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ゆままゆ! 勇者な魔王 と 魔王な勇者←(俺)  作者: 都留 和秀
第一章 魔王と勇者、召喚される
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5話 城塞都市ヴォルブルク

    ・

    ・

    ・



 道中、のどかな街道を歩きながら、俺は『メニュー』を確認する。


 さて、ここでミューのステータスを公開しておこう。



 ミュハイル=フィルツ  20歳 ♀ Lv18  種族:魔族-アズラ族 職業:執事

  HP 307/310 MP 150/180

  STR 288 VIT 219 AGI 314

  MA 185 MD 210


 基本スキル

   身体操作Lv4 魔力操作Lv1

 技術スキル

  剣術Lv5 槍術Lv3 体術Lv3

 感知スキル

  危険感知Lv1

 強化スキル

  腕力強化Lv1 身体強化Lv2 魔力強化Lv1

 魔法スキル

  暗黒魔法Lv2

 固有スキル

  魔覚醒

 

 称号:純魔の血族 闇戦乙女(ダークヴァルキリア) ツンデレ お転婆姫 魔王の執事 暴走娘 魔王の嫁


 主人:ユウト=シノノメ


 純魔の血族 :原初の魔人の血を色濃く受け継ぐ者(スキル付与:魔覚醒)

 闇戦乙女(ダークヴァルキリア)  :戦場を駆け、死をまき散らす黒き戦乙女

 ツンデレ   :心と態度がばらばらな人、たまには素直になりましょう

 お転婆姫  :常に周囲を騒がせ続けた迷惑な少女

 魔王の執事 :魔王に認められし従者

 暴走娘    :周囲の話をよく聞かずに行動してしまう

 魔王の嫁  :魔王の寵愛を受けし者



 言いたいことは分かる。

 いろいろ突っ込みどころはある…というか、ありすぎる。

 だが、もう馴れたので、ここではスルーしておこう。


 ただ……ツンデレとか、この世界とは文化が違うだろうがよ。


 まぁいい、一つだけ気になったから、ミューに聞いてみる。


 「ミュー」

 「はい、なんでしょうか?」

 「純魔の血族ってなに?」

 「!!?」


 目を見開き、口をパクパクさせて驚いている。


 最近、リアクションのバリエーションますます増えていくなこの子。


 「いや、まぁ話ずらいなら別にいいよ。 ただ前に言った通りステータス確認したら称号の欄に書いてあったからさ。 ちょっと気になってみただけなんだ。なんか言いにくいなら別にいいよ」


 「あ、いえ…別に隠してたわけじゃないんですが」


 「私は、魔族の中でも純魔とも呼ばれる、純血種の魔族なのです。 純魔は魔族における貴族の様なものでして、今は少ない魔族の国にあって、それなりに厳しい家柄なのです」


 「ふーん、じゃぁミューはお嬢さんだったんだね。 でも、なんで執事なんてして…それになんか最初言いにくそうにしてたのはなんで?」


 「それはですね……実は…」


 約1年前、ミューは元々フィルツ家の一人娘で、お嬢様な暮らしをしてたらしい。

 ところが、これまたありがちな貴族の政略結婚の見合いに出されようとして、困っていた時に偶然、ミューに”お告げ”があったらしい。


 一年以内に魔王(俺)が召喚されると。


 しかし、実家に知らせたところで、他の人物を代わりに派遣されるだけ、そこでこれ幸いと友人だが変わり者で、また周囲から忌避されていたプリムを誘い、実家を逃げ出して一緒に例の洞窟にて召喚陣を敷いて俺を待っていたと。


 ふむ、ミューは元から暴走娘だったようだ。

 

