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ゆままゆ! 勇者な魔王 と 魔王な勇者←(俺)  作者: 都留 和秀
第三章 勇者と魔王、出会う!?
27/44

24話 休日の終わりともう一つの勇者

ラブコメは終わりだよ? 多分…

    ・

    ・

 

 数十分後、途中また何度か死にかけた気がするが、ようやくミューを宥め、4人を部屋の丸テーブルに座らせることに成功する。

 いつもミューに殺されかけている気がするが、今回は一番のピンチだった…。

 おかげで変なのにまで会うことになってしまったし…。


 「さてと、んじゃまず先にミューに経緯を説明しようかな。 とにかく…早めに話さないと、今度こそ俺の命がないので…マジで」


 いまだ、ご立腹中のミューをちらりと横目になりながらそう告げる。


 「そうだね、さすがに私もせっかく知り合った人の死を、日に何度も見るのは忍びないね」

 「リンシャさん、俺死んでないからね!!」 

 「え!? ユート君、死んじゃったの!?」

 「シア!お前はしばらく黙ってろ! 話が進まない!」 

 「むーー!」

 「ユート様、じゃれあってないで、早く話を始めてください。不愉快です」

 「はい、すいません…」


 俺はシア──勇者シオンと出会ってからの、今日一日の出来事を話し始める。

 神殿に行きリンシャと出会い、その帰りにちょっと休もうと公園に行ったら寝ているシアがいたこと。

 そのまま、護衛という名目で町の散策に付き合わされ、神殿騎士に囲まれたこと。

 神殿騎士がちょっとイラッと来たので、ちょっと遊んでやろうと逃亡したら、本気で殺されそうになって後に引けなくなったこと。

 途中、仲間タマに出会ったので、ちょっと協力してもらって、町の各所に幻影を配置したこと。

 ちょっと表現を変えたが、まぁ大筋間違っていないだろう。

 

 主にミューに説明するためだが、リンシャも詳しい経緯は知らなかったのだろう、話の途中、何度も頭をかかえていたようだ。

 

 「シオン様……」

 「な、なにかな!?」

 「いえ、今はやめておきましょう…あとで、一度しっかり叱っておく必要があることが分かりました」

 「怖いよ! リンシャさんそれ怖い!後回しとか、じりじり恐怖が湧き上がってくるんだよ!」

 「ええ、わかってるじゃないですか。それも罰の一つですからね」

 

 にっこりと聖母の様な綺麗な微笑みでシオンに笑いかけるリンシャ。

 それを目にするシオンの顔は、捕食生物を目の前にした小動物の様に涙目で震えている。

 

 「頑張れよー、シア! お前は一度ちゃんと叱られるべきだ!」

 「ユート様、他人ごとではありませんからね。何をやっているんですか、あなたは…目立ちまくってるじゃないですか!!それよりなにより…デート、ですか…、デートしてたんですよね?勇者と。…何か言うことはありますか?」

 「はい…すいませんでした」

 

 臨死体験をし、また新たにトラウマを増やしてしまった今の俺にミューに逆らう勇気はない。

 ただ黙ってうなずくだけである。

 

 勇者と魔王が揃って一つの部屋で小さくなっている様は、その事情を知っているものが見たら、さぞ滑稽だろう思う。

 何時ものミューなら、呆れかえって言葉もないだろうが、今は怒りでそんなことを考えている余裕はないようだ。

 …後が怖い。

 

 「はぁ…まぁとりあえずいいでしょう。そろそろ話を戻さないと、いつまでも終わらなそうですし」

 「そうですね。ユート様には後でじっくりお話をするとして、いい加減、話を戻しましょう」

 

 いつの間にか、リンシャとミューが仕切っている図だ。

 といか、いつの間にか結託しているかのようなこの連携の良さはなんだろうか。

 

 「取りあえず、まずはシオン様の事だが…」

 「あ、やっぱ俺、捕まったりしちゃいますかね? 別に、悪いことしたつもりはないんですが…」

 

 一応、悪ノリはしたものの、今回は街中ということもあって、やり過ぎたことは流石に自覚している。

 加えて、神殿の神輿である勇者を引っ張りまわした、ということになっているのだ。

 更なる面倒になっても仕方ないだろう。

 まぁ、最悪の場合はすぐに逃げよう! と既に心に決めてはいるのだが。

 

 「いえ、今回の事は特に咎められるようなことをした訳ではないので、罰に問われることはないよ。加えて、神殿関係者がどうも早とちりをして、色々と迷惑をかけてしまったようだしね。その事についてはここで代わって謝罪しておこう。 本当にすまなかったね」

 「あ、いえいえ、こちらもちょっと調子に乗っちゃったから、気にし「ただし」」

 

 強い言葉でさえぎられ、愛想笑いを浮かべたままで表情が固まる。

 

 「流石に幻影を町中に振り撒いたのは少々やりすぎだろうからね。その事については、こちらで処理しておくが、あくまで”貸し”として置きましょう」

 

 と言って、リンシャがニヤリと笑ってくる。

 

 これは、もしかして神殿と今後の関係を持ってしまったってことに…なるのか?

