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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

銀髪の君は

生首組として企画に参加しま~す(´艸`*)

 ある日の夜。僕は、誰も住んでいない洋館へと足を踏み入れた。コツコツと足音を立てながら廊下を歩き、とある部屋の前で足を止める。

 ギイと音を立てながらドアを開けると、可愛らしい声が聞こえる。


「今日も来たのね、アダム」


 僕はランプを持ったまま部屋の中へと入り、小さな棚の前で足を止める。棚の上には白い布が敷かれていて、その上には――生首があった。


 十代後半くらいの年齢の少女の生首。薄暗い室内でもわかる綺麗な銀髪は、短く整えられている。その生首は、宝石のような青い瞳を動かして僕の方に視線を向けると、不敵な笑みを浮かべて言った。


「あなたが何度ここに来ようと、私があなたに彼女――シェリルの居場所を教える事は無いわ」


 僕は、ギリっと唇を噛むと、震えながら声を絞り出した。


「……ごめん、ごめん。君の首を()ねたりして。……君が、君こそが、シェリルだったんだね……」

 生首――シェリルは、大きく目を見開いた。


       ◆ ◆ ◆


 僕がシェリルと初めて会ったのは、十二年前。僕が七歳の時だった。伯爵家の長男だった僕は、両親によって同い年のシェリルと引き会わされた。侯爵家の令嬢だったシェリルは、僕の婚約者になるらしい。


「よろしくお願い致します、アダム様」


 長い黒髪を揺らしながらそう言うシェリルの笑顔が眩しくて、僕はすっかり、シェリルに惚れこんでしまった。


 読書という共通の趣味がある為か、僕とシェリルはすぐに仲良くなり、順調に交際を続けた。でも、今から約一年前、悲劇が起きる。


 その日僕は、シェリルと一緒に夜会に出る為、彼女の屋敷を訪れていた。しかし、玄関の前に立っても人の気配が無い。僕がそっと玄関のドアを開くと、中は真っ暗だった。


「シェリル……いや、誰か、いませんか? シェリルを迎えに来たのですが!!」


 叫んでも、返事が無い。


 不安になりながらも僕は廊下を進み、リビングのドアを開けた。中に足を踏み入れた僕は、目を見開く。


 リビングの床にはシェリルの両親やお兄様、使用人数人が倒れていた。皆、全身血まみれで、もう生きていない事は一目瞭然だった。そして、部屋の中心に佇む一人の少女。

 背中を向けていたその少女は、僕の方をクルリと振り返る。銀髪の彼女はシェリルによく似ていたけれど、目付きが明らかに違った。


 全ての闇を抱え込んだような深い青の瞳。シェリルは、黄色い瞳だったのに。銀髪の彼女は、不敵な笑みを浮かべると僕に言った。


「……あなた、アダムね。シェリルの婚約者の。……アハ、アハハ、残念ね! もう少し早くここに来ていれば、シェリルは助かったかもしれないのに!」


 よく見ると、銀髪の彼女はシェリルが以前着ていたのと同じ白いワンピースを身に着けていた。しかも、そのワンピースを真っ赤な返り血が鮮やかに染めている。

 そして極め付きは剣だ。彼女はその右手に、血の付いた剣を握っていた。僕が、銀髪の彼女を疑うには十分すぎる状況だった。


「……お前が、殺したのか。シェリルも、その家族も……」


 銀髪の彼女は、アハハと笑って言った。


「だとしたら、何?」


 僕の頭に、血が上るのが分かった。次の瞬間、僕は彼女の方へと走り出し、彼女の持つ剣を取り上げ……彼女の首を撥ねた。僕は、剣術の訓練もしていたから、それなりに剣の扱いは上手かった。


