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ゆままゆ! 勇者な魔王 と 魔王な勇者←(俺)  作者: 都留 和秀
第四章 魔王 自由商業都市ニーヴァ編
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31話 『選定勇者』レイン=スカーレット

本ページを見て、タイトルが長すぎて見づらくなっていることに今更ながらに気づきました。

 後半部分を削ろうと思います。

 「ソロモン君、ミルフィ、ヴァニちゃん、居らっしゃい♪」

 「どうもライラさん、ご無沙汰しております」

 「本当に、ご無沙汰ぶりだわぁ~ふふふ」

 「ライラ、早く話を」

 「あらあら、ミルフィはせっかちで行けないわね。そんなんじゃソロモン君に愛想をつかされてしまうわよ、ふふふ」

 「ふふふ、ライラは本当に面白い事を言いますね…」

 「あ、あの~、すいません、用件をお願いします…」

 「そうね、ミルフィをからかうのもいいけど、そろそろ話を始めましょうか


 そう言ってライラがドアを閉めて、ソファーを進めてくる。

 どうやら割と重要な案件のようだ。


 「実は先日、うちの都市長のお屋敷に予告状が届いたのよ」


 そういって、ライラが胸の谷間から一枚の紙を取り出し机に置く。


 「こ、これは…!」


 仄かに暖かい…それになんか甘い香りが…。


 「そう…怪盗バーンの予告状よ。これは写しだけどね」

 「え?………あ、そうですね、予告状ですねぇ、アハハ」

 「ご主人様……」


 ミューがジト目でこちらを見てくる。


 「い、いや、ゴホン!!怪盗ですか…けしからん!」

 「けしからんのは、ご主人様の頭だった」

 「げふっ」


 相変わらず、プリムのツッコミは鋭く深くえぐるね…


 予告状にはこう記されている。


 ”日と月が交差する時、明けの光と共に、カイト=レムダに封じられし古き剣銃をいただきに参上仕る。 怪盗バーン


 「うふふふ、最近話題の正体不明、神出鬼没の泥棒さんよぉ~、音もなく、気配さえも感じさせず、知らぬうちに宝物を奪い去るのよぉ~」

 「へぇ~、あぁそういや聞いた覚えはあったな、お宝からガラクタまで、アンティークなものを中心に漁ってるんでしたっけ。…ん?まさかそれを俺達に捕まえろと!?」


 なんて無茶な!


 「あはは、ま~さか~、そんなわけないじゃない。ソロモン君たちには、都市長さんの警備をお願いしたいのよ。確かに宝物を奪われるのは問題だけど、何よりも都市長の命が大事よ。それにいきなり警備に見知らぬ人たちを混ぜたりなんかしたら、それこそ混乱して警備に穴が開いちゃうわよ、そんなのは当然でしょ」


 当然とばかりに笑われた。どうやらどっかの少年探偵みたいにはならないようだ。


 「まぁ、そりゃそうだよな、護衛は俺らだけです?」

 「そうね信用出来る人にしか頼めないから、護衛隊の人と、うちからはソロモン君達だけだけど…」

 「ん?…なんか嫌な予感がするんですけど」

 「都市長が自分で雇ったらしいのよぉ~、あいつを…。まぁ間違いなくソロモン君と並ぶ実力者だし、彼女も一応は『選定勇者』だからねぇ」

 「げっ」


 この町にいる『選定勇者』、それは一人しかいない。

 勇人がこの町で生きるため、物理的に警戒しなければならない人物のうちの一人である。

 ちなみにもう一人は目の前の人物…ライラだったりするのだが。

 この二人は、勇人の持つ最高レベルの鑑定眼であってもステータスを除くことができない。

 恐らく、勇人の持つ【解析妨害の腕輪】に似たものを持っていると思われる。

 だが、ライラはいつも着けている指輪がそうなのだろうが、レイラに関してはそれらしきものが見当たらない。

 とにかく、謎が多い『選定勇者』なのである。


 「ライラさん、この話はなかったことに…」

 「まさか、断らないわよね?そういう契約だものね♪」

 「ですよねぇ~、はぁ…」



 契約…そう、三ヶ月前、俺とライラは一つの取引をしている。


 それまでは王国廻って、自由都市を転々としながらダンジョン行ったり、ギルドの依頼をこなしたり、実験したり…トラブルに巻き込まれたり、まぁ結構好き勝手やっていた。

 神聖皇国?なにそれ、むしろこっちが聞きたい、なんで行くの?、めんどくせぇのが分かってるのに?

