第107話 対希望竜
「竜なのか?」
「ああ、人間達は希望竜って呼んでたな。俺達は白銀って呼んだるけどな」
「あれが希望竜か。資料でしか見たことがなかった。昔人々を飢餓から救ったと」
「あんときはどうせ、アイツの気紛れだろ。今だって人間と敵対してるじゃねーか」
「希望竜ってエスペランサドラゴンよね?」
「そんなんだったな。大層な名前貰いやがって」
希望竜はエリュテイアの放った燃える岩を砕き、姿を現した。
「おい、白銀。今回は悪魔の味方か?ああ?」
何も答えない希望竜。
「ケッ!相変わらず無口な野郎だぜ」
希望竜は人化を解き、竜の姿へと戻っていく。
白く輝く鱗に旧時代の天使のような純白の翼を広げた。エリュテイアと同じ大きさでやや細身である。
「まさか、ドラゴンだったとは…しかもエスペランサだと?人間の味方じゃなかったのか?」
冒険者がオロついていた。
二体の竜は飛翔した。
距離を縮め合い、鋭い爪による攻防戦を繰り広げる。
「どうした?白銀!この距離では俺に分があるみたいだな」
エリュテイアは希望竜の爪を避け、尾で下へと叩いた。無防備な腹部に隕石をぶつける。
落ち行く最中身体を回転させ、体勢を立て直すと、光魔法である白く輝く複数の球をエリュテイアに放った。
その攻撃を避けるも誘導弾である為、数発を被弾を許してしまう。
続けざまに闇魔法を撃つも、その魔法は避けられ、逆に炎魔法を撃たれる。
燃えた希望竜に急接近し、その勢いのまま掴み掛かると、地面へと一直線に落下した。
「ガァァァッ!」
「どうだ!効いたか!」
叫びと余裕の声が伝わってくる。
背中から落ちた希望竜が暴れるがエリュテイアを振りほどけない。やがて二体が見つめ合った時、顔面にブレスを浴びてしまい、エリュテイアは下がってしまった。
解放された希望竜は舞い上がり、闇魔法を放った。その魔法は黒く小さな球体が対象物に当たると大きく拡がり、中のモノを切り刻む魔法だ。
エリュテイアの回避は間に合わない。
だが、その魔法に敢えて近付き、発動させたのだ。
その拡がった球体は二体を巻き込んだ。
エリュテイアは希望竜を巻き込む作戦に出たのだ。
「ふぅー、やるじゃねーか!自分の魔法の味はどうだった!?」
空で二体は向き合った。
[希望竜]
エスペランサドラゴン。
上級種。白銀の鱗に純白の鳥のような翼を有する。
光と闇の魔法を使いこなす。
大昔、人類を飢餓から救った竜として語られていた。




