ただそこに
海に行きたい。
ふとそう思った。部屋から見える景色には、海を連想させるものは無い。だが、その景色を見ていると、無性に海に行きたくなった。
思い立ったが吉日、といった言葉のとおりに、支度を始めた。
財布に鍵、携帯をポケットに入れて玄関を出る。
駐車場には、もう15年目になる愛車が佇んでいた。
鍵を差し込みエンジンを掛ける。体全体に、心地よい振動が伝わり、なぜか少しだけ気分が明るくなった。
15分ほど走ると、海が見えた。駐車場に愛車を停め、海に向かって歩いた。
少し肌寒いが、それもまた今の気分と合っていた。
歩く度に鳴るザッザッ、という音と、波のザーザー、という音もまた合っている。
砂の上は座ると湿っていた。
ポケットから缶コーヒーを取り出し、蓋を開ける。一本は無糖、もう一本は微糖のコーヒーだ。微糖のコーヒーを横に置き、無糖のコーヒーに口をつけた。
駐車場に向かって歩く。
愛車は相変わらず、佇んでいた。
感想お待ちしてます。