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ゆままゆ! 勇者な魔王 と 魔王な勇者←(俺)  作者: 都留 和秀
第二章 魔王、ダンジョンに行く
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8話 合成魔法と魔闘法

    ・

    ・

    ・


 ──ダンジョン探索2日目

 ──2層



 「魔王様、ストップ」


 2層に向かうべく階段を下りている途中で、プリムに呼び止められる。


 「どうしたプリム?」

 「魔物、たくさん、チェンジ、シフト」


 プリムが少ない言葉と、奇妙なボディランゲージで何かを伝えてくる…がわからない。


 「この先に大量に魔物がいるので、自分が先頭に立って先に魔法を放って殲滅するそうですよ」


 あの短い文面とボディランゲージからどうやって読み取ったのか、ミューが通訳してくれた。

 俺の【気配感知】にはまだ反応はない。


 「プリム、それって【気配感知】…じゃないよね?」

 「探査魔法」


 そんなものあるのか!? もしかして【気配感知】いらなかったんじゃ?


 「常時は、無理」


 そんな俺の葛藤を見透かしたようにプリムが言う。

 魔力は食うが、その代わり、魔力量に応じてかなり広範囲まで広げられるそうだ。


 「うーん、でも大丈夫なの?」

 「大丈夫」


 一応、ミューに目配せしてみる。


 「プリムなら大丈夫ですよ」


 気楽にうなづいてくる。

 そうは言うが、プリムのHPと体力はLvの割には低い。

 完全な後衛タイプなのに、先頭に立って大丈夫なのだろうか。


 「じゃぁ、一応すぐ後ろに控えてるから頼むよ」

 「ラジャ」


 2層に降りるとプリムの警告通り、モンスターの集団が狙いすましたように待ち受けていた。

 集団…というより、これはもはや軍団。

 視界がすべて魔物に埋まっている…ものすごい数だ。

 俺の【気配感知】では把握しきれない。


 「これは…やばい!」


 逃げよう!と言う前に、プリムからものすごい魔力の高まりを感じる。


 「フレイム、サンダーストーム…バースト!」


 プリムの目の前に魔法陣が3つ、瞬時に展開される。

 そこから生まれた火雷風が、混ざり合わさりながらモンスターの軍団へと向かう。


 なにこれ、すげーカッコいい!


 軍団へとぶつかった雷炎の旋風が膨張し、暴風となり、視界すべてを埋め尽くす。

 前が見えなくなるが、次々とモンスターを飲み込んでいるようだ。

 焼かれたモンスターの断末魔だけが洞窟中に鳴り響き、耳に聞こえてくる。

 合わせて俺の脳裏にピロリンという音が何度も鳴るが、今は確認している余裕などない。

 勇人はプリムの横に立ちながらも、ただ唖然と、その光景を眺めていた。


 やがて雷炎の暴風が消え去るころには、無事に立っているモンスターは1匹もいなかった。

 ほとんどのモンスターはその死骸すらも残さず灰になり、辛うじて残っているものも原型をとどめておらず、そのすべてが黒く染まっている、辛うじて動いていても、もはや瀕死だろう…。


 プリムは満足顔でこっちを見る。

 目から褒めてオーラがにじみ出ていた。

 俺は唖然としたまま、プリムの頭を細心の注意を込めて優しくなでた。


 ──絶対にプリムを敵に回してはいけない…と固く決意をして。


     ・

     ・


 「ねぇ、さっきの魔法ってどうやったの?」


 自分でもやって見たいと思ったのだが、スキル外の技術っぽいのでプリムに聞いてみた。


 「合成魔法」

 「合成魔法ってどうやるの?」

 「遅延術式、で組み合わせる」

 「ごめん、もうちょっと詳しく…」


 ん? 後ろでミューの青ざめている顔が見える。

 どうしたんだろう?


