第144話 黄昏と誓約
「その状態で銀竜を喚んだか。長くは持たないだろうに」
ジルコートを送り出した俺に兄貴が話しかけてきた。
「舐めるなよ。お前を倒すまで俺は根性を見せるさ」
「なら今度こそ終わりにしてやろう」
青竜が兄貴へ飛び掛かろうというその瞬間、魔法陣から現れた者によって、空へと押し返された。
「黄昏竜までもか…」
「あれが最後だと思いたいね」
「ああ。ジルは…あれと互角か」
「サキさん大丈夫なの?」
「中々にしんどいが。アイツに出来て俺に出来ないはずはない」
黄昏竜と呼ばれる竜は青竜の倍の体格だが押されたのは初めだけで、今はその巨体を止めていた。二体は手を絡ませ力比べをしているかのように感じさせる。
拮抗していたが青竜が押し始めると、黄昏竜はブレスを放った。
全身へと浴びせられるも、手を離して反撃のブレスを胴体へ撃つと、その勢いに飲まれ後方へと遠ざけた。青竜は急激に距離を詰め、そのまま顔面へと突進を繰り出すと、よろけた黄昏竜に先程放ったブレスよりも大きなブレスを食らわせた。
『やりおるの、小さき同族よ』
『貴様がデカいだけであろう』
顔が焼けただれていても気にする様子はない。
黄昏竜は腕を振り下ろすも避けられ、背後に回った青竜は背中へと爪を突き立て、そのまま上に引き裂いた。
1度背後を取られた黄昏竜に攻撃の手段はなく、青竜に成すがままにされてとうとう翼を折られ、飛ぶことが困難となった。
『大人しくしていろ』
青竜はアーシェの兄へ向かっていく。
「黄昏竜でもダメだったか」
『もう逃げられんぞ!』
そしてその爪は兄貴を捉えたように見えたが、空へと転移して新たに召喚獣を喚ぶと、その背に股がる。
「俺を追い詰めるとはな!蒼天竜は返そう。その代わり…」
蒼天竜の腕に浮かんだ紋章が消え、契約が破棄されたことを証明させる。
しかし青竜は黄昏竜に捕まり、兄貴を乗せた者が近寄ってくる。
「この竜のこと知ってるだろ?さぁお前は俺の物だ」
「あのドラゴンは!ルナ、ブルードラゴンを守って」
ルナは青竜へ魔法防御を掛けようとするも、その力を行使できない。そして青竜も動くことが出来ない。
遂にはその竜を媒体に無理矢理召喚獣契約を行った。
『おのれ…』
腕に紋章が刻まれると青竜は粒子と化した。
「あの竜はなんなんだ!?」
「プレッジドラゴンよ、あれで無理矢理契約させられているんだわ」
「なんてことを」
「遂に青竜を手に入れた。15年位掛かったな。お前達も備えておいたほうがいいぞ」
「待て!ジル、頼む!」「ダメ!」
「アーシェ、どうした?」
「近付いたらダメなの」
「いい判断だ。また相手してやるよ」
「兄さん…」
アーシェの兄貴は黄昏竜を解除し、竜と共に飛び去った。
[黄昏竜]
トワイライトドラゴン。
上級種。西竜の中でも大型で12メーターの巨体を持ち、赤と黒の鱗で覆われている。
[誓約竜]
プレッジドラゴン。
特殊な能力を持つ上級種。白い鱗の西竜で3メーターと小型。




