第150話 不意討ち
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アイは黒甲冑の攻撃を防ぐので精一杯。2本の拵えを交互に、時折同時に斬り込んで、隙を見せなかった。
「速いっ!」
何よりスピードがあり、アイが踏み込めない。救いはパワーが無く、片手剣をで防ぎきれることだろう。
「そんな押しても女性に引かれちゃうよ」
黒甲冑が両手を振り上げた一瞬に横っ飛びで回避し、盾を構えて突撃すると反動に耐えきれず転がっていく。
「サキ!」
「おうよ!」
俺は真下に構えたバスターソードを頭部に向けて垂直に突き付けた。
「大丈夫か?」
「私はね。ほら、肩の傷見せて」
ピピ…[リブート]
後ろから機械的な音声が聞こえて振り返ろうとした。
「ガッ!」
背中に痛みが走った。どうやら剣を投げつけてきたようだ。
「サキ!このっ!」
アイが走りだし、立ち上がっていた金甲冑の装甲を貫いた。アイの剣なら魔法が付与されているのであの装甲も貫けるらしい。
再び倒れ込み、アイは何度もソイツの腹部に突き立てていた。
そして倒れて動かない黒甲冑にも同じように攻撃していた。
俺は両膝を突いてその場にしゃがみこんでいると、アイが近付いてきた。
「抜くよ」
「ああ、頼む」
「我慢してね」
「クッ!」
背中に刺さった剣を抜いて貰い、回復薬を飲む。背中と肩にガーゼを貼ってもらい、肩の弾は中で止まっている為、此処を出てから処置をすることにした。
「これでいい?」
「ああ、ありがとう。助かったよ」
「回復魔法使えないから不便過ぎる」
「薬飲んだからマシだよ」
「この深さじゃ内蔵いってるよ。早く出ないとね」
「その前に」
目の前にある鉄色の珠を手にすると台が開き、新たな珠が上がってきた。
「綺麗。これは空?」
「星に見える」
その珠は黒色で星のような光りが散りばめられていた。
「これはどんな竜なのかな?」
「想像もつかんな。見たことない竜だと思う」
「ピンチの時に使ってみようね」
「そうだな。よし、出るとするか」
此処にはバルディエルのような機械兵は居なかったが、代わりに鉄色2つと黒色の3つの竜の珠が手に入った。
俺達は外へ出ると、アイにせっつかれて肩の弾を抜くことになった。
射たれた時より激痛が走ったが、肩と背中に回復魔法を何度か行ってもらい、傷口が塞がった。
「ありがとう」
「どういたしまして。治って良かったよ」
「アイの魔力なら当然」
「その程度だから治ったの!もう気を付けてね」
「ああ、すまんな」
辺りは薄暗く日の出が近付いていたのだが、入り口の洞穴で仮眠を取ることにした。
夢だと分かる夢を見ている。
漆黒の空に放り出された感じで、星に手が届きそうな勢いだ。
やがて頭の中に声が響いた。
『汝、我を起こすとは。太陽もおるのか』
『成り行きでな。月の奴は連れが持って行ったみたいだ』
『そうであったか。して、何を求む?』
「…」
『まぁ解らんであろう。終焉をもたらす者と対峙したとき、我等を喚ぶが良い』
「…」
『まだ時間はある。轟神を求めると良いだろう。終焉には奴が欠かせない』
『何処におるか分からんだろう』
『気紛れだからな。見つかったら運が良かったと想いな』
『時が満ちるのは直ぐそこだ』
「…」
…ふと目が覚めた。




