第103話 フライトモード
大海嘯竜ニーズヘッグを倒したはいいものの、ジルコートとノワルヴァーデは復活まで時間が掛かるし、ギアスもこの通りなので孤島から出ることが出来ない。
「ねぇ、ノワ達ってどのくらい時間掛かるの?」
「強制解除されたからな、1ヶ月ぐらいかな」
「そんなに掛かるんだ。その間はノワの加護受けられないの?」
「いや、半月程で受けれるよ」
「そーなんだ。あーあ、今日はこの島で野宿かぁ」
「だなぁ。ギアスが起きても喚び出せる程回復しないだろう」
「あっ!」
「どうした?」
「サキの機械兵って飛べないの?」
「あー!なるほど、後で試してみるか。どっちにしろ俺も呼ぶほどのスタミナはないな」
今日はこのまま夜を明かすことにする。
その間ギアスは目を覚まさなかった。
大海嘯竜との戦いが終わったのが夕刻、そこから翌朝まで眠り続けていたギアスがようやく起きた。
「よう。よく眠れたか?」
「あっ!師匠!俺は一体…ニーズヘッグは!?」
「お前のお陰で倒すことが出来たよ。よく頑張ったな」
「俺のお陰?そんなっ!」
「ほんとよ。バハムートが居なかったらこっちがやられてたもん」
「そうだったんですか。お二人共!なんてお礼を言っていいか」
「気にするな。町を狙う奴等は討伐対象だ。それにお前の活躍で倒せたんだぞ!胸を張れ」
「はい!」
ギアスも起きたことなので俺達は朝食を取ることにした。
町まで帰れないかギアスに尋ねると、バハムートも契約の関係でしばらく出せないそうだ。
ギアスはビスマルクに乗って海を游いで
来たという。そのビスマルクもやられてしまったので帰る足がない。
「仕方ない。試してみるか」
「何をですか?」
「帰れるかもしれん」
「?」
朝食を食べ終わり、バルディエルの召喚口上を唱えた。
「…って訳なんだが飛べないか?」
「了承しました。速やかにバックパックの換装へ移行します。パンツァパックパージ確認、ヴォルドパックスタンバイ、換装終了しました。各部作動良好。マスター。完了しました」
「「「スゲー」」」
「師匠!感動しました!」
「俺もだ!!」
「ハァー。気持ちは分かるけど…」
「それでどこに乗ればいいんだ?」
「此方へどうぞ。お掴まり下さい。フライトモードへ移行します。スラスター良好、バーニア…右舷不良確認しました。修復致します…完了しました。座標入力、目的地へ飛翔します。テイクオフ」
背中に付いていた箱を転送し、羽根の付いた別のを転送し、取り付けた。
そして俺達はバルディエルの手のひらに乗り、背中と脹ら脛の穴から炎を出して飛び立った。
モノの数十分で港へと着いてしまった。
「アイ…ボッサボサ」
「サキもスゴいことになってるよ」
「あの、ちょっとすみません…オェェ」
「次からは考慮します。任務完了。次の指示はありますか?」
「いや、大丈夫。ありがとな」
「了解。待機モードへ移行します」
消えていくバルディエルを見送ってふらついた足で町中へと進んで行く。
[バルディエル・フライトモード]
大型の高出力バーニア2基と翼が付いたヴォルドパックを装備した仕様。
脚部のスラスターと用いることにより重力下での飛行を可能としている。飛ぶことより高機動戦闘を主眼に造られたとされている。