 

 とはいえ、追っ手というか、教会のアプローチも段々にうるさくなって来て、挙句にある事件をきっかけに、特使としてきた使者を殴り飛ばしてしまった…思いっきり、手加減なく。

 さすがにまずいかな、どうしようかなぁって思っていた頃、この町でライラという女性に出会った。

 案の定トラブルの上で。

 一見、色気たっぷりの綺麗なお姉さんにしか見えないライラだが、この町の冒険者ギルドの支部長だという。

 マジかよ…衝撃の事実だったね。

 だって、常に胸元開いて、軽いボディータッチで常に挑発してくる美人だぜ?

 ギルドの受付であったのに、最初は美人局かと思ったよ!

 お店に一度御呼ばれしたいと思ったよ!…あ、ごめん、心の声が漏れた。

 

 そんなライラが、俺達に取引を持ち出してくる。

 

 「この自由都市では治安維持に関する仕事もギルドに持ち込まれるのよ、それを定期的にこなしてくれるなら、身分を隠した上で、私が責任を持って貴方達を保護してあげるわよ♪どうかしら、悪い話ではないと思うんだけど、『ダンジョン殺し』のユート君?」

 

 正直一国相手に、冒険者ギルドの一支部長でしかないライラがどうにかできるのか?と疑問はあったのだが、俺はいろいろ考えた末に、この話を受けることにした。

 ミューが激しく反対したが、最終的に強引に押し切った形だ。

 別に色気に負けたわけではない。

 大事な事なのでもう一度言うぞ!別に大人の色気に負けたわけではない。

 

 ここらで、色々やりたいことも増えてきていたので、一度腰を落ち着かせて取り組みたかったのだ。

 幸いにも、ここニーヴァは自由都市内でも有数の都市であり、物流も広く、技術力も高い、何かするならばこれ以上にない好条件と言えた。


 そして俺達は名を変え、神殿も教会もないこの町で暮らしていると言う訳だ。



 「じゃぁ、よろしくね♪」

 「……はい」



 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 ニーヴァ 東地区-富裕層居住区


 「はぁ……」


 出発してから何度目かになるため息をつく。

 一緒に歩いているのはミュー、プリム、それにタマだ。

 ミラとシロは今回はお留守番だ、主に見た目的な問題で護衛には適さないからだ。

 ミラなんて一番護衛向きの能力なんだが、こればかりは仕方がない。


 「ご主人様、いい加減観念しましょう」

 「とはいうけどさぁ…無理…気がどうしようもなく重い…ストレスで倒れそうだ」

 「ほら、間も無く屋敷も見えてき…危ない!」


 ガキィン!


