レイと高杉
鳴海と奈央がそんな事をやっている時、レイはまだ一人で外のベンチにいた……。
☆ ☆ ☆
少し冷たい秋風が頬を撫で、仄かに土と草の香りが鼻をくすぐる。ゆっくりと目を開けると、眩しかった日差しは、優しい月光へと姿を変えていた。
「……痛い」
外のベンチに座りながら転寝していたせいか、体が軋む。少し雲が多い夜空を仰ぎながら、しばし、ぼんやりとしていると、ザクザクという土を掘る音が聞こえてきた。
(この気配は……)
知っている気配に興味をそそられ、重い体を引きずりながら花壇の方へと向かう。
「高杉――瑠美奈……さん?」
花壇にしゃがむ人影がピクリと反応する。
「あなたは……ミイラ男さん?」
(ミイラ男? ああ、そういえば、今……仮装中だった)
そんな事を考えながら高杉の横を見ると、まだ鉢に植わっている綺麗な花が数個並んでいた。
「……花を植えてるの?」
「はい。前まではいつも荒らされていたんですけど、ここ最近は被害がなくなってきたので、そろそろ花壇の手入れをしようかと思いまして……」
「それって…………七不思議のおかげ?」
高杉は、そうかもしれませんねと硬い表情で言うと、また黙々と花を植える作業へと戻っていった。
(……そろそろ、鳴海は起きたかな?)




