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ゆままゆ! 勇者な魔王 と 魔王な勇者←(俺)  作者: 都留 和秀
第一章 魔王と勇者、召喚される
4/44

4話 ミューの決意と…



──スライム生活5日目


 俺は今、相変わらずスライムをプチプチしていた。

 以前スライムプールを1個潰してしまったので、効率は下がるが、適度に他のプールを巡回することにした。

 2日目にLv5になったけど、多分もうスライムプールでは上がらないんだろう。それからLvに変化はない

 ただし、BPは驚くほどに溜まった。

 それをすべて、惜しみなく自己強化に注ぎ込む。

 ミラやプリムの強化も考えたが、取りあえず圧倒的に弱い自分を優先することにしたのだ。


 これでもうスライムとは…、いや、もう気にするのはやめよう。



 ちなみに、現在の俺のステータスはこんな感じだ。


 ユウト=シノノメ Lv5 18歳 ♂ 種族:異世界人 職業:魔王

  HP 98/98 MP 121/121

  STR 75 VIT 64 AGI 88

  MA 68 MD 61


 基本スキル

   身体操作Lv1 魔力操作Lv1

 武技スキル

   剣術Lv3

 感知スキル

   危険感知Lv2 気配感知Lv2 魔力感知Lv1

 強化スキル

   身体強化Lv1 魔力強化Lv1

 魔法スキル

   火魔法Lv2 土魔法Lv1

   次元魔法Lv2

 特殊スキル

   鑑定眼Lv3


 魔剣サブジュゲイド 1段階 Lv3 

   ATK:100+100 耐久力:- 属性:-


 称号:異世界の来訪者 勇者の卵 魔族を従える者 ヘタレ  魔物の主 


 感知能力は、安全のために特に大事なので優先して上げた。

 基本スキルの操作系の二つは、実はこの世界の住人ならだれでも持っているものらしい。

 特に、身体操作を持ってない人は運動音痴のような人だけだそうだ。 

 おいおい、最初に教えてほしかったよ…ミュー。

 武技スキルは、魔剣がある以上、基本的に剣術一本だ。

 まぁ、余裕が出来たら体術くらいは取った方がいいかもしれない。



    ・

    ・

    ・


 「魔王様、お話があります」


 朝食の終わりの際に、ミューがそう言って切り出してきた。


 「毎日毎日スライムスライムと…。 魔王として、このままではいけないと思うのです!」


 ミューの口調はだいぶ砕けてきた。

 最初の様に畏まった話し方は…もうしてくれない。


 先に言っておくが、断じてミューの俺に対する評価が駄々下がりしたわけではない。

 ただ単になじんだというだけの話だ。


 ウン…キットソウダヨ…。



 「そろそろ魔王としての自覚を持ち、今こそ人間どもに恐怖を振りまくべきだと思うのです!」


 ミューが、バンッと食卓を叩きながら熱弁している。


 「でもさー、魔王って言われても具体的に何から始めていいのか分からないんだよねー」



 ──ちなみだが、今は3人とも食卓に一緒に座って食事をしている。

 最初は断固として譲らなかったミューだったのだが、魔王権限をフル活用してなんとか座らせた。

 その時の様子を具体的にいうとこんな感じで──

 


 「執事たるもの、主と同じ食卓に座り食事をいただくなど、ありえません!」

 「でも、フリムは座ってるよ?」

 「フリム!」

 「魚、おいしい」

 「まぁまぁ、でもさ、ミューは執事っていうけど、執事の仕事って何かな?」

 「主の従者として、御仕事のサポートから身の回りのお世話まで、常に御傍に備え、全力で支えることに御座います」

 「じゃぁ、主が不快に思うこともしないよね」

 「当然です!主には常に快適な空間を維持していただかなければなりません。 そのために全力を尽くしておりま、す…」

 「いま、俺、すごく居心地悪いんだけど、何でかな?」

 「い、いえ、それとこれとは、話がちがうかと…」

 「何でかな?」

 「…」



 そのあとプリムに──「魔王様、マジ鬼畜パネェ」って言われた。

 そんな言葉づかい、どこで覚えた…あ、俺か。


    ・

    ・

    ・


 つい面倒くさくて昔話に現実逃避してしまった。


 ──話を戻そう。


 「城…そうです城ですよ!魔王様の居城を作るべきです!」


 ミューが、自分の言葉に名案とばかりに、ぱぁっと花が開いたような笑顔でそう言ってくる。


 「そう、その禍々しくも雄々しきその姿に、すべての人間どもが畏れ!ひれ伏すのです! ふふ…ふふふふ…ふははははは!」


 あーあ、とうとうテンション上がりすぎて、高笑いまで始めちゃったよ。

 笑いの三段階活用とか…お前が魔王か!



