れたのは巨大な翼竜だった。
その者はバハムート、ニーズヘッグに並び、空の監視者ジズの使いとされている翼竜、ケツァルコアトルと呼ばれ、世界樹の番人としても聞いたことがある。
「あの巨竜を倒せと言うのか!?」
「風神なんて此岸でも居ないと勝てそうにないわよ」
「風神?ケツァルコアトルのことを風神と言うの?」
「ええ。風神竜は大海嘯竜、此岸竜と並ぶ強大な力を持ってるわ」
「やるしかないか」
「アイ、黒はもうイケるわよ」
「ほんと!?よし」
アイはノワルヴァーデを喚び出し、ジルコートは竜の姿へと戻っていく。
『主。お久しぶり』
「ノワ!大丈夫だった!?」
『ええ。でも喚び出し早々にアレは…』
「黒、頑張ろう」
『銀、やるだけ』
二体は飛び立ち、巨竜へと向かっていく。
[風神竜]
ケツァルコアトル。
空の監視者の使い。ジズの子供とされている文献もあるが、真実には至っていない。
全長は20メーター程の巨大さを誇る。