 

 「まぁ、元々我々が過度にシオン様を束縛してしまったがゆえに起きてしまったことだしな。シオン様が窮屈な思いをしていたのも知っていた。巫女長アンジェルにもその旨を、ちゃんと言って聞かせるようにしますので、シオン様も今後はもう少し私たちに相談してくださいね」

 「リンシャさん…ありがとう」

 「いえいえ、当然のことです。 さて、それで今回の事は手打ちとしましょう。他に、何かあるかな?」

 

 随分あっさりした結末だが、神殿としても自分たちの非を認めこの件を収めると、俺としては言うことの展開だ。

 特に異論があるはずがない。

 ならばと、それよりもずっと気になっていたことを聞こうと口を開く事にする。

 

 「じゃぁ、さっき言ってた…『選定勇者』の事について話してくれないかな?」

 「ん? …『選定勇者』の存在をを知らないのか?」

 

 少し、抽象的に言い過ぎたか、リンシャさんは少し疑わしいものを見るような目で見てくる。

 『選定勇者』とは、この世界では常識的な存在なのかもしれない。

 少し不味ったか、と思うが、そこにやっと少しずつ普段の出来る女に戻ってきたミューがフォローを入れて来てくれる。


 「『選定勇者』とは、聖堂教会が勝手に選定している勇者の事ですよね? それにユート様が選ばれる、という話がわけがわからないのです」

 「…そうだね、確かに急な話かもしれないね。だが、あなた方は3人でダンジョンに挑み、踏破したと聞いている。しかもそこのダンジョンボスが、かの伝説の魔獣…キマイラだったと。まず、その情報に間違いはないかな?」

 「ええ、間違いありません、その通りですよ?」

 

 既にギルドに報告済みの、さして隠す必要のない情報だ。

 俺は特に誤魔化すことなく、あっさり認める。

 

 「…そうか。正直、話を聞いた時には半信半疑だったのだが、まさか本当だとはな。しかし、ユウト君たちが嘘をついているようにも、そんな嘘をつくようなタイプとも思えないしね」

 

 リンシャさんが、まさか本当に三人で…?ありえない、とか呟いている。

 ダンジョンに挑む者は3-6人でPTを組むから、確かにかなり少ない数だし、踏破者になれるものは冒険者の中でも一部という話だし、こんな無名の若輩者がギルドに登録していきなり踏破したというのだから、驚くのも信じられないのも無理はないのだが…なんだろう、なんかモヤモヤするんだよな。

 

 「そそ、それが何か関係があるのですか? リンシャ殿!」

 

 俺がわずかに首を傾げ思考していると、ミューが顔から僅かに汗を垂らし、慌てた様子で会話を繋いでくる。

 

 「ん? あぁそうだね、話を戻そう。ダンジョン踏破というのは一種のステータスになるのは分かるね。聖堂教会は昔から光の神殿の『選ばれた勇者』とは別に、自分たちで『選んだ勇者』を選定して囲っているわけだが、その基準は基本的には強さのみだ。ゆえに今回君達が候補になったわけだね」

 「なるほど」

 「つい先日、選定勇者に認定するための文が出されたとの情報を仕入れたのだが、まだ届いていないのかもしれないな。恐らく聖都を訪れる様に、との旨がしたためているはずだ」

 「ちなみに選定勇者になるとどんなメリットがあるんだ? 正直、束縛されるのは好きじゃないんだが」

 「ふむ、それを私に聞くかい? 正直、神殿側としては『選んだ勇者』など…異端以外の何物でもないんだがな…」


 眉間にしわを寄せながらも、少し苦笑気味に言ってくる。

 まぁ、古くから勇者信仰を掲げる光の神殿としては、信仰の対象その物の冒涜に当たる所業だ、あまり語りたくないのは無理からぬことだろう。

 ましてやその候補に当たるものになど。

 だが俺としては、身にかかる火の粉なら、できる限りの情報は仕入れておきたい

 

 「あぁ、すまないが、どうなるにせよ、仕入れられるなら情報はほしい。無理にとは言わないが、どうせ誰かに聞くだけだから、あまりか変わらないぞ?」

 「それでも、ここには勇者様もいるんだし、配慮くらいはしてほしいものだがね…。まぁいい、良い機会かもしれないな、シオン様にも詳しい話はしていなかったから、この機会に語るとしましょうか」

 

 


リンシャは語る、存在するもう一つの勇者の存在を…その異常ともいえる待遇を…


「でも──自由は失うだろ?」


次回

25話 神聖皇国の選定勇者 → 「まるで『勇者』のようだな」



今回短い!すいません でも区切れる場所がなかったのです…

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