 「まぁ…城はともか、く拠点はほしいかな。 この洞窟って、ダンジョンとかそういうの作るのに活用できないの?」


 「ここは召喚陣を設置しただけのただの洞窟ですので、ダンジョンにはなりませんね。 それに、洞窟なんて邪道ですよ!魔王ならやはり城です!そんな、簡単に済まそうだなんて、いつか来たる勇者に対して失礼だとは思ないのですか!」


 ミューよ、たまーに思うんだが…君、本当に勇者嫌いなんだよね? そうなんだよね? 時々勇者を優遇しようとしているような言葉が出てるような気がしてならないんだが、実はファンなんじゃないだろうか。


 「だいたい城って…だれがどうやって作るのさ?」

 「何を言ってるんですか? 建物を作るのはいつだって大工の仕事ですよ?」


 おっとファンタジー、もっと頑張れよ。


 「過去の魔王の居城とか…ないの?」

 「そんなの、とっくに勇者に壊されているに決まっているじゃないですか」


 100年前の先代魔王は勇者に負けたらしいからなぁ。 そりゃ壊されてるか…。


 「…建設ってお金かかるよね?」

 「何を言っているんですか、あなたは魔王様であらせられるのですよ!」


 お、これはなんかみんなが勝手に作ってくれるとかなのか?


 「大金はたいて建てるに決まっているじゃないですか!」


 「よし、じゃぁ俺、今日も元気に狩りに行ってくるわー」 

 「あー待ってください、待ってください。 どうして行っちゃうんですかー!」


 慌てたミューが、縋りつくように腰に抱き着いて止めてくる。


 「はぁ…ちなみにいくらくらいかかるの?」

 「んー、そうですね…偉大なる魔王様が、憎き勇者を待ち構えるための居城なのですから、しょぼい城なんて立てたらそれこそ、魔王様の名に傷がつきます。更にそのせいでもし勇者が帰ってしまったら、もう目も当てられません。なので最低建設費用は軽く10億G(ゴル)といったところでしょうか」



 ここでこの国の『お金』の説明をしておこう。

 単位はゴル=Gとされ、貨幣価値は100円=1Gといったところだろうか、細かいところで物価は変わるが食料品基準で行くとだいたいこのくらいだ。

 意外にも、印刷技術は発展しているようで、2000札のような半端なのははないが1000G、500G、100Gは札で発行されている。

 一度見せてもらったが、ちゃんと透かしも作られていた。

 硬貨は50Gと10Gが銀貨で5Gと1Gが銅貨で作られている。

 それぞれ銀貨、半銀貨、銅貨、半銅貨と呼ばれている。

 昔はすべて硬貨だったそうだが、資源不足だった時代にミスリルや白銀といった硬貨は回収され、紙幣に変わったそうだ。


 つまり、10億G(ゴル)とは、日本円で約1000億円を要求されたということだ。

 昔見た、ヨーロッパで売りに出されていた城の値段が数億円程度だと考えると、この値段は異常だ。いったいどんな城を建てようとしているんだ、こいつは!


