謎の部屋と女子高生
女子高生と伊勢の会話です
冷たい感触が頬から伝わる周りからは音も聞こえずただただ静寂がその空間には満ちていた。
上から降り注ぐ光に俺は眉をひそめその意識を覚醒させると目を見開き急いで起き上がり周りを確認する。
すると先程まで通路にいたはずなのだが、いつの間にか平場のように広い場所へとその風景を変えていた。
視線を地面に落とすとまだ意識が戻ってないのか高校生たちが仰向けになって倒れている姿が映る。見たところどこにも異常がなさそうなので少しほっとした。
改めて俺は部屋を見渡すと大きな扉が一つと大きな大理石のような柱が俺たちを中心に周りを囲み、天井には白い光を放つランプのようなものがいくつもぶら下がっているのがわかった。とても奇妙な場所である。
そして奇妙といえばもう一つ地面にはあの時の通路で出現したマークと同じ模様が地面に描かれている。形からしてそれは俺のオタク心を揺らがす魔方陣だと思うが今は定かではない。
そうしているうちにうめき声のようなものが聞こえたので、振り返ってみると襲撃者に襲われそうになった沙耶と呼ばれるセミロングの女子高生が意識を取り戻したようだった。
急いで駆け寄って声をかけたのだが俺に驚いたのか、立ち上がろうとした女子高生はきゃぁ!と小さく可愛い叫び声をあげその間でうずくまってしまう。
しかし駆け寄ってきたのが俺だと分かり女子高生はすいません!と顔を真っ赤に謝罪する。
そして立とうとするが驚きのあまり腰が抜け立てないままだった。まだあの襲撃者の件で恐怖が抜けきらないのだろう。
俺はしょうがないよな。と笑みを浮かべると女子高生に向かって手を差し伸べた。
「大丈夫?立てるかい?」
「そ、その!すいません!さっきから助けらてるばかりで」
「いいのいいの!困ったときは人に頼るのが一番なんだよ。」
と俺は笑顔で言うと女子高生は熱のこもった目で俺を見つめる。どうしたんだこの子?
そして少し気まずい雰囲気が流れ出したとき、背後から複数のうめき声が聞こえたので振り返るとどうやら残りの高校生たちが目覚めたようである。
「う・・・。ここは?」
「うぷっ!き、きもちわりー」
「さっきのやつはどこいった?」
と様々な感想を高校生たちは述べた後、黒髪の少年零士は何かに気がついたのか周りを見渡し、
「沙耶はどこだ!」
「零士くん。わたしはここだよ。」
と零士は少女沙耶を見つけホッとした顔をしてヨロヨロと立ち上がり沙耶に近づくといきなりガバッと抱きついた。
その光景を目撃した周り(高校生)は驚くものや羨ましげに見ているものまじかと呆れるものや様々な反応が窺い知れた。
そんな俺は思わずこんなことって本当にあるのね。今の高校生は積極的だななどと思いながらもちゃっかりリア充爆発しろと思ってしまったことは秘密である。
抱きつかれた沙耶はなぜか俺の方を見て青ざめた顔をする。
それはまるでテレビドラマの浮気現場を見られた妻か恋人のような顔だった。多分俺の考えすぎだと思うが。
そして沙耶は零士を突き飛ばし下を向く、
「零士くん。こんなところで場違いだよ」
あまりにも冷え切ったその声に零士は思わずやってしまったと言う表情を作り同じく俯いてしまう。
「すまない沙耶」
またも気まずい雰囲気が場を支配する中、突如大きな扉が開かれ鉄が擦れる音が幾つも聞こえてきた。
何事かと身構えると薄暗い通路から全身を鎧で包んだものたちが出てきて俺たちを囲む。
俺は腰から何かあったときのために仕込んでいたナイフを取り出しいつでも動けるように切り替えるが、
扉の方から白いドレスに身に纏う可憐な少女がその顔を笑みに変え俺たちに向かってくるのを見て思わず絶句しそんな俺を気にしていない様にその可憐な少女は声を出した。
「ようこそ!勇者様あなたたちを待っておりました!」
そしてこのときの俺の顔は多分笑っていたのだろうと思う。
さあ展開が動き出します