 「と言う訳でして…実家に居場所がばれると、間違いなく連れ戻されますので」

 「へぇー、でも何で執事?」

 「カッコいいじゃないですか!憧れだったんですよ!」

 「……なるほど」


 ミューは最初の畏まった態度より、きっと今の姿が素なのだろう。

 最初とはずいぶんと印象変わってしまったな。


 「プリムは…一緒に来てよかったの?」

 「問題ない、楽しい、幸せ」


 プリムは相変わらずの無表情だが、少しだけ微笑んでいるように見える。

 最近になって、少しだけ微妙な変化が分かってきた。


 「プリムもいろいろありましたからね、町にあのままいてもきっと良い事なかったでしょう」

 「(コクコク)」


 プリムが同意を示すように頷く。


 「ふーん、金色の瞳か、スゲーきれいなのに残念だな」

 「…魔王様、これあげる」


 なぜか、飴をもらった。

 プリム、今日は機嫌いいのかな。


 「でも、魔眼なんだっけ?」

 「…そう、吸魔の魔眼」


 そう言って、金色の瞳を俺に向けてくる。

 俺はその瞳を向けられるまま、まっすぐに見つめる。


 …やっぱきれいなのに残念だ。


 プリムの口角が微かに動く。

 やっぱり今日は機嫌がよさそうだな。


 「!? 魔王様、知ってらしたのですか…あ、いえ、仲魔になった者のステータスを見れるんでしたか」

 「うん、最初に契約したときにね」

 「魔眼…特に破魔の魔眼と吸魔の魔眼と呼ばれるものは、魔法を得意とする者が多い魔族においては忌避されるんです。

 魔法が発動ごと無効化されてしまうんですから、当然と言えばそうですね。

 特に小さいときは魔眼のコントロールが出来ずに、周囲に無差別に影響を与えてしまいますから余計に…今は大丈夫ですけどね」

 「うん、無問題」

 「ふーん、みんな結構いろいろあるんだね」

 「でも、今は楽しい」

 「そうですね、最初魔王様に出会ったころは…ホント、こんな人とは思わず、どうしようかとも悩みましたが、まぁ結果的には良かったと思いますね」

 「…ミューとは、俺という人間について、いつか誤解を解かなきゃいけないね」

 「えぇ、よろしいですよ。どうせ契約もしましたし、時間はたっぷりありますから。 …一生をつかって誤解を解いてください」


 ミューがふふっっと優しく笑って、こちらを見つめる。


 くっ、何時の間にそんな技を…。



    ・

    ・

    ・



 ──センレイア王国 城塞都市ヴォルブルク


 道中、野宿を幾度繰り返し、ゆったりと進んできたのだが、運がいいのか悪いのか、途中に魔物と出会うことなく予定通り5日で町が見える場所まで来れた。


 「壁?」

 「あれは城塞都市ヴォルブルクの城壁ですね」


 目に見えるのは高くそびえ立つ壁。

 壁に阻まれ町の姿は見えない。

 ただ見張り台として立っているのであろう3本の搭だけが見える。


 「ここら辺は魔族の領域に比較的近いですからね。 この町は周辺で一番大きな町ですし、最前線の町といったところでしょう」


 まぁ、魔族と人族の本格的な戦争は、先代魔王が勇者に倒されて以来、約100年ほどないのだそうだけど。


 「ミュー、頼むから町についても大人しくしててね」


 念のため、事前にくぎを刺しておく。


 「なっ!魔王様、なぜ私だけ!」


 信用できないからです。

 理由は自分の胸に聞いてください。


 「あと、町の中とか人前では、絶対に『魔王』なんて呼ばないでね!」

 「もちろんです魔王様!」

 「ミュー…」


 心配だよ、ミュー。

 だって、この子時間を追うごとにバカっぽいキャラになっていくような気がするんだもん。

 いや、これが素なのか。

 …残念美人ってやつだな。


 「えと、ユ、ユート様…」

 「わかった、ユート様」

 「うーん、本当は様付けもやめてほしんだけどね…まぁいいか」


 城門に近づくと、数人の門番らしき兵士達が立っている。

 商人の馬車が入る際に、身分証明書らしきものを提示しているのが見えた。


 「そういえば…身分証明書とかってどうすればいいんだろう…」


 すっかり忘れていた。

 ここはテンプレらしく、記憶喪失の振りでもするか…いや、三人揃って記憶喪失とか無理だろ。

 無くした…これもちょっと無理があるか。


 俺が悩んでいると、ミューが大きな胸を張って答える。


 「お任せください!ま…ユ、ユート様、きちんと私が用意しております」


 そう言ってリュックから1枚の厚紙を出してくる。

 ん、これ、俺の身分証明書か!?


