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ゆままゆ! 勇者な魔王 と 魔王な勇者←(俺)  作者: 都留 和秀
第三章 勇者と魔王、出会う!?
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15話 ミューとデート1

    ・

    ・

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 「日差しが…日差しが痛い…」

 「1日中毛布にくるまって寝たりなんかするからです!」

 「溶け、る…人殺し」

 「死にません!縁起でもないこといわないで!

 だいたい、休み始めてからだらけ方が段々酷くなっていくではないですか。

 このまま1週間も過ごしたらそれこそ身体が溶けて動けなくなります」


 とはいってもねぇ


 「実際問題、今は査定待ちの状態だからさぁ…。 かといってEやFランクの依頼をこなす気にもならないしなぁ。 だからミューだって長期休暇に同意したんだろうが」

 「それはそうですけど…だからと言って! こんなに怠けていてはダメ人間になるだけです! 何も依頼やダンジョンに行けなくてもやることはたくさんあるはずです! …そうだ!修業、修業しましょう!それが良いです!そうしましょう!」

 「却下」 「拒否」

 「なぜ!」

 「休暇中ですので」「メンドイ」

 「休暇って、ダラダラしてるだけじゃないですか!! プリムはせめてもう少し、もっともらしいことを言いなさい!」

 「まぁまぁミューさん、落ち着きなよ。そんなにイライラしてると身体に良くないよ?」

 「くっ・・もーーー! だれのせいだと思ってるんですかー!」


 ミューが頭を抱えてうんうん唸っている。


 うわぁー、イライラしてるなぁ


 ミューは大分フラストレーションがたまっているようだ。

 どうも、ミューは根が真面目過ぎて、息抜きが下手なとこがある。

 普段、なにかと世話してもらってるし、たまにはリラックスさせてやりたいと考える。


 「うーん」

 「…なんですか? 今度は何を考えてるんですか…」


 ミューがジト目で見てくる。


 きっと──あぁ、こいつまた碌でもないこと考えてるよ──とか考えてるんだろう。

 ついでに、ミューの俺への評価も上げておきたい…割と切実な願いとして。


 「よし、ミュー!」

 「…はい」

 「今日はデートしよう!」

 「は? でえと…?」

 「うん、今日はデートにしよう!」


 「…(時が止まっている)」

 「…・・(首を傾げている)」

 「……・!?(顔が真っ赤になっている)」

 「(口を開いて何か言っているようだが、声が出ていない)」


 「はい、ミュー。 これ飲んで落ち着いて」


 近くの露店で売っていたフルーツジュースを手渡す。

 それを奪うように受け取ったミューが、一息に飲み干す。


 リアクションが多彩だなぁ…


 「な、な、な、な、な?」

 「うん、まだ落ち着いてないね。 取りあえず深呼吸しようか」


 ミューが大きな胸を何度も上下して深呼吸している。

 通りすがりのおっさんが顔をにやけさせてみてきたので、思いっきり威圧してやった。


 …まさかここまで反応するとは思わなかった。

 何かがミューの琴線にでも触れたのだろうか。

 というか、もっとすごいこともしてるのに今更、とも思うんだが…純情な子だ。


 「で、で、で、でぇと…ですか?」

 「うん、そう」

 「そ、それは…どのようなものでしょうか?」


 なんか顔は真っ赤で、声はきょどり、身体が震えている。


 「好きあう者同士が、一緒に遊ぶこと、かな?」

 「好き…恋人…あふっ」


 なんかさらに顔を真っ赤にして、ふらふらとし出す。


 大丈夫かこの子! さすがに心配になってきたぞ


 「ミュ!ミュー!!大丈夫か!? 気をしっかり!」

 「はっ!だ、大丈夫です!問題ありません!」


 どう見ても、問題ありまくりだろうが…


 ミューの鼻から微かに血が垂れているのが見えた。


 「そ、そうか? でも体調悪いなら今日はや「いえ!」」

 「やりましょう!!」


 目がすごく血走っている…というか──


 「ミュー!目!目!!赤くなってるから!」

 「!? し、失礼しました!」 


 目を閉じて、再び深く深呼吸をする。


 「えっとじゃぁ、いいかな?」

 「はい!もちろんです!」

 「それじゃ、プリムもどうかな?」


 ミューが、まるで今気が付いたかのようにビクッとしてプリムを見る。