 ゴロゴロと転がる生首。その首は床のある一点で止まったかと思うと、声を発した。


「ウフフ、私を殺そうとしても無駄よ。私は悪魔。これくらいじゃ死なないわ」


 忌々しい悪魔。僕はゴミを見るような目で生首を見たけれど、ハッとした。


――シェリルの遺体が無い。


「……おい、悪魔。シェリルの遺体はどこだ?」


 生首は、また不敵に笑うと応えた。


「さあね? 頑張って探してみれば?」


 僕は、生首を睨むと宣言した。


「……絶対に、シェリルの遺体を見つけてみせる」




 それから、僕は憲兵のいる詰め所に行き、全てを話した。悪魔が貴族を数名殺害したというニュースは、新聞で大々的に報道された。教会の神父達が悪魔を祓おうとしたけれど、生首の悪魔は消える事が無かった。


 僕は裁判所に申し出て、生首を事件のあった屋敷に置かせてもらう事にした。そして、頻繁に屋敷を訪れては、シェリルの遺体がどこかと尋問していたのだが……。


       ◆ ◆ ◆


「な……何を言っているの? 私がシェリルのわけ無いじゃない!!」


 現在十九歳となった僕の前で、珍しく生首が動揺する。僕は、目を伏せがちにして言った。


「……最近、シェリルの親族と話す機会があってね。その時聞いたんだ。シェリルが……家族から、虐待されてたって」


 シェリルの黒髪は家族の誰とも共通していなくて、シェリルの母親は不貞を疑われた。その事で父親と兄はシェリルを冷遇し、シェリルの母親もこんな風に言っていたらしい。


「お前が生まれなければ、私が疑われる事も無かったのに」


 親族は薄々虐待に気付いていたが、その親族は身分が低かった為追及出来なかったらしい。



 親族の話を聞いた僕は、シェリルの自室を調べた。そして、本棚で見つけてしまった。人間が悪魔と契約する方法が書かれた本を。



「シェリル……君は僕に明るい表情を見せながらも、ずっと辛い境遇に耐えていたんだね。そして事件のあった日、とうとう耐え切れず、悪魔と契約して家族を殺害する力を得た……」


 シェリルは比較的華奢な体格だ。剣の訓練も受けていないし、悪魔と契約でもしなければ家族や虐待に加担していた使用人を殺害する事が出来なかったのだろう。



 シェリルの生首は、涙をボロボロ零しながら叫んだ。


「嫌い、嫌い、大嫌い! 私を虐めていた両親も、お兄様も、使用人達も!……それに、アダムの事も! 何で気付くの!? 悪魔と契約したら銀色の髪になったから、演技をすれば気付かれないと思ったのに! アダムには、アダムにだけは……私があんな事をする女の子だって、知られたく無かったのに!!」


 僕は、シクシクと泣くシェリルの頬を両手で包み、優しい声で告げた。


「僕は、君の事を愛してるよ。婚約は政略的なものだったけれど、君の事をどうしようもなく愛しいと思ったんだ。……君が辛い思いをしているのに気付いてやれなくてごめん。未熟でごめん。……生まれ変わったら、また僕の側にいてくれる?」


 シェリルは、一瞬目を見開いた後、涙を浮かべながら笑顔で答えた。


「うん、うん……生まれ変わっても、アダムと一緒にいる。ごめんね、嫌いなんて言って。本当は、私も、アダムの事が大好きだよ……!」


 僕は、穏やかな笑みを浮かべるとシェリルと唇を重ねた。その途端、シェリルの首がサラサラと砂になっていく。


「アダム、私、もう逝くね。地獄で罪を償う事が出来たら、またアダムと同じ世界に生まれてみせるから。絶対、アダムの側で笑ってみせるから」

「ありがとう、シェリル……さようなら、またね……」

「さよなら……アダ……ム……」


 サラサラと砂が崩れ、生首は完全に無くなった。僕は、両手に砂を(すく)った状態のまま、ボロボロと涙を零した。


「シェリル、シェリル……!!」


 暗いリビングに、僕の泣き声がいつまでも響いていた。


読んで頂けると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
うわあ、そういうことか……!! やられました。いつかどこかで二人が幸せでありますように……!!
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