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ゆままゆ! 勇者な魔王 と 魔王な勇者←(俺)  作者: 都留 和秀
第一章 魔王と勇者、召喚される
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3話 初めての狩り

   ・

   ・

   ・


 やってきました!スライムの…巣?

 目の前には小さな穴。

 穴を中心にスライムのプールが周囲に広がり、緑赤青黄と様々な色がカラフルに混じり合っている。


 「これって…なんです?」

 「スライムプールです。 スライムの養殖場ですね」


 スライムは基本的に、虫や動物の死骸などを漁る無害なモンスターだ。

 なのでフィールドの至る場所に生息し、放置される死骸などを消化して伝染病の発生とかも防いでくれるらしい。

 昔、どっかの国が弱いからと大量に殺しまくって、その周辺にいなくなってしまい、国中が疫病で荒れたこともあり、現在ではスライムは人族であっても増えすぎない限りは放置することが基本である。


 「そんなの狩っちゃっていいんですか?」

 「問題ありません。ここは養殖場ですし、この森には養殖場はまだ、たくさんありますので」


 そう言われたので、取りあえず端に漏れ出た1匹を剣で突いてみる。

 プリンを爪楊枝で突いたような柔らかい感触がして、弾けて死骸になる。

 俺のステータスってこれと同じくらいなんだよな…。 切ねぇ…どんだけ弱いんだ俺。


 『メニュー』を開いてBPを確認するが0Pのままだった。

 もう2匹倒してやっと1P入る。

 弱すぎたかな、まぁでもこれならなんとか数で補えそうだ。


 そして、俺の大量殺戮が始まった…。



 ──3時間後。


 「ぐふふふふ! 見ろ!スライムが蟻の沸いてくるぞ!」

 「魔王様…正気に戻ってください!」

 「ぶわっははは! 汚い花火の様に飛び散りやがれ!」

 「もう、手遅れ」


 穴から次々と湧いてくるスライムを、延々と潰していたら、なんか変なテンションになってきてしまった。

 しかもコイツラ、倒したスライム(同族)の死骸にもわらわら集まってくるから、常に足元に標的がいて剣を振るうたびに何匹もまとめて倒せる。

 既にBPはとっくに1000を超えている。

 途中で頭の上で『ピロリン』って音がしたのでステータスを確認したらLvが上がっていた。

 これだけ倒してまだLv3ですけどね。

 せめてもの救いはステータスの伸びは悪くない、ということだ。


 あれから自分のステータスを確認した際にその理由が判明した。


  異世界の来訪者 :世界を渡った者

  勇者の卵     :勇者の可能性を秘めた魂を宿すものに与えられる(成長率補正上昇:大) 

