第116話 王宮へ
悪魔退治から帰ってきた翌朝、俺達が泊まる宿の扉が叩かれた。
「サキ・ゼロニスはいるか?」
「俺がそうですが、何か?」
扉を開けるとそこには王直属の近衛兵達が立っていた。
「サキ・ゼロニス及びアイ・ミズサキ、両二名を連れてくるようにと王直々の命令だ。速やかに支度するように」
「これから?」
「ああ、そうだ。我々は外で待機している。整い次第知らせろ」
「王だってよ」
「どうするの?」
「会ってみるのもいいな。ただしアイはここに残れ」
「二人共って言ってたじゃん」
「考えがある」
俺達は馬車に揺られて城へと向かうことになった。
「俺は王族の作法など知りませんよ」
「構うことはない。程度の常識があれば問題ない」
「それなら多少は」
「所で先程から女の方は黙ってるが大丈夫なのか?」
「酔ってるだけですね。馬車の揺れに弱いんで」
「そうか。王の前ではシャンとしてくれ」
隣のヤツにはフードを被せ、黙っているように伝えてある。
城へ着いた俺達は謁見の間へと通される。
左右には6名づつ兵を配置し、正面には椅子に座る偉そうな人物、その横に立っている男がいた。
俺達は片膝を突きダラダラと王の話を聞いていた。
直訳するとこれまでの行いを褒めていると取って良いのだろう。だが突如バカな申し出がきた。
「と言う訳でそなた等を余の直属である部隊に入るよう命ずる」
「ちょっとお待ちを」
「なんだ?」
「俺達は冒険者で人間の脅威となる者を狩ってきました。それはこれからも変わりません。部隊に入れと言うのは魔物は勿論、人間相手もあるんですよね?」
「無論だ、人間こそ最大の敵だ。この国と隣国で戦争しているのは知っておるな?いつ奴等が攻めてきてもおかしくないのだ。ならばどうする?やられる前にやる!そうであろう?貴様達には部隊の指揮を取ってもらう。此処が戦場にならん限り前線へ出ることはないから安心せい」
「いえ、お断りします」
「貴様、何か勘違いしてないか?これは頼みではなく命令だぞ。余自らその命令を下しているのだ。従う以外何があろう」
「そもそも俺達はこの国の者じゃないんですがね」
「そんなことは些細な問題だ。すぐにこの国の住民に登録する。これは決定事項なのだぞ」
「お断りさせて頂きます。帰るぞ」
「帰す訳なかろう。捕らえて牢にでも入れておけ!たっぷり反省させるのだ」
こうなっては仕方がない。
逃げるが勝ちだが、扉が開き次々と兵が押し寄せる。
数が多いが此方には切り札がある。
「もう我慢しなくていいぞ」
「マスターァ!私堪えました!堪えましたぞ!もういいんですね!あの豚を斬り伏せても構わないんですね!」
「構うわ!前の奴等だけでいい」
「私の気がおさ「退かせ。ただし殺すなよ」
「御意」
俺が連れてきたのはアイではなく、召喚獣のジャンヌ。
今まで良く我慢したなと思えるほど意外と優秀だった。
そして戦闘に関しちゃ人間に遅れを取ることはない。楽に脱出出来るというもの。
ジャンヌは鬱憤を晴らすが如く暴れまわっていた。殺すなという命令は一応は守られているようだが。
「あれはアイ・ミズサキではないぞ!召喚士を呼べ!」
「なんだ?何が起きているんだ!?」
「危ないのでお下がりを。こちらへ」
「ジャンヌ、俺の手はいるか?」
「いります!後で手を握らせてください!あ、嘘です嘘!いりません。見ていて下さい」
無双状態のジャンヌだが、ここにも召喚士がいるようだ。
兵の後ろから、複数の召喚獣が現れた。




