仲良きことは美しき哉
同居するほど仲の良かった友人同士の些細な諍いがこじれて裁判になったり刑事事件になったりして最終的には無人の事故物件と化した一軒家にバイトで住んだことがある。当時の交際相手と一緒に暮らしたのだが、その同棲生活は悲しいことに長続きしなかった。結婚を考えていたのに。
霊感がある人間ではなかったはずなのだが「幽霊が見える」と言い出したのが思えば悲劇の始まりだった。それからというもの夜は寝ずに意味不明な独り言をブツブツ呟き、日中は寝てばかりの毎日を繰り返していたので「早く病院に行ったら」と勧めたら怒り出し刃物を出してきたから驚きである。ダッシュで逃げたら追いかけてきて、危うく刺されるところを偶然パトロール中だった警官に助けてもらい、怪我なく無事に今日まで生き長らえることが出来た。その相手とは、それきりである。風の噂では良縁に恵まれ結婚したそうだ。今も幸せに暮らしているらしい。私はず~と独身だというのに。何かおかしいだろ。
この際それは置いておこう。
あの家で強く印象に残っているのは、壁に貼られていた一枚の絵だ。ナスとキュウリが描かれていて、その横に『仲良きことは美しき哉』と記されている。何というブラックユーモアだと当時は思ったものだった。てっきり呪いの絵画だと勘違いしたくらいだ。その後、武者小路実篤という作家の描いた絵だと知った。
それっきり忘れていたのだが、小説家になろう公式企画「秋の文芸祭」のお題「友情」を見て、急に思い出した。武者小路実篤の代表作が『友情』だからだ。
その作品を実は読んだことがない。せっかくだから読もうと思ったが青空文庫に収録されていないので断念した。粗筋だけチェックして思ったこと――友情が愛情に負けてる。
あの『仲良きことは美しき哉』という言葉は、愛し合う恋人たちの『仲良きことは美しき哉』であって、友だち同士の『仲良きことは美しき哉』ではなかったのだろう……と今は考える。そして昔あの家に住んでいた頃、同棲相手に優しくしてやれば良かったとも思う。そうしていたら、別れることはなかったかもしれない。今さら遅いが。
そんな感じで純文学してみたつもりなんだけど、こんなんでいいのかな?