  魔族を従える者 :魔族を配下に従える者

  ヘタレ       :ただひたすらにスライムを倒してLvを上げたヘタレだけに贈られる


 勇者補正キター!とか思ったね。

 でも伸び率的には、補正ありきで多分プリムと同等くらいになる感じだ。

 元の才能値どんだけ低いんだよ。


 まぁなんにせよ、Lv3だけどもうスライム並とは言われることはないだろう。

 代わりにヘタレと付けられたが…。



 ──さらに1時間後。


 Lvが4になった。

 剣で地面を払うだけの簡単な作業だけど、さすがに疲れた。

 プール溜まっていたスライムもかなり減ってきたので、ここらへんで休憩にしてBPをいじり始める。


 現在のBPは2236P スライム相手に恐ろしいほど溜まったな。

 これはもしかすると、良い狩場なのかもしれない。

 スライム自体はすごく弱いし、ここは養殖場だから敵もすべてLv1でLv上げには使えないが、俺の場合はBPがある。

 危険はなく、延々とBPを溜めるには最適と言える。


 とりあえず、基本になるスキルを取得する事にする。



 ユウト=シノノメ  18歳 ♂ Lv4 種族:異世界人 職業:魔王

  HP 79/81 MP 64/102

  STR 68 VIT 58 AGI 80

  MA 62 MD 56


 基本スキル

   なし

 武技スキル

   剣術Lv2

 感知スキル

   危険感知Lv1 気配感知Lv1

 強化スキル

   なし

 魔法スキル

   火魔法Lv1 土魔法Lv1 次元魔法Lv1

 特殊スキル

   鑑定眼Lv2

 固有スキル

   なし


 称号:異世界の来訪者 勇者の卵 魔族を従える者 ヘタレ  魔物の主



 鑑定眼をLv2にしたのはLv1だと名前とLvしか見えなかったからだ。Lv2にしても職業とHPしか見えなかったんだけどね。

 大量のBPを消化して、正直失敗した感があるが、まぁいい。


 30分ほど休憩してからスライム狩りを再開する。


    ・

    ・


 しばらく狩っていると、周囲にスライムがいなくなった。

 どうしたのかな? と思って発生源である穴を見ると、スライムが穴に集まってもぞもぞしていた。

 いや…違うな、あれは大量に倒されたスライムが、急速に穴から這い出ようとした結果、出口で突っ掛ってる感じだな。

 仕方ないので、穴を塞いでる奴を剣で突いて倒す。


 すると穴の中に散らばった死骸にスライムがわらわら集まり、ドンドン穴が塞がれていく。

 ぎゅうぎゅうに詰められたスライムだったが、しばらく押し競饅頭をしてる間に、なんか混ざり合わさってきた。

 あ、これ多分やばい…?

 だって、取ったばかりの危険察知スキルがガンガンなってるんだもん。


 少し後ずさり、離れた場所で穴を見守る事にする。


 しばらくして穴を壊して出てきたのは、混ざり合わさったスライムが合体し、俺と同じ身長くらいにまで膨れ上がった、銀色の体に薄らと虹色に光るスライム。


 ”ミラースライム Lv2 種族:粘体種-変異スライム HP850/1200”


 どう考えても、メ○ルキングだろうが!!


 変種なのか、Lv2なのにスゲーHPだな。

 微妙に減ってるのは、やっぱり無理に穴から出て来て痛かったのかね。

 でも、これ…やばくね? いやだって今の俺のHPの10倍以上なんだぜ。


  戦う

  まほう

 →逃げる


 なんとなく脳内にコマンドが浮かんだ。

 もちろん即決だ。


 「よし、逃げよう!」


 俺は即座に撤退を決意する──がそれをミューに肩を掴まれて止められた。

 肩に爪が食い込むほどに…痛い。


 「お待ちください、魔王様」


 あぁ…その笑顔が怖いよミュー。


 変異種は稀に生まれるが、そのどれもが共通してステータスが高く、食欲が旺盛なのだそうだ。

 スライムであってもそれは変わらず、もしここに放置していったら森の生態系が乱れて大変な事になるという。

 今回は明らかに原因が俺にあるので、ここで逃げだすのは魔王…以前に人としてどうなの? みたいなことを言われてしまった。



 「…そんなこと言われても、あれどう見ても勝てる気がしないんだけど」


 想像してほしい、自分と同じ身長のスライムを! 剣で飛び掛かったとしても、そのままお腹にダイブして食われる想像しかできない。


 「なら、魔法で遠距離から攻撃したらよいのではないのですか?」


 ミューさんナイスアドバイス! それ採用、とばかりに覚えたばかりの火魔法を打ち込む。


 「”ファイアーボール”!」


 ──が、火の球がミラースライムに当たった瞬間、その体に弾かれ、あらぬ方向へと飛んでいく。


 「「…」」

 「ダメダメ」


 沈黙の中、プリムの声だけが鳴り響いた。



 呆然とするもつかの間、ミラースライムがこちらを向いて睨みつける。

 いや、目とか無いからわからないけどそんな気がしたんだ。

 さっきの攻撃でこちらを敵と認識したのだろう、体を弾ませて突進する様にこちらに向かって来る。


  戦う

  まほう

 →逃げる×3


 「うわー無理じゃんこれ! どんすんだよー!」


 全力で駆け出した俺達を、ミラースライムは意外なほどに俊敏に、まるで弾むスーパーボールのような軌道を描いて追って来ている。


 「知りませんよ! 魔王様が原因なんですからさっさと始末してくださいよー!」

 「おま! 無責任! それ無責任っていうんだぞ!」

 「何でもいいから早くしてください! もぅ、何で私までー!」


 混乱してミューは口調がというか、キャラが変わっている。

 途中の木々すらも全力でなぎ倒しながら追ってくるミラースライムから、全力で逃げつつ『メニュー』をいじって何か打開策を探す。


 ”土魔法Lv1”