 「そんな金、あるかーー!!」

 「そ、そんな!魔王なのですから、お金がないなら周囲の国々を襲って、略奪してしまえばいいではないですか」


 くっ、結局そこに話を戻しやがるか。


 「…そんなことしたら、ミューさん待望のお城で対決する前に、勇者が乗り込んで来ると思うんですが? それも何もない青空の下で誰の目にも留まらずに、語られることもなく…そこんとこ、どう思うよ?」

 「はっ!…ぐ、ぐぐっ、大変失礼いたしました魔王様。不肖このミュハイル…考えが足りませんでした」


 ふぅ…なんとかごまかせた。

 微妙な説得だと思ったんだが…案外ちょろい、しかし大分扱いなれてきたとはいえ、毎回毎回疲れるわー。


 「で、他に案はある?」

 「そうですね…ないこともありませんが」

 「とりあえず言ってみてよ」


 「先ほどの話に合ったダンジョンというものです。 ダンジョンコアを手に入れ、その中に大量の魔力を注ぎ入れて、城を形成するのです」

 「え、それってダンジョンだよね?」

 「そうですよ」

 「ダンジョンなのにお城になるの?」

 「魔王様、ダンジョンというのは様々な形があって、なにも洞窟の形をしているものばかりではないのです。製作者が望めば、どんな形にもなります」

 「じゃぁ、さっきお城を建てるってのはなんだったの?」

 「物質の形成というのは、大量の魔力を使用いたします。 最初から魔力ですべてを作ってしまうと、膨大な量が必要となりますね。 なので本来、大型のダンジョンを作る場合は、最初にお城のひな型を作り、そこにダンジョンコアを埋め込むことでコストを削減します。 ダンジョンが洞窟の形になるの場合が多いのは、穴の中に作った方が魔力の経費が一番掛からないためです」


 な…なるほど、今までで一番理にかなった話だった。


 つまり、ダンジョンコアを手に入れて、そのあと大量の魔力を集めればいいというわけか。


 「魔力はどうやって集めるの?」

 「本来、魔王様はその存在自体が特殊な体質により周囲から多くの魔力を集めます。 ですが一から魔王城を作るほどの魔力となるといったい何十年かかるかわかりません。 ですので──」


 ミューが口角を上げてにんまりと悪い笑みを浮かべる。


 「この際なので、他のダンジョンから奪いましょう!」


 「いや…それって、もしかして世界中のダンジョンを踏破しろということ・・か?」

 「もちろんです、ついでにそこに住まうボスモンスターも狩ってもらいます! 魔王様の力になるのですから、正に一石二鳥ですね!」


 は?何言ってんの、この暴走娘!


 「ボスモンスターって…強いよね?」

 「当然!中級ドラゴンクラスから不死の王(アンデッドリッチ)までそれ以外もボスは上位種が基本ですから!」


 はぁー? ドラゴン!?


 「いやいやいやいや! 無理無理無理! 絶対無理だってばー!」


 久しぶりに、俺の絶叫が洞窟内を駆け巡った。



    ・

    ・

    ・


 

 「分かりました…戦力があればいいんですね!」


 あれから幾度と迫りくるミューの言葉をうまく躱していたのだが、今回はなかなか納得してくれない。


 ミューが拳をぐっと握りながら詰め寄ってくる。

 近い近い!吐息と胸が当たる。


 「ならば、このミュハイル! 魔王様に使える従者として、地獄の底までもお供させて頂きます!」

 

 「は? 地獄って!それ、俺死ぬってことじゃねぇか!」


 「魔王様のくせに、ウジウジグダグダとうるさいんですよ!文句言わずさっさと呪言を唱えてください!」


 あ、こいつとうとう魔王様のくせにとか言いいやがった!

 あぁ…もうホントあの頃の君は懐かしいよ。


 俺はミューと血を合わせ、ぶつぶつ文句を言いながらも、不承不承呪言を唱え始める。


 「”我に共に歩め”」


 「っ!魔、魔王様? あの、こ、これは…」


 俺は顎を動かして早くしろと言わんばかりにミューを促す。

 ミューはちょっと赤くなりながら、少し迷った後、顔を少し俯きながら呪言に応えはじめる。


 「な、”汝に忠誠を、汝と我の二人を死が分かつまで、共に同じ道を歩むことを誓わん”」


 手の甲の紋章が光り、契約がなされる。同時にミューの手の甲にも契約の紋章が刻まれる。

 なんかさっきまでの見幕はどこに行ったのか、ミューは手の甲に刻まれた紋章を頬を染め、うっとりとした表情で見つめている。

 あれ、なんか様子がおかしい…これ、もしかしてまたやっちまったか?