 「ん…」


 プリムがミューに手招きして、少し遠くに連れ出す。

 何やら耳打ちで話をしているようだ。

 ミューが酷く動揺している。

 あ、でも少し考えた後、頷いた。

 プリムがにやりとして親指を立てる。

 なんか、よくわからないけど話が付いたようだ。


 二人がこっちに戻ってくる。


 「戻って、寝る、ユート様、ガンバ」

 「あ、あぁ…了解」


 そういう話になったようだ。


 「じゃぁミュー、行こうか」


 右手をミューに差し出す。


 「はひぃ!」


 悲鳴のような声を上げつつ、ミューは差し出された手を握る。


 なぜ悲鳴…


 なし崩しではあるがミューと二人きりの初デートが始まる。



    ・

    ・

    ・


 「ここは…服屋ですか?」


 まず最初に向かったのは、高級店の立ち並ぶ中央街の中でも割と大きな店舗を構える服飾店だ。


 「うん、まずは服をプレゼントしたくてね。ミューの普段着って冒険服以外は執事服しか見たことなかったからさ」

 「そうですね…昔はドレスなら持ってはいましたが、すべて実家においてきてしまいましたので」


 そもそも、ひらひらし過ぎるのは動きずらいのであまり好きではなかったんですよ、というので


 「でも、俺はそういうミューも見てみたいんだよ」


 と言うと、顔を赤くして背けながら


 「そ、そうですか? いえ、それでしたら…まぁ、ユート様がそうもおっしゃるなら、仕方ありませんね」


 といいつつ着いてくる。


 マジ、ちょろい


 と思ったね。


 「いらっしゃいませ!」


 中に入ると、素敵な営業スマイルを浮かべる男性と女性の二人の店員さんが出迎えてくれた。


 「本日はどのようなものがお探しでしょうか?」

 「彼女の服をお願いしたいんだ」


 といってミューを指す。


 「これはこれは、たいへん麗しいお嬢様でいらっしゃいますね。 …腕が鳴ります」


 一瞬、女性の目元のメガネが光ったような気がした。

 ミューがその眼光に少し引いている。


 「あー、すいません、彼女は当店の服飾デザイナーもかねておりまして、お客様の様に美しい女性を見かけてしまうと、その、少々…気分が高揚してしまう悪癖がありまして…ね」


 少し慌てたように苦笑いでフォローしてくれる、実はこの男性の店員さんは、この店の店長さんなのだそうだ。

 30歳前後といったところだろうか、こんな大きな店を構えているとは思えないほどに若い。


 店長さんがわざわざ店頭に? と思って訝しげに見ていると、察してくれたのか


 「店頭に立って、常にお客様の顔を見て商売できなければ、この職業は務まりません」


 と、笑顔で語ってくれた。

 店長さんはプロだった。


 「では、さっそくサイズを測りますのでこちらへ」


 といって、メガネの店員さんがミューを奥に拉致していく。

 顔は笑顔だが、その体からは決して逆らえないオーラの様なものが溢れ出ている。

 ミューが腕を掴まれなれながら、売られていく仔牛のような眼差しで見てきたので、笑顔で手を振っておく。

 その間、俺は店長さんと交流を深めていた。


 「では本日のデートの為の服を御入用で?」

 「えぇ、本来ならオーダーメイドになるんだろうけど、ここならミューのサイズでも合う服があるかと思って来たんですよ」


 ミューの身長は女性としては結構高めだ。

 サバ読んで175センチの俺と立つと目線が並ぶし、スタイルもいい。


 「そうですね、いくつか、品は限られてしまいますが、きっとお客様のご要望には応えられると思いますよ」

 「有難うございます。 とりあえず予算は気にしないで、彼女に似合う服を見繕ってもらえますか?」

 「畏まりました。 …きっと彼女も喜ぶことでしょうね」


 最後の声は、苦笑交じりに呟くように言っていた。

 彼女とはミューを拉致していった、メガネの店員さんの事だ。

 確かに、あれは…日本でいうところのオタクに通じるオーラを感じた。

 きっと彼女なら、俺の要望にも応えてくれるだろう。



 「お待たせいたしました!」


 1時間ほどして、鼻息荒くしてメガネの店員さんが戻ってきた。

 覚悟はしていたが…長い。


 「いくつか見繕ったのですが、最終決定は旦那様にお願いしたいとの事でしたので、こちらへどうぞ」


 旦那様? と思ったがきっとミューが”ユート様”なんて呼ぶからなにか勘違いしたのだろう。

 どうやらファッションショーが開催されるようだ。

 奥にある着替え室の様な場所まで移動し、ミューを待つ。


 「では、まず始めはこちらをご覧ください」

 

