万物者
ついに万物者が!
魔石と黒ミノタウロスの亡骸である骨を回収し洞窟へと戻る帰り、道途中で食べられそうなキノコ類や果物を採り俺は遅めの昼食を作り始めた。
採ってきた食材が気になるのかハクは鼻を近づけるとクンクンと匂いを嗅いでいたまるで犬みたいだ。
「どうしたんだ?」
「この実はわかるけど、この変な形のものは食べられるの?」
とキノコを指差しながら言うハクに思わず苦笑、ミノタウロスだったせいかこういう物は食べてはこなかったのだろう。
「大丈夫だよ。これから俺が美味しくしていくから」
「ほんとかな?」
といまだ疑っているハクを尻目に俺はマジックバックから鍋と調理器具、木が組み立てられた簡素な鍋の吊るし(イメージはモ◯ハンの肉焼きのあの感じだと思ってくれればいいだろう)、さらに市場でついでに購入しておいた調味料と鶏肉などを用意した。
まず最初に俺は慣れた手つきで鍋にバターを入れ細かくした玉ねぎを色がつくぐらいまで炒め鶏肉を投下しまた焼く、一度火を止め麦粉を入れて粉っぽさがなくなったら店の人に濃厚な牛乳だよ!と勧められた濃い牛乳を入れる。
コトコトと沸騰し始めたら採ってきたキノコと購入したジャガイモそして決め手にチーズを入れとろみがついたら手作りシチューの完成だ。
出来上がったシチューの鍋を火から外し地面へと置いた俺は、2つ器を用意しそれにシチューを盛るとスプーンとともに一緒に渡す。
今までの工程をずっと目をキラキラさせながら見つめていたハクは、器を受け取るとスプーンを見て首をかしげる。
そしてスプーンを使わずにシチューを飲もうとした時あまりの熱さに目を見開き口を押さえた。
「あちゅい!!」
「こうやって掬うんだよそしたら熱くないから」
笑いながら俺は手本を見せる。
うむうまい久しぶりに作ったがどうやら腕は落ちていないようだ。
ハクは見様見真似でシチューをスプーンで掬って食べる。
よほど美味しかったのか夢中で掬って食べるハクを見て俺もシチューを食べ始めた。
鍋が空っぽになるまで(8人前ぐらいはあったのだが)食べたハクはその後採ってきたりんごの様な果物(形はりんごだが味はオレンジという不思議な果物)も3個ほど食べ、突き出たお腹を擦りながらお腹いっぱい!と言って今は昼寝に移行してしまった。
そんな風景を見ながら洗い物を終えた俺は休憩がてら残った果物を食べて一息つく、自分のステータスを確認するため「ステータス」と開いた。
【名前】 イセ・カイト
【LV】 3 1/30
【ジョブ】 巻き込まれた自衛官 武人 賢者
【HP】 :15000
【MP】 :200000
【力】 :7500
【防御】 :6000
【魔攻】 :25000
【魔耐】 :6000
【俊敏】 :7500
【運】 :4500
【スキル】
短刀術 Lv6 銃術 Lv7 武術 Lv7 全属魔法 Lv2(UP!) 刀術 Lv6 気配遮断 Lv5 気配察知 Lv5 魔力自動回復 魔力吸収 LV1 魔力操作 LV1
【固有スキル】
スキル結合 超自動回復 超人 超感覚
万物者・・・スキル有効まで残り3時間
・・・・・・・・・・・・・・・?何だこのステータス!!どんだけ上がってんだよ!
いろいろとステータス値おかしいのに思わず突っ込み、一番おかしい20万という数値を示しているMP、そして色々と上がっているステータス値に思わずげんなりする。
そもそもなぜあんな強い魔物を倒してレベルが2つしか上がらないのかと、疑問が浮かび自分の身に一体何が起きているのかと心配になってきた。
喜ばしいことに固有スキル万物者が使えるまで残り3時間を切っていた。名前からみてこの世界のことなどを教えてくれるスキルだと判断し、聞けば分からないことがあってもきっと教えてくれるだろうと期待して、横で寝ているハクと共に昼寝を開始したのである。
そして3時間後・・・。
≪万物者取得可能MPに到達。固有スキル万物者起動します≫
マジックバック内にある形が少し変わったスマートフォンの画面から青白い光が漏れる。
≪・・・・・・・。ここは?≫
≪・・・・・・。私が誕生した経緯を検索≫
≪・・・・・。取得≫
≪・・・・。再生 「どこぞの転生もの見たくこの世界を説明してくれるスキルとかあったら便利かもな!そうだな・・・。オペレーターとかってどうかな?」≫
≪・・・。取得者・・・主様の意思によって誕生したことを確認。万物者であることを認識≫
≪・・。知識のダウンロード開始≫
≪・。完了≫
≪主様とリンク≫
≪主様の疑問を確認。ステータスを表示し疑問の回答を調査・・・・≫
≪完了≫
≪主様の強化のため全属魔法と魔力操作から現段階の最適魔法をリストアップ≫
≪現在地バトルフォレスト。一帯を調査するため魔法を発動≫
≪探知魔法 レーダー≫
