相談中
空気がかわった…。
飛田のおっさんもヘラヘラしていない。
「あの…僕、どうしたら……」
「黙っとけ、
お嬢が状況評価言うたら状況評価じゃ」
通称、‘お嬢’をチラ見する。
チョコレートは食べ終わっており、
凛としていた。
さて、
状況評価。
車の中からじゃ何もわからない。
「僕、外に出ても?」
返答がなかなか遅い。
お嬢は迷ってるようだ。
「ほら、
僕のような格好だと
何も疑われませんよ」
まぁ、疑われるような
そんな緊迫した事態ではないと思うが…
ベージュのチノパンに
パーカー。
その上にジャケット。
「気をつけて。」
「飛田さん、彼にあなたの電話番号を」
「了解」
おぉ…
シリアスモードだ。
携帯をしまい、外に出る。
少し寒い。秋も終わりに近づいてきた。
………。
なにしてんだ、僕。
いきなり車の中に入れられて、
なにしようとしてんだ、僕。
人助け???
偽善者ぶって、
正義の味方、弱者の味方、
困ってる人のためにっっ!
てか?
なにしてんだ、僕。
なに、あの2人の雰囲気に
当てられてヒーローぶってんだ?
くそっ、
タバコに火をつける。
「はぁー……。」
灰を見て思い出した。
「我々は安心したらいいんです。」
…。
あんな小学生みたいなお嬢ちゃんが
あんな、せりふ、、、
くそったれ、
僕も、、、するしかないよな…。
集中。
田中のおばちゃんは
買い物から帰ってきたら
と言っていたみたいだ。
夕飯の材料か?
どうであれ、もう夕方。
料理の支度をしているはず。
僕から家までの距離は10メートルほど。
車からは30メートルといったところか…
物音がしない。
料理中のにおいもしない。
犬小屋があるが、
犬はいない。
車庫と思われるものがあるが、
車はないのが確認できた。
旦那さんは仕事だろうか……。
電話をかける。
「飛田のおっさん、
田中さんに電話をかけてみてください」
「あいよ。」
よく見る。
…、
誰かが立ってる…
あれは、後ろ姿か?
女性のものではない影。
戻ろう。
「近くを通って見てきましたが、
物音、におい等がない。」
「電話は?どうでした?」
「あいかわらず、
何回鳴らしても出ぇへん。」
「お嬢、どないする?」
「本間さん、もう少し情報を」
「犬小屋があるが、犬はいない。
電話の音はたぶん、、、
サイレントにされています。」
「飛田のおっさんが
何回か鳴らしたんですよね?」
「僕に音が聞こえたのは最初だけだった。」
電話を鳴らしたとき、
女のものではない影があったのも報告した。
「そうですか……」
「お嬢、警察に連絡は」
「いえ、
まだ犯行が行われたと
決まったわけではなく、」
「人影があっただけです。」
「せやけどっっ、
帰ったらドアが開いとって、
ほんで、電話にも出られへん状況にっ」
「落ち着いてください」
「わかりにくい文章になってます。」
確かに…。
飛田のおっさんが言いたいこともわかる。
いち早く安否を確認したい。
お嬢……っ、
「警察に強盗かもしれない
などという通報を我々ができますか?」
プライドの問題か…?
いや、一理ある。
飛田のおっさんは黙っている。
「ですから、
油断しきってる犯人を取り押さえ、
警察に自白させましょうか」
なるほどな。
犯人は油断している。
それもそうだ、
犯人は通報していることを知らない。
かけていた電話も、
おっさんの携帯から疑われないだろう
たぶん。
ただ、この3人で??
相手の人数もわからないのに?
「中の人数は…?」
「わかりませんが、
飛田さんがいればなんとかなるでしょう。」
え?
そんな雑でいいの?
「まぁ、な、
なんとかなるやろ。」
え?
本気で言ってるの?
「私はここで待ってますから。」
やめろよ、その笑顔。
「よっしゃ、ほな準備や」
「これ、手錠と閃光弾な。記憶して。」
「え、こんなの持つの許されるんですか?」
「あー、上の人が
『なんとかする』言うて」
「あと、これは持っとけ。」
…見たことある。
某武器商人漫画に出てきた。
‘シグザウエル’
拳銃??か、これ。
「使い方わかんねーよっっ!!」
それは、
冷たく、重く、嫌な感じがした。
「持っているだけ、構えているだけ。
それだけでいいんです。」
「抑制。」
「ですから。」
「18時に家入ったらええよな?お嬢」
え、うそやろ、ノリが軽いッ!
「そんなパッと決めるものなのですか?」
「それでいいでしょう。」
決まったっ!!
まぁ、いい。
落ち着こう。
そんなに対したことにはならないはず。
スーパー出てから大変だったなぁ。
あっ、そういえばポッキーも記憶した。
「お嬢さん」
そう言って僕はポッキーを出して
渡してから
閃光弾と手錠を記憶した。
ポケットに拳銃をしまい、
腕時計を見る。
17時50分。
あと一服しとくか……




