第145話 契約の証
「マスター。この子どうするの?」
ジルコートが話しかけてきた。
この子とは蒼天竜の事であり、契約破棄した為に自由となったのだ。人型の二人共、顔面は痣だらけで苦笑てしまう。
「蒼天竜、君はどうしたいんだ?」
「私は青を追いたい。青がそうしてくれたように、今度は私の番」
「それなら、私と契約しない?私も兄を追ってるの。途中寄り道はあるけどね」
「貴女なら良いわ。一人ではどうすることも出来ないもの」
「良かったわ。ルナはいい?」
アーシェに問いかけられてルナは頷く。
「なら決まりね。宜しくね、えーと」
「ニエーバ」
「ニエーバ、良い名前だわ」
真名を聞くと胸元に契約の紋章が浮かび上がり、消えると契約が完了した。
「アーシェのは胸元なんだ。サキは右手の甲だよね」
「そうだな」
契約主により、紋章が刻まれる場所はまちまちで、アイの場合は左足に浮かび上がる。
「聞きたいんだけど、兄さんは遺跡で何かと契約したのかしら?」
「いいえ、入れなかった」
「それは何故?」
「魔物が巣くっていたわ。あの人、狭い所で喚ぶ者とは契約してないの」
「そうだったのね」
「だが、召喚獣もあれだけとは限らない」
「ニエーバは知ってる?」
「後は…」
俺達は驚いた。アーシェの兄貴はかなりの数を有していた。
「そんなに…」
「ドラゴンマスターにでもなるつもりか」
「兄は20年も前から集めていたわ」
「来るべき日とか行ってたよね?なんのことなの?」
「それは私にも解らない」
「アーシェは知ってる?」
「ごめんなさい。私も聞かされてないわ」
「そのことは後にして、一先ず帰ろうぜ。ジルさんや、もう限界だ」
「フフッ。マスター、お疲れ様」
「ジルもありがとな」
「蒼、良かったね」
「銀、ありがとう」
ジルコートとニエーバ、ルナを解除して、街に戻る為に馬を探すのだが。
「いないんだけど」
「俺、もう歩けない」
「サキさん年ね」
「サキはおじさんだもん」
「お前らなぁ」
どうやら馬は先の戦闘で何処かに逃げてしまったようだ。その代わりに魔物や魔獣の姿もない。
「仕方ない。少し休んで考えよう。」
「そうね」
「二人共お疲れ様」
「アイさんもでしょ」
「私は召喚してないし、役に立ってないよ」
「そんなことないわ。アイさんは私達を守ってくれていたもの。」
「そうだぞ。アイは聖騎士なんだからな。アイが居なかったら俺達は消し炭になってたよ」
「そうかなぁ」
「そうだ。ほら、飯にするぞ」
「なぁ、俺は遺跡に行ってみたいんだがどうかな?」
「良いんじゃない?行こうよ」
「魔物が巣くってるって言ってたわよ」
「冒険者なら入りたくなるんだよなぁ」
「そうそう。アーシェのお兄さん入ってないしね、何かあるかも」
「アーシェはどうする?」
「私、遺跡って怖いのよ…昔そんな場所で悪魔と過ごしてたから…」
「そうか」
「私は兄さんの言ってた来るべき日について調べるわ。ここで一旦お別れね」
「そうだね。ならさ次の合流地決めない?」
「良いわね」
地図を取り出して、この国の中心に位置する街で合流することとなった。
「アーシェ、無理するなよ」
「ええ、サキさん、アイさん、ありがとう」
「またその街でね。気を付けてね」
アーシェは取り合えず街に戻って馬のことを伝えてくれるそうだ。
俺達は休息を取り、遺跡へと向かった。




