第142話 乱入者
アーシェの兄貴に向けて炎の球が飛んでいく。それは黄竜によって防がれたが、自信に張った防御魔法は一撃で砕かれてしまう。
『黄よ、邪魔をするなら貴様も灰にしてやろう』
『邪魔も何も、主を守るのも我の役目』
『その人間を主とするなら貴様から消えてもらおうぞ!』
『そういう契約だ』
「ブルードラゴン?」
「何をしに来たんだ!?」
「まさか、兄を追って!?」
俺達と兄貴の間に降り立ったのは紛れもなく青竜だった。
その青竜と黄竜は対峙しているが次の瞬間、青竜より放たれたブレスが黄竜を葬り去った。いくらバルディエルとの戦闘後だとしても一撃とは恐れ入る。
「青」
二体を見上げていた目前の女性が呟いた。
「青竜、狙いは俺か?何故狙う?あの時のことか?」
兄貴が青竜に話しかけた。
『貴様!!どれ程我を愚弄すれば気が済むのだ!貴様はここで灰と化すがよい!』
「お前に会ったのは初めてなんだけどな」
再び兄貴にブレスを吐くと、俺達の前にいた女性が青竜へと近付きブレスを魔法で相殺させた。
『蒼』
「青、ごめんね」
『何を申すのだ』
「ごめん」
『今、解放しようぞ!』
「何をしている!」
兄貴の声で蒼と呼ばれた女性は竜の姿に戻っていく。
4枚の翼に蒼の字が良く似合う空のような水色の鱗を持ち、スラリとした体型の西竜へと変わった。
「蒼天竜だったのか」
「てっきりブルードラゴンかと」
「だがあの二体から感じるモノは同じだな。アーシェが間違ってもおかしくない」
「同じ?そうだな、同じと言えばそう取れるだろう。なんせあの二体はツガイだからな」
「兄さん、貴方はなんてことを」
「俺だって本当は青竜が欲しかったさ。だがそこに居なかったんだよアイツは。代わりに居たのが蒼天竜だった訳だ」
「お前は無理矢理契約をして回っているようだな」
「じゃなきゃここまで集められないだろ」
「ほんと最低。アーシェの前で言うのもあれだけど、あんなの人間じゃない」
「いいえ、その通りだわ」
「お前達に何が分かる?これから起こることも解らないし理解しようともしない。その日が来て慌てふためけばいい。さぁ、行け!」
その言葉に蒼天竜が青竜へと向かっていった。
(ジル、頼む。応えてくれ!)
『大いなる翼が奏でし二重奏と伴に、降臨せよ!銀竜、ジルコート!』
俺の前に魔法陣が浮かび上がり、そこからジルコートが現れる。
「治ったばかりなのに、お早い喚び出しね」
「応えてくれたのか。すまんな、お願いがあるんだ」
[青竜]
ブルードラゴン。
上級種。ある日を境に暴れ回り始め、それを止められる者が居なかった程の実力を持つ。
西竜の中は勿論、竜種でも上位に位置する。全長は5メーター。
[蒼天竜]
スカイドラゴン。
4枚の翼を有する上級種。人化は女性であり、空色の鱗を持つ。大きさは4メーターと一般的。