 プリムは少し考えた後、口を開き始める。


 「基本は遅延術式で魔法を組み立てて、同時展開で発動させる。 でも普通に既存の魔法を組み合わせて同時に発動させるだけだと互いの属性魔力が干渉しあってうまくいかない、だからあらかじめ術式も同時に展開する様に組む必要がある。 この違いを詳しく説明すると…」


 ──30分後


 「これは応用になるけど、2重展開は比較的制限が少ない、でも多重で展開する場合はさらに注意が必要で、合成するときに螺旋を描くようにしてやることにより、反発する力も利用して互いの魔力を増幅させることが可能。さらに…」


 ──60分後


 「これはあまり有名ではないけど、媒体を使用する方法もあって、儀式魔法に近いけど儀式魔法と違う点は一人で術式を使用することによって互いの魔力パターンが弊害になることがなく…」


 ──?分後


 「魔王様!魔法様!」

 「はっ!ひっ!…ミュー?!」

 「魔王様!ご無事ですか!」

 「無事?…ん?い、いったい何が…気を、失っていたのか…」


 そうだ、確かプリムに合成魔法の方法を教わっていたはずなのだが…あまりに膨大な量の知識を急速に詰められ、いつの間にか許容オーバーで脳細胞が停止していたようだ。


 「魔王様…不用意にプリムの講義を聴くなど、自殺行為です!」


 ミューがうっすら涙を浮かべながら俺の頭を揺らしていた。

 そこまでひどい状態だったのか、俺…。


 「久しぶりで、手加減、できなかっ、た、ごめんなさい」


 プリムが申し訳なさそうにちょこんと頭を下げる。


 「いやいやいやいや、プリムが謝る必要ないよ! 俺の方こそ途中から意識を失ってしまってごめん…」

 「いい、みんなそうなる」


 プリムの講義を聞いた人は、9割がた俺と同じ状態になるそうだ。


 …マジか、どんだけ詰め込んだんだ。 


 「しかし、プリムはすごいな」

 「ムフ!」


 褒めながら撫でてやると、プリムがご機嫌に鼻を鳴らす。


 「プリムは天才なのですよ」


 ミューに聞くとプリムは魔眼持ちの忌子であったが、同時にものすごい魔法の才能があったため、魔法学校に特待生として通っていたらしい。

 当時から、魔力の制御に苦労していたプリムには渡りに綱だったそうだ。

 そこで才覚を発揮したプリムは、特に合成魔法の構築に多大な成果をだし、ほぼすべての属性魔法を使用することもできるらしい。

 更に特待生として講義もしていたらしく、普段は口数少ないものの、魔法を語りだすと止まらないことで有名だったそうだ。


 「希望者、少なかった…」


 プリムがシュンとなって、少し落ち込んだ顔をする。


 講義の希望者が少なくて、たまに人が来ると嬉しくててつい話し過ぎてしまい、許容オーバーを起こしてつぶれて来なくなると…。

 見事な悪循環だ。


 「ちなみにですね」


 こっそり耳打ちしてくれたミューの話によると。

 実はプリムの講義は一部の学生の間では”悪魔の講義”として有名だったそうだ。

 それは忌子が行う講義…という理由ではなく。

 プリムの講義を受けた学生は、例外なく成績が伸びるそうだ。

 ただその代りに若干の精神障害(トラウマ)を起こしてしまうため、悪魔に魂を売り渡すという意味での代償をともなう”悪魔の講義”と呼ばれていた…いうことだ。


 プリム…恐ろしい子。


 結局、この階層のモンスターはほとんどがプリムの一撃で消えてしまったようで、残ったモンスターを俺とミューでつまみながら、階段を見つけたところでその日の探索が終わる。

 