 ちょっとした悪戯の気持ちだったんだが…。


 「流石魔王様、エッチ」

 「えーー!」 


    ・

    ・

    ・



 その夜、寝室にミューとプリムがマイ枕を持参でやってきてこんなことを言ってきた。

 身体にはいつもの従者服ではなく、下着が透けて見える薄いネグリジェを着ている。


 「魔王様、不躾物ですが…なにとぞ、なにとぞ末永く、よろしくお願いいたします」

 「魔王様、抱いて…今夜は好きにしていい」


 突然のことで驚いたが、ここで引くのは若い健全な男としてダメだろう。

 というか、この美女二人の煽情的な情景を前に退ける男がいようか。 いや、いない!(反語)


 俺は二人をそっと抱きしめる。


 「初めて」

 「あの…すいません、私も実は経験がありませんので…・その」


 顔を真っ赤に染めて口をどもらせるミューの唇を優しく塞ぐ、潤んだ目でその様子見ていたプリムにもキスをしたあと、御姫様抱っこで抱きかかえ、そのままベッドへ運ぶ。もちろんそのあとダッシュでミューもだ。


 俺の部屋のベッドは、シングルとダブルの中間のサイズの少し広い程度のサイズで、さすがに三人で寝るのにはすこし狭い、おかげで常に誰かに引っ付いてる状態で色々たまらない。

 ミューの妖艶な色気と、包まれるようなふくよかな、手からこぼれるほどの双丘をたっぷり堪能し、プリムの少し幼さを残しながらも、抱き心地の良い柔らかくてすべすべした身体と、手のひらサイズの胸の感触を存分に堪能する。


 プリムはベットの上では、いつもの舌足らずはどこへいったのかと思うほどに妙に饒舌で表情豊かだった。

 年上で今年二十歳になるミューさんだが、恥ずかしがって終始頬を染める様がギャップかわいかった、とだけ彼女の名誉の為それだけをここに記そう。

 …ミューさんは夜もブレーキの壊れた暴走女だったのだ。


 夜が明け外は朝日が上ろうという時間になり、ようやく俺たちは沈む様に眠りについた。


    ・

    ・

    ・


 起きたらお日様がもう天辺を超えていた。昼過ぎってとこか。

 全員が初めてだというのにハッスルしすぎたようだ。



 「さて、ダンジョンを目指すにあたって、いくつか確認と提案があります」


 「まず、ダンジョンってどこにあるかわかる?」

 「いくつかのダンジョンの居場所はわかります。 有名どころや観光名所になってる場所もありますから。 流石にすべてとはいきませんが」


 「ふむふむ、でも俺たちが行くならなるべく人が少ないダンジョンの方がいいと思うんだ。 それこそ放置されて誰も来ないような、ね。 そうとこのピックアップってできる?」


 「いえ、申し訳ございません。 今すぐには」


 「うん、じゃぁ町にいけば冒険者ギルドってあるよね? そこに登録しようと思うんだ。 いやいや、まぁ聞いてほしい、冒険者ギルドに登録しておけば、素材買取とかでお金も稼ぐことができるし、ダンジョンの情報も手に入ると思うんだ。 そうすればミューの言う通り、ダンジョンの攻略は進むし、お金もたまるしで、一石二鳥というものではないかな」


 「う、ぐっ」


 どうせ、魔王が人間どもの町に頼るなど恥です! とか何とか言おうとしたのだろう。

 なので先に理論漬けで潰しておくことにした。

 よく暴走しがちだが、これでもミューは利己的な人間だ。

 効率的な事を理解してまで、反論することはできない。

 

 「そこで何個か問題がある。 まずは…見た目だな」


 ミューは明らかに魔族的な立派な角と赤い瞳だ、赤い目は魔族だけの特徴らしいのでアウトだ。

 プリムは魔族的特徴は薄いからパッと見大丈夫かもしれないが、金色の瞳は災厄の象徴と言われており、人目に付くとトラブルに巻き込まれるかもしれないらしい。

 俺の黒髪黒目は数自体は少ないものの、全くいないわけじゃないのでセーフらしい。

 多分、過去の勇者の子孫とかの隔世遺伝とかで生まれるんだろう。


 「そうですね。 一応目の色と肌は幻術の魔法か魔道具でごまかすことは可能だと思います。 実際に何代か前の魔王様がとても奔放な方で、度々人間の町に出かけるときに使用していた幻惑の魔道具がございます。 よほどの術者でも確実に見破る事はできないでしょう」