 「すごい、いつの間に作ったんだ!?」

 「私が作った」


 プリムがエッヘンと胸を張る。

 珍しくわかりやすいドヤ顔だ。

 ってか、作ったって、これ偽造だよな…。

 まぁ入れりゃなんでもいいか。


 「ようこそヴォルブルクへ、身分証の提示をお願いします」


 俺たちが厚紙の証明書を門番の人に渡すと、中身を開いてチェックを始める。

 途中ちらちらとこちらを見てくる。

 …やめろよ、不安になるじゃないか。


 「この町は初めてですか? ここにはどのような用件で?」


 「はい、僕たちは冒険者になりに来ました。 ここにはダンジョン探索の拠点を兼ねて」


 事前に決めていたセリフなので、落ち着いて答える。


 「なるほど、最近は平和ですが、スラム街は治安が悪いのでご注意を、ダンジョン探索者になろうとするような方には、不要な忠告かもしれませんがね。 冒険者ギルドは中央通り進んで東門の方向に向かう途中にありますよ。

 では、ようこそヴォルブルクへ!」


    ・

    ・

    ・


 「無事は入れてよかったね」

 「はい、第一関門突破ですね。 くくく…愚かな人間どもめ」


 ミューの病気がまた始まったので、頭にチョップする。


 「痛いです、ま…ユート様…」

 「はいはい、早く慣れてね名前」


 「ユート様、あれ」


 プリムが指し示した建物を見る。

 大きな3階建ての木造建築の建物で、入口は西部劇のバーを思い起こさせるような両開きのバネ式のドアになっている。

 ドアの上に看板があり、『冒険者ギルド』と書かれている。


 中に入ると左手に掲示板が並び、右手に軽食を出すようなラウンジ、中央に受ける家のカウンターが並んでいる。

 今は昼時で人の出はいりは多くない。

 そのためかカウンタには5つのカウンターがあるものの、今は二人しか座っていない。

 そのうちの片方の元に行き、登録をお願いする。


 「ようこそ冒険者ギルド、ヴォルブルク支部へ。 本日はどのような用件でしょうか?」


 受付のお姉さんは身長160センチくらいの、頬にうっすらついたそばかすがかわいらしさを誘う、20歳くらいのお姉さんだ。


 「すいません、冒険者登録をしたいのですが」

 「かしこまりました。 ではこちらに必要事項の記述をお願いいたします。 代筆が必要でしたらお申し付けください。 新規登録者に限り無料で行っております。 それと初回登録料として一人100G必要となりますがよろしいですか?」


 お金必要だったか。

 文字もかけないんだよな、読めるのに。

 ミューに無言で目を向けると、小さくうなずいて正面を変わる。


 「これでお願いいたします」


 ミューが三人分の用紙を書き上げ、代金と共にお姉さんに渡す。

 渡された紙と代金を受け取ったお姉さんが、馴れた手つきで手早く記述内容を確認する。

 

  「はい、問題ありません。 では次にステータスのチェックを行いますのでこちらの石版に触れてください。 この情報はギルドで管理され、外部に漏れることは決して御座いませんのでご安心ください」


 三人が順に手を当てて、ステータスをチェックしていく。

 ミュー、プリムと続いて、Lvとステータスの高さに少し驚いているようだ。

 だが俺が最後にチェックした時に、一人だけ低くて安心したような、憐れむような視線を送ってくる。

 まぁ、所詮Lv5ですよ、余計なお世話です。


 「はい、結構です。 最後に登録証を作ります。 こちらのカードに魔力パターンを登録しますので、それぞれ血を一滴垂らしてください」


 指にナイフを差し、出された銀色のカードに血を塗る。


 「はい、これで登録は完了です。カードは2,3時間ほどで出来上がりますが、受け取りは明日でもいいので後ほど取りに来てください。 続いてギルドの説明に入りますが、よろしいですか?」


 「はい、お願いいたします」


 「こほん、では説明いたします」


 まず最初に、冒険者ギルドは例え依頼にかかわって死亡した際にも、冒険者に対するリスクや謝罪を一切を行わない。

 例外は指名依頼──ギルド側から指名で依頼された場合──のみとのこと。


 依頼にはランク分け制度を実施し、制限を掛けている、依頼には通常依頼と討伐依頼と継続依頼があり、通常依頼は素材の収集や住民からの個別依頼があり、基本的には自分のランクの一つ上までしか受けられない。

 素材収集に関しては、現物持参に限り受け付ける。

 討伐依頼に関しては、ランクにかかわらずDランクまで受けることが可能だが、Cランク以上は通常依頼と同様に一つ上までのランクでないと受けられない。

 継続依頼は依頼を受ける必要はなく、討伐証明部位を持参すればいい。

 当然ランク制限はない。

 ダンジョンに関して聞くと、素材に関しては買い取るが、ダンジョンで倒したモンスターから討伐部位を抜き取り、依頼を達成したことがばれた場合に重大な罪に問われるとのこと。

