第143話 蒼天竜対銀竜
「ジル!良かったぁ。もう平気なの? 」
「ええ、マスターが優秀だからね。黒はもう少し掛かりそうね」
「そうだなんだ。ノワの加護は戻ってるけどね」
「早々に悪いんだが、青竜を援護出来るか?訳ありのようだ」
「本当にいいの?」
「ジルには悪いんだが」
「私は平気。あの時はマスターが助けてくれたし」
「そうか、なら頼む」
「わかったわ」
昔、ジルコートは青竜の暴走を止めようと挑んで返り討ちになってしまった。
その事で想うことがあるかと思ったのだがどうやら平気らしい。俺に弱さを見せない為なのかもしれないが。
ジルコートは青竜の隣へと並んだ。
『銀よ。また我を止めるのか?』
「いいえ。青を援護するの」
『何故だ?貴様の力などいらぬ』
「貴方は蒼とは戦えない。わかってるんでしょ?蒼は私が抑えとくから行って」
『笑わせてくれる。だが、事実だな。頼んだぞ』
蒼天竜と向き合うジルコート。その横を青竜が抜けていき、兄貴へと向かって行く。
それを追おうとする蒼天竜だが、ジルコートが前に立ちはだかり阻止し、そこから戦闘が開始された。
『銀、お願い。私を止めて』
蒼天竜は風の刃を飛ばしてくる。
「そのつもり。青があの人間を倒してくれるから待ってて」
ジルコートは刃を避けて光魔法を放った。
『ありがとう』
光魔法に光魔法をぶつけて相討ちにした。ジルコートはストレートのブレスを放つと蒼天竜は回避し、それを追って吐き続けると、相手は旋回して同じようなブレスを放った。
二体はブレスを吐きながら旋回して互いの攻撃を避けていた。やがて、ジルコートがブレスを止めて接近すると、蒼天竜も同じ行動に出て二体はぶつかり合った。
「ガァッ!」「グゥッ!」
『銀って強かったのね』
「マスターのお陰で弱さを無くしたからね」
互いが爪での攻防を繰り広げ始めた。
『ごめんね』
「もう少しの辛抱よ」
二体の身体からは血が垂れ出ている。
『青、大丈夫かな?』
「心配性だね。青は私を負かしたのよ」
『なんで?喧嘩したの?』
「多分、この件で暴走したんじゃないかな?」
『ごめん。私のせいで』
蒼天竜がジルコートの首に牙を立てる。
「グッァァ!貴女のせいじゃないわ」
ジルコートは蒼天竜の両肩に爪を食い込ませた。
「ガァァァッ!『優しいね』
「これが終わったらマスターにお礼言ってね」
首から顎を離した所に尻尾を振るって叩きつけた。
地上へと落とされた蒼天竜に、ジルコートは上空から急降下して地面へめり込ませ、背中を押さえつけて身動きを封じた。
すると蒼天竜の身体がみるみる縮み、女性の姿へとなった。それを見下ろすジルコートも人化を使い、女性の姿になっていく。
二人の女性は近付き、拳を握りしめて殴りあった。時には蹴っては蹴られ、顔に肩に腹にと殴られようとも二人は止まることはなかった。
「素でやってるわね?」
「銀、ごめん。楽しくなっちゃった」
「私も」
二人は笑っている。
そして終わりが来た。ジルコートの回し蹴りを横っ面に受けてダウンした。
「蒼、楽しかったね」
「負けちゃった」
「もうすぐだよ」
「うん。ありがとう、銀」
「フフッ。」




