回転中
18時に突入することに決めた
生活安定化委員。
それでは…開始。
もうあたりは暗くなった。
「おい本間あきらよ、
そろそろ行くか。」
「そろそろフルネームで呼ぶの、
やめてもらえません?」
「なんて呼んだらいんかわからん」
「本間でも、章でも、なんでも。」
「‘章’と書いて‘あきら’って
呼ぶもんなー、
めんどくさいよな、おまえ」
「人の名前にめんどくさいって…
飛田のおっさん、あなた…」
「おい章君よ、おれまだ27や。」
「話し合いしてた時から
気になっておった!」
「でも、お兄さんでもないですよ。」
27かよ、このおっさん。
黒スーツとアゴヒゲに騙された。
ちなみに、髪型はソフモヒ。
「飛田さんと呼べ。」
「飛田さん、下の名前は?」
「……翔」
「ちょっと聞こえない」
「翔やぁ言うとるやろがい!」
「ちょっと、家近ずいてますから
静かにしてくださいよっ!」
「んお、すまん。」
なるほどな、‘しょう’か。
だから
僕の名前にめんどくさいとか
言ったわけか。
僕も‘しょう’って呼べるもんな。
人影がある部屋が見える。
電気はついておらず、
カーテンはあいたまま。
「強盗は思いのほか
のんびりしとる。」
「スタンガンかなんかで
おばちゃんを気絶さしてるんやろ」
まぁ…
こんなにもぽつんと離れた一軒家。
垣根やら塀やらに囲まれている。
じつは…すきだらけだ。
一度、敷地内に入ってしまえば
周りからは目立たない。
「犯人だけを外に出してくる。
おばちゃんはそのあとや。」
「まず……」
関西弁で説明が続いた。
行けそう。
よし、
18時になる。
「5…4…3…2…」
僕は閃光弾を人影の頭上に出した。
激しい音と強烈な光は
あっという間に消えた。
「章、することわかっとるなぁっっ?!」
「おばちゃんのっっ、安否確認」
僕らと家の距離は
10メートルほどだった。
飛田のおっさんの方が
早く家に入り、
混乱する犯人の首を絞めている。
おいおい、おとすつもりかよ。
「グッ…ガァっ、はっ……っっ!」
ほら、抵抗するよそりゃあ。
おばちゃんは?!
いたっ!
手を後ろでくくられ、
倒れている。
呼吸は……、ある。
よし……。
他に人はいなさそう。
「こいつっっ、
スタンガンっっ……」
「おっさんっ!!」
おっさんは片腕で犯人の首を絞め…
いや、あまりしまっていない。
もう片方の手で、
犯人が当てようとする
スタンガンを押さえていたっ!
スタンガンを記憶したっ!
これを僕の手におさめることができたのは
われながらファインプレーだと思う。
「ふぅ、」
「おっさん、
僕がスタンガン使っても大丈夫?」
「ばれんかったら問題あらへんっ!
ってか、はよしてくれっっ」
「テメェっっら!!
ぶっ殺してやる!!」
はいはい。
「ほら、スタンガン当てますよー??」
「くそったれ!テメェっっ!絶対っっっ、」
絶対なんて言葉あんま使うんじゃねーよ、
まったく。
こうして、犯人は気絶した。
「おい、飛田さんよ」
「首しめて気絶させるっていう選択肢…
どうかと思いますよ。」
「まぁ、なんとかなったからえーやんけ」
「いや、僕が機転きかして
スタンガン奪わなかったら
ヤバかったでしょ?」
「うるさいやつやなぁっ!
もう終わったやん!いろいろあんねん!」
「いろいろって?」
「ライダーキックしようか迷ってん!」
「こいつはウソくせぇ
ゲロ以下のにおいがプンプンするぜぇ」
「なんてセリフ、
言わそうとしないでください!」
「お、若いくせによぉ知っとるやん。
ジョジョ知っとんかいな」
「や、まぁ、はい。。」
「優秀優秀。」
よくわからないおっさんだ。
短気で気分屋。
今のとこ、こんな感じか……。
「おい、ガキぃ、」
「おばちゃん背負ってきたれよ」
「起きるの待っとけへんからなっ!
閃光弾の音で人が集まってくるぞ」
あぁ、そうだった。
「それに」
なんだ?
まだ何かあるのか?
「背負って出た方が
助けた感じ出るやん??」
あぁ、
そうだな。
おばちゃんの汗と香水が混ざったにおいも
そんなに気にならない………。
や、やっぱ無理。
僕はタバコに火をつけた。




