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公爵令嬢、王都の商店街を知る


 「そういえば……マリア、探索実習の準備は出来てますの?」

 「……何か必要なんですか?」

 「ポーション、防具、武器、食料……必要なら、魔道具もだ」

 「一つも持ってません!」

 「あらまぁ……」


 入学して数週間、食堂で昼食を取っている最中になんとなく思っていたことを口に出す。あわわ……と目を左右に泳がせるマリア。シエナは無表情でサンドイッチを食べている。まぁ、そうですわよね。


 「でしたら、三人で見に行きませんか?」

 「いいんですか!?」

 「もちろんですわ、シエナもご一緒にどうです?」

 「是非、同伴させて欲しい」

 

 よかったですわ。折角なら全員で行きたいですからね。


 「日時のご都合はいかがです?」

 「放課後ならいつでも大丈夫です!」

 「同じく、しばらくは何もない」

 「そういうことでしたら、今日の放課後に行きましょうか。行けるなら早い方がいいですわ」

 「問題ない」

 「楽しみです!」


 ちょうど皆さん暇でしたのね。私としても、王都の雰囲気はもっと詳しく見ておきたいですもの。しかも二人は、私とは違う視点を持っていますからね。楽しみですわ。


 「では放課後、正門前に集まりましょう」

 「はい!」

 「了解した」


 そうして別れ、いつも通り講義を受けました。なんだかんだ序盤ですから、まだ実家でやっていた内容と被ってるんですわよねぇ。ちゃんと受けますけどね、貴族ですし。


 「二人とも、王都はどうだ?」

 「体感としては、面白い場所ですわね」

 「とにかくお店が多いです!」

 「ふふ、そうか」


 放課後、商店街に向かって三人で歩く。そういえば、ノースポール領は王都の近くにありましたわね。マリアと私はお上り二人組ですわ。


 「どこから攻める?」

 「武器や防具は送って貰えますし、二つの近い方からでどうでしょう?」

 「なら武器だな。マリアもそれで大丈夫か?」

 「お任せします!」

 「ふ、任された」


 少し得意げに先導してくれるシエナに付いていく。雑多な市街をスルスルと抜けていく、流石に慣れてますわねぇ。というか、貴族が通らなさそうな抜け道を通っていますが……結構好き放題してるんですわね。護衛の大変さに少し同情しますわ。


 「こんな道もあるんですねぇ」

 「住民が使う道だから、知らないのは当然だろう」

 「安全面に懸念が……」

 「大丈夫だ。護衛も恐らく来ているし、私がいる」

 「それはそうですが……」


 武家らしい言葉ですわね。まぁおっしゃる通りですけど。私の見えないところでマイラが見ているでしょうし、シエナの護衛もいるでしょう。戦闘の才能無さすぎて、全く気配とか分かりませんけど。


 「もうすぐ大通りに出る。気にするな」

 「そうですわね……。まぁ、いいですわ」

 「私は楽しいですよ?地元の雰囲気を少し感じますし」


 私だけですのね……。こんなに気にしてるの。貧民街を歩いている訳では無いですし、気にし過ぎなんでしょうね。シエナは護衛の気配を感じてるから気にしてないんでしょうねぇ。知らないですけど。


 「ほら、ここが商店街だ。何でもあるぞ」

 「すっごいですね!」

 「これは、中々……」


 雑多な路地を抜けると、大通りに出た。呼び込みや色とりどりの商店が軒を連ねる、まさに王都と呼ぶにふさわしい通りでした。いやほんと凄いですわね。有名商会、噂に聞く老舗、新進気鋭の新店。武器、防具、日用品、魔道具、なんでもありますわよこれ。毎日通いたいですわ。

 マリアも目をキラキラさせて通りを見ていた。シエナは得意げに私達二人を見てくる。な、なんか恥ずかしいですわね。


 「気に入ってくれたようで何よりだ。さぁ、行こう」

 「あのお店、気になります!」

 「魔道具店『ホノール』!後で行ってもよろしいですか!?」

 「……落ち着いてくれ」


 その言葉に二人して赤面してしまう。淑女としてはしたなかったですわね。しかし、ホノールは気になりますわ。絶対後で行きますわよ。マリアは調理器具の店に目を取られてるみたいですわね。そっちも正直気になりますわね……。くっ、誘惑が多い!


 「とりあえず、武器屋に行こう」

 「……そうですわね」

 「……ですね!」


 シエナの言葉で我に返って、名残惜しそうに武器屋へと向かう一行でありました。そもそも、今回はマリアの装備を見に来たという話ですからね。でも、やっぱり気になりますわ……。


 「ここだな。私がよく使っている店『スティール・スチール』だ」

 「ほう……。名店ですけど、結構ベーシックな所を攻めてきましたわね」

 「そうなんですか?」

 「初心者向けから上級者向けまで幅広く置いているのが特徴的ですわね。そういう意味では、ピッタリではあります」

 「家に色々卸してもらっていて、少しは顔が利く」

 「『白竜騎士団』の装備はここから出てますのね。なるほど」

 「よく分からないですけど、すごいですねぇ」


 ほへーっと、見るからによく分かってなさそうな表情を浮かべるマリア。まぁ私兵の装備事情なんて、管理する側以外関係ないですからね。そう言ってシエナは店の中に入っていき、私とマリアも後ろを付いていく。


 「いらっしゃいませ……と、シエナ様ですか」

 「調子はどうだ?」

 「最近は大口がいくつか入っておりまして、いい感じです」

 「それは良かった。……店主は居るか?」

 「奥に居ります、ぜひ顔を出してあげて下さい。あの件以降、貴女の事を案じておいでです」

 「そうしよう。……すまない二人とも、少し外す。ゆっくり見ていてくれ」

 「構いませんわ、しっかり話してきて下さいな」

 「お気になさらず!ゆっくり見てますね!」

 「感謝する」


 そう言って店番の方と一緒に奥へと行ってしまうシエナ。先代の謀殺疑惑……伝わってますのね。というか、流石に人徳がありますわね。正直、武器商に嫌われたら終わりですからねぇ。武器の供給情報を流されるだけでもキッツいですし。


 「どれから見ましょうか……?」

 「その前に、お金はどの程度ありますの?」

 「公爵家からは、全部出すから自由にしていいと言われてます!」

 「太っ腹ですわねぇ」


 羨ましい話ですわ。私の方は、管理側に立ってからもっぱら散財し辛くなってしまいましたわね。まぁ買うんですけど。抑えられませんわ、物欲。


 「武器を振った経験はありますの?」

 「短剣ぐらいなら!他はありません!」

 「なるほど、でしたら……」


 短剣とピストルを何丁か、って所でしょうか……?正直物の良し悪しは分かりますが、使う側の才能は無いので、どこまで語っていいか悩みますわね。ま、時間はありますし、のんびり見ていきましょうか。


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