 ミューが取り出したのは金色の装飾のされた腕輪だ。

 これに魔力を通すことで肌と目の色を変える事が出来るそうだ。

 一応鑑定してみるか。


 ”幻惑の腕輪 耐久:1000 効果:外見の特徴を変化する。使用には装備者の魔力を使用する”


 「ふむふむ、でもその角は?」

 「これですか? これは引っ込めればいいだけなので」


 といって、ミューの立派な角が髪の中に引っ込む。


 収納可能なのかよ!!


 「あぁ…なるほど、そうなのね。 じゃぁもう一つの問題なんだけど、俺が確認したステータスには職業と種族と称号の項目があるんだけど、これは他人が確認する方法ってあるのかな?」

 「そうですね。 職業はステータスチェックの魔道具を使用することで表示されますね。 人間の町でも広く使われているものなので、恐らく確認されるでしょう。 種族も表示できる魔道具がありますが、あまり数が出回っていない品なので一般的に使われることはありません。 称号というものは私は聞いた事がありません。 恐らく魔王様方の固有のものでしょう」


 なるほど種族と称号は何とかなりそうか。

 職業見られたら見た目普通でも、俺が魔王だってまるわかりだな、これは不味い。

 あ、でも以前の魔王が街に繰り出してたくらいだからこれもどうにかなるのかな。


 「俺、職業:魔王ってなってるんだよね。 これもどうにかなる?」

 「なりますよ。 ステータスジャミングの魔道具があります。 これも以前の魔王様が御作りになったものです」


 ミューがどうぞと俺に差し出した銀色のブレスレット受け取り、鑑定するために見つめる。


 ”解析妨害の腕輪 耐久力:1000 効果:ステータスの表示をごまかす。事前にステータスの登録をする必要がある”


 「これだけあれば、登録は問題なさそうかな」


 言いながら腕輪から表示されるステータスを操作しておく。

 職業を”剣士”、種族を”人族”に変えて、一応スキルも適当に隠しておく。


 二人も確認のために幻惑の腕輪を発動している。

 二人の瞳の色が青へと変わる。

 青い瞳はこの世界の人族の中では一般的な色だ。

 俺としては二人の赤色と金色の瞳が結構綺麗で好きなので、ちょっと残念である。


 結局、昼過ぎに起きた事もあり、今日はそのまま旅の準備を進めて、明日の朝に出ることにする。



 ちなみに、今の俺の服装は召喚時の学生服そのままだ。

 流石にこの服装のままだと悪目立ちするので、ついでにミューに良い装備はないかと聞いたところ、漆黒の肩パット(・・・・)の付いたローブと赤いマントを出された…。


 「ミュー…」

 「先代が身に着けていた由緒ある品です!」

 「ごめん…これは無い」


 何度か同じようなやり取りを繰り返し、最終的に黒龍の革で作られたジャケットに、ミスリル糸と霊糸で編み込んだ布で作られた赤色の肌着を着用する。

 下はジーンズのままだ。

 下手に鎧を着るより動きやすいほうがいいと思ったのだ。

 左側の腰に剣帯をつけ、魔剣を納める。

 …十分に目立つがセーフだと自分に言い聞かせる。

 魔王の装備は、黒とか赤が多すぎる…。



 この洞窟は魔族の領域と人族の領域の丁度中間地点にある。

 そのため、ギルドがあるような一番近い町までは歩いて5日ほどかかるだそうだ。

 ダミーとしていくつかの物品をリュックに入れて持ち歩き、それ以外の生活に必要なもの、装備、食料は俺が『格納』することにする。 


 夜になると、また二人がそろって俺の部屋に来る。

 手には枕…昨日の焼き直しだ。


 明日から出発なので体力を残すためにも、頑張ってお相手した。

 何を頑張ったって? きまってるだろ…理性を保つことだよ。

 二人はほんの少しだけ不満そうだった。

 初日が飛ばし過ぎた…。



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