第108話 旧神の意思
「やっと追い付いたわい」
「イグニスさん!」
「エリュがドラゴンの波動を感じてな、飛び出して行ったんじゃよ。まさかエスペランサドラゴンとはな」
「エリュテイアのお陰で助かりましたよ。アレの前に二体の召喚獣が居ましたし」
「なんと?三体も結んでいるのか。まだ悪魔は姿を見せんのか?」
「ええ、見てませんね」
悪魔の動向を探って、王都の外へと出ていたイグニス達だったが、エリュテイアが飛び出して行った事により、悪い知らせと受け、追いかけてきたのだ。
二体ともダメージを負っているが、エリュテイアはまだ余裕があるようだ。
そして動き出した。
希望竜がブレスを放つとエリュテイアは避け、接近する。それを許さんと光魔法ではね除けるも再び距離を詰める。
だが希望竜はそれを好ましく思っていないようだ。闇魔法を連続で撃ち、接近を阻止していた。
ついにはエリュテイアに背を向け、逃げ始める。それを追うエリュテイアに光魔法の複数の球が襲い掛かる。
避けきれずに当たる場面もあるが、追うことを止めない。
更に手数を増やし無数になった光魔法を放ち続け、次第に距離が開き始める。
すると希望竜が身体を振り向かせ、ブレスを放った。
咄嗟の事でエリュテイアは無防備で食らってしまった。それでも前へ出ようとするも、闇魔法を放たれ直撃を受けてしまう。
しかし今だ落ちる様子はなく、反撃にブレスを放ち、そのブレスにブレスをぶつけた。どちらも譲らず、吐き続ける。
「援護するぞ!」
俺はシュヴェーラ全てを突っ込ませ、アイとイグニスは魔法を射った。
距離がある為、アイの魔法は届かなかったがシュヴェーラとイグニスの魔法は希望竜を貫いた。
希望竜のブレスが止み、エリュテイアのブレスに身体を被われ力尽きたように落ちていく。止めを刺すべくエリュテイアは急降下するが、炎に被われながらも魔法で抵抗しようとその動作を始めた。
「しまっ!」
「させるかよ!」
転移魔法を使って、落ち行く希望竜の真上に飛んだ。
特殊弾頭の入った銃を額に向けて放った。
弾は竜の頭蓋骨を貫通し脳へ達したようで、魔法は放たれることはなく、ただ落ちていくのみだった。
「エリュテイア!」
「おうよ!!」
俺を通り越し、希望竜の喉元に爪を立てそのまま共に落下していった。
「サキが!!」
「任せろ!」
冒険者が落ち行く俺を、転移魔法で掴まえて再び地上へ転移した。
「助かったよ、ありがとう」
「なんのこれしき」
決着が付いたようだ。
希望竜が消え始めていく。
「ふん!俺に勝てると思うなよ!悪党に改名しろ」
『赤よ。我は今までも、これからも、神の代理だ…』
「アイツは遠に堕ちただろ!」
『だが我は意思を尊重するまでだ』
「お堅いことで」
『…』
そして消えて行った。