    ・

    ・


 ──ダンジョン探索3日目

 ──3層


 通路が広い、もはや大通路だ。

 横に10人以上余裕で並んで進める広さだな。


 「今回はモンスターが待ち構えてなかったな」

 「恐らく無駄だと悟ったのでしょう」

 「モンスターにそんな知能があるの?」

 「ここの管理者を務めるモンスターに、それなりに知能があるのでしょう」



 ダンジョンは基本的にダンジョンコアと、それを管理する管理者によって構成される。

 そこの管理者がある程度知能がある個体なら、手ごわい探索者が入ってくると魔物の配置を変えて対応することがあるらしい。

 基本的にLvが高いモンスターはそれに合わせて知能も上がるそうなので、そこまで珍しい話ではないようだが。

 ダンジョン内において、違う種族のモンスターが度々協力する様に動いていたのは、管理者に統制されているせいだということだ。


 「だから、基本的にダンジョン内のモンスターはテイムできない、と言われているんですよ」


 管理者によって管理されているから、他から干渉されることがないのだと。

 そういえば、これだけ倒しているのに1匹も従う様子を見せることがない。

 というか、傷ついても逃げ出そうとするモンスターがいないのはそういう理由なんだな。



 3層はアーミーアントの巣だった。

 他のモンスターはいない、すべて蟻の群れだ。


 ミューと交代で戦っていたのだが、自分の腰下まであるサイズの蟻が毎回10匹以上の単位で攻めてくるのだ、とてもじゃないが堪らない。

アーミーアントとは別名人食い蟻と言われ、硬い殻と柔らかい腹、丈夫な噛み砕く顎と、骨まで食い散らかすその悪食さが特徴だ。


 「助けて、ミューえもん~~!」

 「…なんですか、それ?」

 「気にしないで、とにかく、へるぷみー!」


 数が多すぎる…結局、相変わらずのミューさん無双に頼ってしまった。


 ついでにプリムにも少し協力してもらう事にした。

 プリムの魔法は威力が高すぎて、使いどころが難しいものばかりだが、ここならそれほど問題ない。

 1匹毎の強さはともかく数が問題だ、しかもすべてが地を這うように攻めてくるので躱しながら戦うと言う訳にもいかない。

 そのかわり正面から戦うことになるので、プリムの範囲魔法も使いやすい。

 囲まれない様に正面から対峙して、なぎ倒していく。



 「魔王様は魔闘法は使用にならないのですか?」


 唐突にミューがそんなことを言ってきた。


 すごく中二病を刺激する名前だな。

 しかしそんなスキルはなかったはずだが。


 「魔闘法って、何?」

 「その名の通り魔力で戦うことです」

 「強化系のウェポンとかの魔法とは違うの?」


 ウェポンの魔法とは魔法で作った属性剣のようなものを作り出す魔法だ。


 「違いますね。 魔闘法は魔法ではありません。 ただ魔力を纏う技です」


 魔法とは、基本的に魔力を媒体に存在を変質させ、何かを生み出すものである。

 例外として無魔法というものがあるが、これも厳密には魔力を変質させて現象を作り出している、らしい。


 魔闘法は魔力をそのまま肉体に纏い、留める技法である。

 それは伸縮自在の刃になったり、鎧になったりする。魔闘法はあくまで魔力を魔力として使う物と、そういう違いらしい。

 魔力を垂れ流しにするようなものなので、魔法よりは魔力効率が良くない。

 よほど魔力に余裕がない限りは使えないため、一般的ではない。

 だが、俺は今ほとんど魔法を使っていないので、余りまくってるくらいだ。


 「必要なのは繊細な魔力操作ですね」


 つまり魔力操作のスキルが必要になると。

 【魔力操作】は現在Lv1だ。

 ミューの魔力の流れを参考に、試しにそのままやって見たがどうにも上手くいかない。

 なんというか…漏れ出てる。

 留めるという作業が予想以上に神経を使うのだ。


 BPは散々たまったので、試しに上げてみる。

 Lv2で何とか形になったけど、ちょっときつい。

 Lv3まで上げて何とか実用レベルで使えそうになった。


 そのまま魔力剣に纏わせ、伸ばした刃で蟻をまとめて横切りにしてみると、サクッと切れて一振りで5匹が倒れる。

 この魔闘法には魔法威力も関係するそうなので、そのせいかもしれない。

 ならプリムが使ったらすごいことになるんじゃない? と思い聞いてみるが、魔法威力が高い人はその分制御が難しくなるから、魔法タイプの人にはほとんど使い手がいないのだそうだ。

 まぁ、そもそも近接戦闘用の武技みたいなものだから、習得のために頑張ることもないだろうしね。

 なるほど、だから俺でもLv3も必要だったということか。

 ってことはLv上がったら使えなくなるんじゃ…。 まぁその時になったら考えよう。

 しかし、これは使える…ニヤリ。



 そこからスーパー魔王タイムが始まる。


 「くくく、紙の様に切れるわ!」

 「魔王様…正気に戻ってください」


 だって、こいつら隊列組んでどんどん進んでくるからスゲーまとめて斬りやすいんだもん。

 軍隊蟻だなんて、名前負けもいいところだ。

 少しは戦術というものを学んで出直してくるがいい。


 「蟻のようにうじゃうじゃと!まとめてたたき切ってくれるわー!!」

 「魔王様…蟻です」


 ミューはくだらないボケにも付き合ってくれるいい子だなぁ。



 その間、プリムはというと


 「楽、素晴らしい」


 ずっとプリムをしていた。


   ・

   ・


 とにかく数が多く、また道が広すぎて隠れる場所も確保できなかったため、次の階層の階段を探していたのだが、ひときわ大きい広間と異様な雰囲気を感じ、通路の脇に隠れて観察する。