 また、通常依頼、討伐依頼共に依頼未達成となった場合には、報酬金額分をギルドに罰金として納めなければならない。

 あくまで討伐依頼はフィールドに限るとのこと。


 ちなみにランクはS-Fまで、新規登録者はFとなる。

 またギルドでは、一部資料の解放と銀行の様なものをしており、預けた金額はギルドカードを提示すればどこでも引き出し可能とのこと。

 まぁ、俺には『格納』があるから、特にこれは必要ないな。


 「以上になります。 質問がありましたら今ならお答えできますが、何かありますか?」

 「ランクはどのような基準で上がりますか?」

 「ランクは依頼を受け達成することで上がります。 ギルドでは独自に設定したGPギルドポイントがあります。 依頼を達成することに応じてGPが加算されて、一定ポイントを超えることでランクが上がります。 また討伐部位や素材売却でもGPは加算されます。 現在のポイントはギルドカードに記載されますので、後ほどご確認ください。

 ただしBランク以上に上がる場合には、ギルドが提示する条件を受けていただく場合があります。 条件はその都度変わりますのでその際には再度お聞きください。 またBランク以上に上がると様々な特典がありますのでお勧めですよ」

 「Bランクに上がることでギルド側に呼び出されることはありますか?」


 その質問に受付のお姉さんは少し驚いた顔をしたが、すぐに表情を元に戻して答え始める。


 「Bランク以上は一流の冒険者とされていますので、ギルド側から指名依頼がなされる場合や、魔物が大量発生した場合などに強制召集されることがございます」

 「指名依頼は断れないのですか?」

 「指名依頼は基本的には任意になります。 ですが、指名依頼がされる場合はほとんどの場合が緊急の依頼になりますので、できる限り参加をお願いしています。 その際に受けている依頼があった場合でも、ギルドが責任を持って対処することをお約束しております」


 「なるほど、わかりました、以上です。 ありがとうございました」


 「いえ…、ですが若い方でなりたての方には、無理をして依頼をこなし、死ぬ方が多くいますので、くれぐれも無茶は慎んでいただきますようお願いいたします」


 ん、なんかお姉さんの顔が微妙そうだ。

 あぁBランクが何チャラとか質問してたせいで、典型的な生き急いでる若者に見られてしまっただろうか。


 「はい、もちろんです。 命があっての物種、”安全”第一ですからね!」


 なので安全を強調して力強く返しておく。

 今度は隣でミューが微妙そうな顔をしている。


 「はい、では以上です。 ギルドカードは後ほど受け取りにいらしてください、その際、お三方のどなたが来ていただいても構いません。 ただし、ギルドカードは万が一紛失した場合、再発行には10万Gいただきますのでご注意ください」


 「はい、有難うございます。 あぁ、そうだ、この近くに魔物資料を見れる場所と、ダンジョンの資料を見れる場所はありますか?」


 「資料は当ギルド二階が資料室になっております、貴重な資料も多いですので入場には補助金として1000Gがかかります。 また貸出は行っておりません。 もし、購入なさりたいのであれば、各本屋店があります。 また、中央通りを北門に向かったところに図書館がありますので、そちらをご覧になってみるのもいいかもしれません」