 「”アースウォール”!」


 ミラースライムとの間に土壁を作る。──が、すぐ壊される。


 「アースホール”!」


 地面に穴を掘って地中に埋める。──が、すぐに這い出てきた。そりゃそうだ、元は穴から出てきたんだから。



 「ぜぇぜぇ…なんかいいスキルとか魔法とかないの? これ、倒せる奴!」

 「じ、次元魔法なら…ぜぇ…敵の防御を無視して攻撃できるときいたことが…はぁはぁ…あります」 

 「次元魔法、ディメンション、カッター」

 「くっ」


 『メニュー』を開いて取得できるスキルを確認する。──あった。


 次元魔法Lv1


 もうBPはない。

 これでダメだったらもう後はないのだ、祈る気持ちでスキルを習得する。

 だが、取得と同時に目の前が反転する──あ、やばい、画面を見過ぎてた…。

 俺の体が地面に足を取られて転がる。


 「魔王様!」


 ミラースライムが目の前に停止して、こちらを見下ろしてくる。

 獲物を前に舌なめずりをするとは・・・三流野郎が!


 「でぃ、ディメンションカッター!」


 勇人が気力を振り絞って呪文を唱える──瞬間、ミラーボールの体が不可視の刃に切り裂かれる。


 「ディメンションカッター!ディメンションカッター!ディメンションカッターー!」


 続いて、脇目も振らず、狂ったように連続で詠唱する。

 はやその狙いは定まってはいない。

 だが、魔法が繰り出されるたびに体をすり減らされ、ミラースライムの体積が徐々に小さくなっていく。


 「ディメンションカッ…」


 そして残り20センチくらいになったところで、俺は魔力が尽きて気を失った。


 あぁ、短い人生だった…


  ・

  ・

  ・


 目を覚ますと、知らない部屋の簡素なベッドで寝ていた。

 ここは…さっきの洞窟か?