 ”クイーンアント 種族:虫族-アント Lv32 HP3159/3200 MP2040/2500”


 広間の奥に、それはいた。

 奥に周囲には10匹ほどの今までのアーミーアントより一回り大きな個体が護衛している。

 鑑定眼で見てみるインペリアルアントLv23となっている。


 「女王蟻だ…・」

 「フロアボスというやつですね、上に階層にいないので忘れてました」

 「忘れんなよ!」


 しかもLvがたけぇ…現在こっちのPTで一番高いプリムでLv22、ミューがLv21、俺がLv17である。

 全員ステータス的にはインペリアルアントよりは勝っているが、それでも数が違いすぎる、その上クィーンアントまでいるのだ。

 勝てる確証のない相手に挑むのは馬鹿のすることだ、少なくとも俺はそう考える。

 迷っている間に見つかったら目も当てられない、即時決断して全員に言い放つ。


 「よし逃げよう!」

 「馬鹿な!」


 ほとんど条件反射の様にミューが否定してくる。


 「流石に無理だよ、ミュー…」

 「魔王が背中を見せるなど、ありえません!」

 「無理言うな、別に根拠もなくいってるわけじゃない。 俺には敵のステータスが見える。 知っているだろ? 時には引くことも大事なんだぞ! 学べ!」

 「それでも…魔王に撤退の二文字はありません!」


 言うと同時に、ミューが前傾姿勢で飛び出す。


 「あっ!…くそ!あのバカ!!」



【公開ステータス】

 ユウト=シノノメ 18歳 ♂ Lv11→17 種族:異世界人 職業:魔王

  HP 252/263 MP 185/330

  STR 284 VIT 230 AGI 368

  MA 244 MD 201


 基本スキル

   身体操作Lv2 魔力操作Lv3

   空間把握Lv1

 武技スキル

   剣術Lv3 体術Lv1

 感知スキル

   危険感知Lv2 気配感知Lv3

 強化スキル

   身体強化Lv2 魔力強化Lv1

 魔法スキル

   火魔法Lv2 土魔法Lv1 風魔法Lv1 無魔法Lv1

   次元魔法Lv2

 特殊スキル

   鑑定眼Lv3


 魔剣サブジュゲイド 1段階 Lv3 

   ATK:100+100 耐久力:- 属性:-


 称号:異世界の来訪者 勇者の卵 魔族を従える者 ヘタレ  魔物の主 



 ミュハイル=フィルツ 20歳 ♀ Lv18→21  種族:魔族-アズラ族 職業:執事

  HP 307/382 MP 199/211

  STR 341 VIT 262 AGI 381

  MA 203 MD 254


【スキル】

 基本スキル

  身体操作Lv4 魔力操作Lv1

 技術スキル

  剣術Lv5 槍術Lv3 体術Lv3

 感知スキル

  危険感知Lv1

 強化スキル

  腕力強化Lv1 身体強化Lv2 魔力強化Lv1

 魔法スキル

  暗黒魔法Lv2

 固有スキル

  魔覚醒

 

 称号:純魔の血族 闇戦乙女(ダークヴァルキリア) ツンデレ お転婆姫 魔王の執事 暴走娘 魔王の嫁


 主人:ユウト=シノノメ



 プリム 16歳 ♀ Lv20→22 種族:魔族-バラキ族 職業:メイド

  HP 198/200 MP 214/556

  STR 176 VIT 201 AGI 215

  MA 631 MD 335


【スキル】

 基本スキル

   魔力操作Lv5

 武技スキル

   杖術Lv1 結界術Lv2

 強化スキル

   魔力強化Lv3

 魔法スキル

   火魔法Lv2 風魔法Lv1 水魔法Lv3 土魔法Lv1 無魔法Lv3 

   氷魔法Lv1 雷魔法Lv3 次元魔法Lv1 暗黒魔法Lv4

 固有スキル

   吸魔の魔眼


 称号:魔眼の魔女(デモンアイズウィッチ) 魔王のメイド 恋する乙女 魔王の嫁


 主人:ユウト=シノノメ



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