 「わかりました。 いろいろ有難うございます」


 また夕方にギルドカードを受け取りに来ますと言って、ギルドホールを後にする。


    ・

    ・

    ・


 「意外でした…」

 「なにが?」

 「いえ、ユート様があんなに教養ががあると…は、いえ、その…頭がよろしいのですね!」

 「もうフォローになってないけど…」


 とりあえずミューが俺をどう見ているのかが分かった。

 後でお仕置きしてやろうと心に決める。

 元の世界的には普通の事だが、この世界、それなりに物品は充実してるようだけど、教育制度はまだ一般的には復旧してないみたいだからね。

 学校はあるけど、貴族と一部の裕福層しか通ってないらしいし。


 「とにかく、無事登録も終わったし、一度どっかで食事にしようか。 そのあとで宿を取りに行こう」

 「そうですね。 しばらく野宿だったので、少しゆっくりとしたいですしね」

 「今夜は、お楽しみ、ですね?」

 「「ぶっ!」」


 いきなり飛び出たプリムの言葉に、俺とミューは思わず吹き出してしまった。

 ミューはあわあわと、顔を真っ赤にして混乱している。


 「しないの?」

 「ど、どうかなぁ…」


 言葉に出してしまうと、自分ががっついてる猿のような気がして少し自己嫌悪に陥る。

 なのでここは話を流しておく。 沈黙は金だ。

 思えば…なし崩しとはいえ二人同時だもんな…。

 日本は一夫多妻じゃないから、やっておきながら今更なんだが理性が邪魔する。


 適当においしいにおいがしてきたので誤魔化すように店に入る。


 昼過ぎでピークを越えてるせいか店の中の人はまばらだ。


 「いらっしゃい!何にするね!」


 店に入り空いてる席に座ると、恰幅の良いおばちゃんが話しかけてくる。

 とりあえずこの世界のメニューがよく分からないので、お勧めを3つと言って注文する。

 ついでにお勧めの宿はないかを聞いた。


 「それならうちに泊まりなよ!今なら4人まで寝れる大部屋が空いてるよ!」


 ここ宿屋だったのか。

 入って目の前がカウンターだったから気が付かなかったが、隣の建物が宿屋を営んでおり、一階でつながっているそうだ。

 宿屋と食堂は息子夫婦と分けて一緒に経営しているらしい。


 というか、いきなり同じ部屋をお勧めするのはやめて! 否定はしないけど!


 「じゃぁ、おねがいします…とりあえず1週間ほど大丈夫ですか?」

 「了解!話は通しておくから、後で飯食ったら受付にいきな」


 おばちゃんがニンマリといった顔で言ってくる。

 おばちゃんはどの世界でも共通の生き物らしい。


 出てきた料理は魚のムニエルっぽい定食だった。

 アジの様な魚だったが臭みもなく、備え付けられたハーブっぽい香料が効いておいしかった。


 食堂を後にして、そのまま宿屋の受付をする。


 「いらっしゃいません、食事宿屋『眠り熊亭』にようこそです!」


 受付に立っていたのは15歳前後くらいの小さい女の子だった。

 多分息子夫婦さんの娘とかなのだろう。


 「さっき、食堂のおかみさんに話を通してもらったんですが、入れますか?」

 「え…あっ!はい!!大丈夫です!」


 なにやら顔を真っ赤にして受付をしてくれる。

 …これ絶対なんか言われてる!ちょっ、こんな小さい子に…おばちゃん何を吹き込んだ!

 まずい、明日の朝とかきっと顔合わせられない事になる。


 「えと、大部屋ですので一泊150Gになります。一週間で…1050Gになります。先払いになりますので、よろしくお願いいたします」


 俺はわずかに顔を引き攣らせたまま、貨幣を出して少女に渡す。


 「はい、たしかに受け取りました。こちらがカギになります。お部屋は3階の階段を右に曲がった部屋になります。食事は朝夕と無料になります。お食べになる場合は、食堂で鍵を見せていただければ大丈夫です」


 「うん、ありがとう…」


 なんか、おばちゃんのパワーにやられて一気に疲れたよ…。


 部屋にはベッドが4つ置いてあり、かなり広い。

 部屋に荷物を置いた後は、今日は自由ということにして解散する。


 俺は街を散策がてら冒険者ギルドにギルドカードを取りに行き、ミューとプリムは本屋と図書館を回るとのことだ。


 ギルドにつくとすこしだけ人が増えていた。朝に出かけた冒険者のうち早いグループが帰ってきているのだろう。

 ちょうどよく受付してもらったお姉さんが空いていたので、そこに行く。


 「すいません、ギルドカードを受け取りに来たんですが」

 「あら、さっきの、はい、出来てますよ」


 ギルドカードは薄い白銀の様な板で出来ている。

 自分のカードに魔力を通すと情報が表示されるようだ。

 

 まだこの時間は暇な時間らしく、そのあと世間話がてらお姉さんと話をする。

 ついでに一緒にいたミューとプリムの事でからかわれた。

 その代わり、近くのダンジョンの事少し教えてもらったからいいけどね。


 少し散策してから宿に帰り扉を開けると、先に帰ってきたミューとプリムが二つのベッドを並べている最中だった。


 「「「…………」」」


 その日はすごく頑張りました。

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