≪・・・完了。現時点での脅威を確認≫
≪主様が目覚めるまで周囲の警戒を開始します≫
俺は目を何故だか今はとても目覚めがいい気がする。
俺は一つ背伸びし大きな欠伸を吐く、夕日が洞窟内に差し込みどうやら寝すぎてしまったのが分かった。
「まだ眠い。シチューを夕方食べようと思ったけどハクの奴食っちまったしな何作ろうかな?」
『マジックバック内に鶏肉がまだ残っているのでそれを使ったスープなどを作ってみればよろしいのではないでしょうか?』
「お!それはいいね。それじゃあせっかく作るとするか、ハクよく気が付いたな」
『まだ寝ぼけてるのですね・・・。』
と俺はそんな声に違和感を持った。
遠い昔そう俺がまだ日本にいたときに聞いた事があるような声だからだ。
頭を掻くとスピーと横から音が聞こえ見ると、そこには鼻に提灯を浮かべお腹を出し寝ているハクの姿があった。
それではなぜ声が聞こえたのか?だんだん意識が覚醒して行くのにつれ俺はもしかして・・・。と思った答えを口にした。
「まさか・・・。お前が万物か?」
『肯定。やっと気が付きましたか』
「すげえ!ちゃんと人格を持っているのか」
『私はあなたが最も記憶に残っている人格から構成されました』
そう聞いて俺はこの声を思い出した。
俺がファンタジーオタクとなったきっかけを作ったとあるファンタジーアニメのヒロインの声その声にそっくりなのだから。
『心当たりはありそうですね』
「まあな。まさか万物者が俺の二次彼女の声になるとは思いもよらなかった」
『私はあなたに作られました。私の存在意義は主様であるあなたの役に立つことです何か私に聞きたいことが在るのでしょう?」
俺は何か秘密ごとを知られた子供の用に思わずゴクリと唾を呑む。どうやら万物者にはすべて知られているらしい。だがこちらとしても好都合俺はさっそく聞くことに決めた。
「質問だ。まず1つ目、何で俺はあんな強い魔物を倒したのにレベルが2つしか上がらなかったんだ経験値的にはもっと上がるはずだろ?」
『確かにこの世界では倒した魔物から経験値を得ることでパワーアップすることができます。しかし主様のジョブである巻き込まれた自衛官により、経験値でアップするはずのレベルが自分より高いレベルの魔物を指定の数倒すことが出来れば、レベルが上がるというシステムに代わってしまったようです』
「まじかよ・・・。」
まさかシステム自体が他の奴らとか違うとか、これ万物者がいなかったら気が付くのに相当時間がかかったぞ。
「それじゃあ2つ目。俺の戦闘系スキルの技が発動しないんだけどこれもジョブの影響か?」
「否定。スキルの技を発動するときはその技の技名を発動前に答えるか、発動する前の構えをとれば技を放つことが可能です。試しに短刀で試してみては?」
まさかそんなことで発動するとは、思いもよらなかった。万物者の言う通りというか自分が技を出したいので、万物者の意見に俺は賛成した。
「それもそうだな」
と言って俺は少し緊張気味に短刀を取り出し構える。
『短刀レベル1で発動できる技を試しましょう。相手に鋭い突きを放つ技。『スティング』です』
「分かった」
俺は深呼吸をして前を見据え、
「スティング!」
と発すると次の瞬間体が勝手に動き風を切るほどの速度で突きを放った。
俺は自分が技を放ったという喜びに思わず満面の笑みを浮かべてしまう。
「これ俺が放ったのか!本当お前ってなんでも知ってんだな!助かるよ」
と俺は万物者に向かい深い感謝の心を持ち褒めちぎる。
『あ、ありがとうございます。ですがこれが私の存在意義なので当然です!・・・・・ボソ(でも嬉しいです)』
するとどこか戸惑っているのか恥ずかしがっているのか分からない万物者に意外とツンデレなんだなーと思っていると万物者はいきなり神妙な面持ちを浮かべているだろう声で言葉を放つ。
『はっきり言いましょう。今の主人様ではこのバトルフォレストに勝てない魔物がおよそ1万体程います。このままバトルフォレストを抜ける場合必ず主人様より強い魔物に遭遇し、この前の戦闘のように満身創痍になるか、気を失って誰かに拾われるか、最悪の場合死亡することが予想されます。結論から言うと今の弱い主人様では絶対に勝てません』
意外とズバズバ言う万物者に俺は思わずションボリしてしまう。
「いやそんなに言わなくたってよくね?」
『これは事実です。しかし安心してください!私が強化するための完璧な計画がありますのでこれを行えば絶対に強くなれます!そして・・・』
と生き生きとしゃべる万物者にあっ!こいつ多分Sな奴やと思った俺はこれから1ヶ月完璧な計画という名の地獄の特訓を行なっていくのだった。
次の話はここから1ヶ月後です
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