 唐突に鳴り響く激しい金属音。

 音もなく、風を切り裂くほどの速度で一足飛びで襲い掛かる赤き剣閃がぶつかる。

 襲い掛かる刃、バスターソードと呼ばれるその大剣の先にいる人物と目を合わせる。


 「よぉ、相も変わらず間抜けそうな顔で歩きやがって、街中だからって、気がぬけてるんじゃねぇか?」


 燃えるように広がる、血の様に鮮やかな赤髪。


 「えぇ、そうですね。まさか街中でいきなり大剣抜いて襲ってくる『勇者』がいるなんて、誰も思いませんよ、スカーレットさん」


 血に飢えた瞳。


 「レインでいいっていったろ。はっ、お前がそんなタマかよ…なぁ『ダンジョン殺し』」


 獰猛な、飢えた獣の様な笑み。


 「……なら人違いですね、俺はソロモン。『黒魔の剣士』ソロモンですよ」


 勇人がにこやかに笑顔を向ける。

 遅れて辺りから小さな悲鳴が聞こえてくる。


 「くくっ、相変わらずの人を食った態度だ。…おい、そろそろその殺気と武器を引っ込めろ、このままじゃ俺も剣を下ろせねぇ」


 レインの視線が、正面に立つ勇人から、更にその前に立ちトンファーを交えるミューへと向けられる。


 「……」

 「あー、分かった分かった、悪かったよ!久しぶりに会って、テンションが上がって少しはしゃいじまったんだ、本気じゃねぇんだから許せよ、堅物女」

 「…戯れが過ぎます、レイン=スカーレット様」


 ミューとレイン、互いに合わせていたトンファーと大剣が同時に引かれる。


 『選定勇者』レイン=スカーレット。

 この町で勇人が最も警戒し、会いたくない人物。

 煌めく炎の様に美しく、血の様に鮮やかな色をした、艶やかで長く、赤い髪をなびかせ、獰猛な、血に飢えた獣の様な瞳と表情を浮かべる…女性。

 背中には柄には竜を模したような装飾がなされ、刀身は薄らと赤く光るバスターソード、一目で業物と分かるほどの、その存在そのものが畏怖を感じさせるほどに威圧感を放つ大剣を背負う。

 だが、意外にもレインのその身は長身ながら、全体的に細身で、黙っていれば絶世の美女とも言えるほどの容姿からは、粗暴な言葉を吐き、剛剣を振るい、勇ましくも獰猛に戦う姿などとても想像出来ない。


 「やれやれ、お前の従者はおっかねぇな。冗談がまるで通じねぇ」

 「いきなり街中で大剣抜いて襲ってくる人に、冗談も何もないと思いますがねぇ」

 「おっと、お前まで機嫌を損ねんなよ。…しかしお前、一歩も動かなかったな、まさかあんなのに反応できなかったわけじゃねぇだろ?」


 レインが眼を細め、目踏みする様に勇人を見つめてくる。


 「殺気がないのは分かってました、それにミルフィがすでに動いていましたからねぇ」


 本当は【危険察知】が反応しなかっただけで、殺気とか知らん。


 「くく、妬けるねぇ、ずいぶんな信頼だ。それと…そっちのちっこいのも、いい加減魔力を引っ込めてくれねぇかな…執事の嬢ちゃんより、正直お前の方が危ない」

 「ヴァニラ、大丈夫だよ、心配ない」


 今だ鋭い目つきでレインを見つめるヴァニラの頭を撫でる。

 展開していた術式を解いたのだろう、ヴァニラからあふれ出る魔力が徐々に散っていく


 「本当におっかねぇな、俺は今回は仲間だぜ?」

 「えぇ…本当にそうだといいんですがね」

 「くくっ、本当にそうなんだよ。今回の話を受けたのだって、噂の怪盗とやらを見てみたかっただけで、お前が来たのは偶然だ」

 「はぁ…相変わらずですねぇ」

 「強者を求めるのは、武人の本能。まぁ、お前が俺の相手してくれるなら…それでもかまわないけどな、剣でも…(ねや)でもな」


 レインがその美しい顔で笑いかけてくるが、相変わらず獰猛で獲物を狙うかのような獣の笑みに背筋が寒くなる。


 「どちらも文字通り命がけなので、遠慮いたしますよ」

 「ふっ、また振られたか。まぁいい、また誘うさ、お前はまだまだ伸びしろが大きそうだしな。どうせ食らうなら、いい男になってからの方がいい」


 レインが軽く唇をなめる。

 その様子はまるで獲物を狙う爬虫類のようで、レインが笑うたびに本能的な恐怖に、背筋が寒くなる。


 「スカーレット様、こんな場所で立ち話は悪目立ちいたします」

 「レインでいい。そうだな、まぁそういうわけで今回(・・)の目的はお前らじゃないから安心しな」

 「全然安心できねぇ…」

 「くくくっ、信用しろよ。後ろの狐の嬢ちゃんもな」

 「……はい」


 ずっと静かだと思ったら、タマは勇人の後ろに小さくなって隠れ、いつもピンと立っている狐の耳は力なく萎れ、尻尾も元気がなく垂れさせている。


 「タマ、動物的な本能で負けたな…」

 「無茶言わないでよ、ご主人…獣と竜じゃ生物としての格が違うだろ…」



次回予告 怪盗バーンを捕まえるため都市長の邸宅へと向かう勇人一行

現れる怪盗、剣を高らかに掲げ襲い掛かるレイン、その時勇人は?

 そして、騒動が終わり一息つく中…屋敷中に轟くほどの悲鳴が鳴り響く。


次回…32話 レムダ都市長邸殺人事件事件簿 前篇


※ゆままゆは基本コメディーです、推理物ではありません。

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