第133話 屍人の王と骸の王
次は上の階へと螺旋階段をそのまま登っていく。
その階は無駄に広く、通路と言うよりは奥行きがある部屋のような広さだ。
そしてすぐに目についた。
「デカい」
「ボーンタイプなの?」
「そう言えば天使が似たようなの召喚してたよね?」
「ああ、確かに。じゃあ召喚獣かもな」
「アナタ達、天使にあったの!?」
「前にな」
「後でその話聞かせてね」
「でもあれ、下も付いてるよ」
「下半身のことか?天使のは付いてなかったっけ?」
『あれはガシャドクロです』『天使が喚んだのは恐らくビフロンスと呼ばれる者でしょう』
「別物なんだ」
幅も天井も無駄に広い通路を埋めるような大きさの骨の魔物が四つん這いでそこに居た。
「デポルラポルはあれに勝てそうか?」
『我等だけでは力不足です』
「カルテスも喚ぶわ」
「いや、俺が喚ぶ」
「何喚ぶの?バルディエルじゃ壊しちゃうし、まだあの後に居るかもしれないよ」
「ジャンヌだ。デポルラポルと共闘してもらう」
「「あの子ね…」」
声がハモった…
俺は口上を唱え、ジャンヌを喚び出した。
「マスター!!」
「頭撫でてやるからこっち来い」
「覚えててくれたんですね!御意!」
頭を撫でると喜んでくれたようだ。
「もう終わりですか?」
「また今度な。あれを倒して貰いたい」
「ガシャドクロですね」
「デポルラポルと一緒にやってもらうぞ」
「御意!」
三体の召喚獣はガシャドクロに走り寄って行く。
今まで反応を示さなかったソイツは、ジャンヌ達が一定の距離まで近付いた時動き出した。眼の穴に緑の火が灯り、片腕を伸ばしてきた。
かわしてその腕に飛び乗ったジャンヌは、そのまま登って行き頭へと剣を突き刺す。デポルラポルは伸ばされた腕に斬り掛かっていた。
だがガシャドクロは効いてる様子もなく、今度は此方に4足のまま走ってきた。
手元に居たデポルラポルは弾き飛ばされ、頭部のジャンヌは何度も骨に両手の剣を突き立てるが止まらない。
「ジャンヌ!大丈夫だ、落ち着け!」
「ぎ、御意!」
「俺に掴まれ…アゲート」
俺達三人はヤツの後ろへと転移した。
ガシャドクロはそのまま壁へと突っ込んで行く。途中でジャンヌも背骨へと移動したようだ。
そのまま斬りつけながら降りてきた。
デポルラポルも戻ってきて無事なのを確認した。
突っ込んだまま動かないガシャドクロはやがて崩れ落ちて行き、頭部も逆さまに落ちて眼の火も消えた。
倒したのかと思いきやバラバラになった骨は1本1本宙を舞い、頭部も浮かび上がり全ての骨が俺達に向かって飛んでくる。
ジャンヌとデポルラポルは前でその骨を叩き落とし、アイはアーシェを守って盾を構える。 俺も2本の片手剣で弾いているが、次から次へと襲ってくる。
剣を振るいながら、シュヴェーラの口上を唱えた。
宙を舞う6本の剣と手にした2本の剣も放し、その8本を骨へとぶつけていく。
やがて、頭部も前へと出てきてジャンヌが斬りつけていた。
すると骨の当たりが弱くなっていくことに気が付き、全ての剣を頭部へと突き刺した。
ジャンヌがそのうちのバスターソードを引き抜き、真上から降り下ろした。
二つに割れた頭蓋骨が地面に転がり、他の骨も次々と落ちていった。
シュウッと煙になりながら最後は消えた。
「しんどい」
「アンデッドってしつこいよね」
「ありがとうアイさん」
「いえいえ」
「マスター!やりましたね!」
「皆のお陰でな」
近付いてきたジャンヌの頭を撫でた。
「二度も撫でられた!有難う御座います!!」
「まだ何か出そうだからそのまま居てくれ」
「御意!」
「貴女はマスターのこと大好きなのね」
「当然です!」
「ジャンヌ、私達も守ってね」
「アイさん、貴女の命令は聞けません」
「ちゃんと守ってやれよ」
「御意!」
二人は飽きれ顔をしていた。
デポルラポルもそんな顔をしているように見えた。
そして先の入口を潜ると、二体の人影があった。
ジャンヌが前に出て2本の剣を構えた。
「スカルコレクターとノーライフキングです!お二方も前に!」
『ハッ!』
デポルラポルも前に出て三体は臨戦態勢に入った。