 そう言われ、レースの奥から現れたミューは、少し恥ずかしそうに俯いながらも、前に出てくるりと回ってその服をこちらに見せてくる。

 後ろで編まれた三つ編みがふわりと宙を舞う。

 空色のワンピースに麦わらの帽子をかぶり、右腕にセンスの良い金色の装飾を施された銀色のブレスレットをつけ、足には白のサンダルを素足で履いている。

 シンプルながら、そのすべてが褐色の肌にとてもよく合う。

 活発でありながら清楚、イメージは夏色の浜辺で戯れる令嬢といったところか。


 「いかがでしょうか?」

 「ブラボーー!」


 拍手喝采である。

 観客は俺だけであるが。



 「では…続きまして、次はこちらとなります」


 再び開かれたレースの奥から、ミューがその姿を現す。

 さっきとはがらりと雰囲気を変え、今度はガーリーファッションにまとめられているようだ。

 黒色の髪をまっすぐおろし、白のワイシャツの上に赤色の毛糸で編まれた少し大きめなサイズのVネックの薄手のセーターを着こみ、スカートはかわいらしく、色は紺で裾に白のレースをあしらっている。

 足には品の良い革靴を履き、全体的に清楚でありながらかわいらしさをも表現している。

 セーターが大きめのサイズなのがポイントだ!

 これはまさに…


 「いかがでしょうか?」

 「エークセレント!!」


 もはやスタンディングオベーションである! 最初から立ってはいたが、気分は最高潮なので問題ない。

 眼鏡の店員さんと向き合い、がっしり両手で握手する。

 そのまま互いに無言で頷きあう。

 この人とは長い付き合いになりそうな予感がした。


 結果──服は両方買わせていただきました。


 あとついでなので、ある服を注文しておく。

 身振り手振りと簡単な絵で説明したのだが、眼鏡の店員さん──ミレイヌさんが目を光らせ快く引き受けてくれた。

 

 最終的に悩みはしたが、流石にまだワンピース1枚では肌寒くなるかもしれないので、2つ目のガーリーファッションを身に纏って店を後にする。


 「またのお越しを!」


 帰り際に、ミレイヌさんが大きく手を振って見送ってくれる。

 俺と目が合うと親指を立ててウィンクしてくる。


 おっさんかあんたは…


    ・

    ・

    ・


 大分時間を食ってしまったが、ここからがデート本番だ。

 といっても、特に場所を決めていたわけではない。


 大通りを歩きながら途中、開いてる出店で食べ物を買って食い歩きながら店や町を見て歩く。

 途中、何人もの男共がミューを見て振り返る。

 今のミューはどこぞのお嬢様と言われても疑うものはいないだろう。



 市場の奥、露天商の立ち並ぶ道を歩くと、結構珍しいものが売っている。

 はにかみながら並んで歩くミューだが、それを見てテンションが上がったようだ。


 「ま、ユート様! 見てください! この剣は掘り出し物です! ほら、こちらも素晴らしいギミックですよ!これは斬新です!うーん、この仕組み、私のトンファーにも使えないでしょうか…」

 「うん…そうだね」


 ミューよ、さすがにデートで武具ばかり見てるカップルもどうかと思うんだよ俺

 ほら、その隣に綺麗なブレスレットがあるじゃんよ


 とも思うのだが、これこそがミューらしいのだと思い、その後に続いて露店を眺めていく。

 こうしていると、普通の女の子と何ら変わりない。


 お!いいこと思いついたぞ!


 「あ、ごめん、ミューちょっとここで待ってて!」

 「え? はい、わかりました」


 ちょっとしたサプライズを思いついたことがあったので、ミューをそこに待たせて、さっき通り過ぎた露店に走る。

 今からミューの驚いた顔が目に浮かぶようで、ニヤニヤ顔が止まらない。





次話に続きます。


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