スコップと大岩
昔、土木作業を生業とする集団があった。その男たちは毎日の仕事で鍛えた体が自慢で、つるはしを持って、やれ大岩を砕いた、やれ俺の方が大きいぞと力比べをしていた。
そこに、他の男たちに比べて小柄な男が一人まぎれていた。彼はつるはしではなく、いつもスコップを持たされていた。
ある時他の男が、小柄な彼を小バカにして「たまには岩でも砕いてみせろ」などと言った。
「ええ、いいですよ」
彼は済ました顔でそう答えると、今まで他の誰も砕いたことのないような、大きな岩の前に立った。そして、いつものスコップを取り出した。
あんなもので岩が割れるか、と周りの者は笑っていたが、彼は岩から下り坂まで道を作るように轍を掘った。最後に岩の足下を掘っていくと、岩はついにバランスを崩し転がり始めた。
岩は轍に乗って坂を転がり落ち、最後は壁にぶつかり砕けてしまった。
周りの力自慢は、もう小柄な男をバカにすることはなかったそうだ。