 ただ部屋の中は、かがり火ではなくランプが壁にかかっており、その中で燃える小さな火がゆらゆらと部屋を照らしている。


 「魔王様、起きた」


 声に反応し、そちらを見ると、プリムが椅子に座ってこちらを見ていた。


 聞くと、ここは俺が召喚された洞窟と同じ場所で合っているらしい。

 元々、いつ召喚されるかわからない魔王のために、居住空間として作られた場所だそうで、ミューとプリムはここで半年以上暮らしているそうだ。

 俺が起きた上がるのを確認すると、ミューを呼んでくると言って部屋を出ていく。


 「お気づきになられましたか、魔王様」

 「あぁ、心配かけちゃってごめん、ここまで運んでくれてありがとう」

 「いえ、私共は魔王様のサポートが務めですので…ただ、申し訳ございません、魔法についての詳しい説明をしていませんでした」


 魔法は、まぁMPを使用して発動するんだけど、0を超えて使っちゃうと気を失ってしまうらしい。

 俺は人より多めの魔力を持ってるけど、所詮Lv3なのでLv1の魔法を数回使用しただけで限界が来たようだ。

 次元魔法は上級属性に位置する魔法なので、普通の魔法よりMPを使用することも原因の一つだ。

 なので通常MPは2,3割まで残して、あとは回復するまで使わないのが当たり前なのだと。



 「ところで、あのスライムはあの後どうした?」


 ミュー達がなんとか止めを刺してくれたのだろうか? そう思って聞いてみると、少し微妙そうな顔をしてミューが後ろに並んでいたそれを見せつけてくる。


 ミューの足元、そこには…小さくなったミラースライムがプルンと体を弾ませていた。


 「じつは…」


 俺が気絶した後、ミラースライムは俺を襲わずに、その体を楽しそうに弾ませて俺に摺り寄せていたそうだ。

 とりあえず危険はないと判断し、一緒に持ち帰ったらしい。


 「おそらく…懐いたのかと」

 「はっ!? あの状況に懐くような要因がどこにある!?」

 「魔物は本能で従う主を決めますので、その殆どが力を誇示することなのですが…今回は少々特殊ですね」

 「これって、契約できるの?」

 「はい、おそらく可能だと思います。魔物の場合は血を使う必要はありません、魔力を通わせた手を当てて契約の呪言を述べ、相手が応えれば契約が出来ます」


 取りあえず、言われたようにやって見る事にした。


 「”我に従え”」

 

 手に魔力を込めて、隷属の呪言を唱える。

 ミラースライムがプルンと震えた後、手の甲の紋章が光って契約がなされる。 

 よくよく見ると、ミラースライムの体にも大きめのほくろの様な大きさで契約の紋が浮かんでいる。


 「これでいいのかな?」

 「だいじょうぶ、名前、つけて」

 「名前か…」


 すら○ん…とかは不味いか。

 銀色の体に虹色に輝く身体か…。


 「じゃぁ、ミラで」


 考えては見たけど、結局、思いつかなかったので安直にした。

 ミラースライムは心なしか、嬉しそうに震えながらすり寄ってくる。

 なんかこうして見るとかわいいなこいつ。


 しばらくミラの体で遊んでいたら、プリムが静かに俺の膝の上に座ってきた。


 「えっと…なに?」

 「…私も仲魔、かまう」


 どうやら寂しかったらしい。

 頭に手を載せて撫でまわしてやる。

 銀色の髪のふんわりとした感触がすごく気持ちいい。


 「ほわぁ…魔王…様…」


 あまりに感触が良くてよくて、つい夢中で撫でまわしていた。

 いつのまにか、プリムの頬がちょっと赤くなって息遣いも荒く目が潤んでいる。

 そこに、トントンとノックしてミューが入ってくる。


 「失礼します。 魔王様、お食事が出来ましたの…で」


 扉を開けて、ミューの目に映ったのは、プリムを膝の上に載せて侍らす俺。

 しかもプリムの息は荒く、目は潤んでいる。


 マズイ…


 勇人は喉の奥でゴクリと唾を飲み込む。

 なんだろう、安全な場所なはずなのに、今日一番の危険感知が鳴り響いてる気がする。


 「魔王様、お食事の用意が整いました。 どうぞこちらへ」


 ミュー目線が冷たい。

 まるでゴミを見るような視線だ…。


 なんかと言い訳をしようと口を開く、が


 「ミュ、ミューさん、誤解だ!、です。 これは…えーと、違うん「お早くお願いします」」


 その迫力に気押されてしまった。


 今日召喚されたばかりの男が、いきなり初日からメイド──しかも見た目小さい──に襲い掛かる、そんな節操なしに見えている感じなのだろうか。


 結局、最後まで弁解する事を許されることなく、とぼとぼとミューの後ろについて食堂へと向かうのだった。




【公開ステータス】

 ユウト=シノノメ  18歳 ♂ Lv4 種族:異世界人 職業:魔王

  HP 79/81 MP 64/102

  STR 68 VIT 58 AGI 80

  MA 62 MD 56


 基本スキル

   なし

 武技スキル

   剣術Lv2

 感知スキル

   危険感知Lv1 気配感知Lv1

 強化スキル

   なし

 魔法スキル

   火魔法Lv1 土魔法Lv1 次元魔法Lv1

 特殊スキル

   鑑定眼Lv2

 固有スキル

   なし


 称号:異世界の来訪者 勇者の卵 魔族を従える者 ヘタレ  魔物の主 



 ミラ(ミラースライム) 0歳 Lv2 種族;粘体種-変異スライム

  HP200/200 MP10/10

  STR 20 VIT 398 AGI 76

  MA 10 MD 0


 技能:捕食 溶解 硬化 魔力反射


 称号:魔王のペット


 主人:ユウト=シノノメ

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