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ヲタッキーズ192 昼メロの女王

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第192話「昼メロの女王」。さて、今回は電気街を舞台にした、昭和からの長寿を誇る昼メロの撮影中に脚本家が殺されます。


捜査線上に浮上する、ドラマ関係者同士の愛憎と裏切りの人間関係。リアルとドラマが交錯する中で、真実に迫る脚本を描くのは誰か?


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 誘惑の電気街


ベッドで絡む中年の男女。激しい絡みだが、女は黒ブラ、男は縞シャツ…奇妙な節度が保たれている。


「ジョセ、コレで最後ょ」

「何だ、いきなり?」

「私、夫とやり直すコトにしたわ」


目を見開く男。構わずのしかかる女w


「何だって。アフソと?」

「ごめんなさい」

「アジェ、私達の関係はどうなる?」


マウントする女を払いのけ、半身を起こす男…その時、お約束の物音がして、ギョッと振り返る2人w


「どうしましょう、夫が帰って来たわ!」

「ただいまー。アジェ、寝室にいるのかい?」

「貴方、待ってぇ…隠れて!クローゼットへ!」


男は急いで寝室のクローゼットを開ける…すると中から顔面蒼白の女の死体がバッタリと倒れかかるw


その背中には…遥か未来を目指す(はね)ではなく、斧がw


「おいおいおい!何だょ年末のNG特集で使うドッキリだな?危うく引っかかるトコロだった!」


昼メロ男優は、両手を挙げ大袈裟に驚いてみせる。だが、スタジオスタッフは全員凍りついたママだ。


小さく首を振るプロデューサー。


「嘘だろ?サラー?脚本のサラーが殺されてる!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


昼下がりの神田リバー。河岸にそびえる"秋葉原マンハッタン"の摩天楼が初夏の日差しにきらめく。


「もしかして…ランチを作り直してる?今、食べたばかりだけど」

「まさか。大掃除です…と逝うか、大掃除の段取りの検討的な…」

「年末の?」


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地が良く客の回転率は急降下。収益率も…


僕の推しミユリさんはメイド長だ。


「未だ7月だょ?メイド長自ら年末の大掃除の段取りとは何ゴトかな?」

「メイド学校の開講は1ヵ月先。スピアは夏のハッキングで大忙し。私も何かしていないと…」

「おっと。髪が綺麗な人からだ」


万世橋(アキバポリス)のラギィ警部からだ。


「やぁ…あぁ。21丁目の1777だね?ROG。今から逝くょ」

「21丁目の1777ですか?」

「YES。またスーパーヒロイン殺しだ」


心なしか表情が輝くミユリさん。


「ソコは"誘惑の電気街"を撮影しているスタジヲがある場所だわ」

「アキバを舞台にした昼メロだ。昭和から続く長寿番組だね」

「テリィ様。私も参りましょうか?」


ナゼか前のめりなミユリさん。いつもなら、最後に美味しいトコロを持って逝くパターンなんだけどw


「うーん未だ万世橋(アキバポリス)から正式にリクエストされたワケじゃナイからな」

「でも、テリィ様は現場に逝くのでしょ?」

「とりあえず、僕だけ様子を見て来るょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原21丁目1777にある撮影スタジヲ。


「サラー・カトラの遺体が、セットのクローゼットの中に入ってたそうょ」

「誰?番組の関係者かな?大方きっと嫌われ者のタカビー女優だろ?」

「いいえ。脚本家ょ"blood type BLUE"」


先行してたヲタッキーズのエアリから状況を聞く。因みにエアリはメイド服。ココはアキバだからねw


「スーパーヒロインの物描きか。しかし、物描きを殺す理由ナンてアルのか?」

「あら。物描きが殺される理由なら、いくらでもアルけど」

「多分サラーは知ってしまったんだ。億万長者のミマスが、気候変動兵器で世界を氷河期にしようとしているコトを」


早くも妄想全開だ。調子が良い。


「つまり…殺されたのは、お天気マシンが原因って妄想ね?」

「実際に華流のSFメロドラマでやってた。ドラマのベースは、みんな昼メロさ。印象的な登場人物達が秘密や陰謀にまみれるドロドロの世界。きっと動機も昼メロらしいモノのハズさ」

「どうかしらね。昼メロでも殺人の動機は普通だったりして」


脚本家の背中に、赤い非常用の斧がグサリと刺さってる。万世橋の鑑識が多方向から現場写真を撮影中。


「アレが普通に見える?本番を撮影中のセットで、背中を斧でザックリだぜ?恐らく、犯人はこの現場に紛れてる。平静を装ってね」

「…状況は?」

「斧で脊髄が切断されてる」


僕のタブレットから声がスル。超天才のルイナが、ラボから"リモート鑑識"で手伝ってくれている。


「ソレで肺に血が溜まって溺れる状態になった。死亡時刻は、昨夜の19時から23時」

「斧は何処にあったのかな?」

「消防用の斧ね。何かのメッセージかも」


おかしなコトを逝い出すルイナ。


「斧だぜ?犯人は木こりの"与作"だろ?」

「あのね。テリィたん、サラーが描いた脚本の中で、主人公の1人が斧で殺されてるの。そのコトに不満を抱くファンもいるワケ」

「そりゃ不満タラタラだわ。アリコ・ラッドは30年も"誘惑の電気街"に出演してたのに、突然コロナで殺されちゃったのょ?!」


何と超天才は"誘惑の電気街"フリークらしい。


「ルイナ…深呼吸して」

「失礼。恐らくスタジヲで殺された。犯人は、血をキレイに拭き取り、遺体をクローゼットに押し込めたと思われる」

「つまり、犯人は、スタジヲに詳しい人間ってコトか。このドラマの関係者とか?」


ヲタッキーズのマリレが続ける。彼女もメイド服。


「ココのセキュリティは、厳しくなかった。防犯カメラが入り口にはあるけど、このセットにはナイ」

「うーん犯人は部外者の可能性もアルな」

「身内とは話した?」


エアリが応える。


「夫は監督で、遺体を発見した時も現場にいたわ」

「OK。じゃヲタッキーズは出演者達に話を聞いて来て。私とテリィたんは夫に話を聞くわ」

「ROG」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その場で出演者の聞き込みを始めるヲタッキーズ。昼メロ男優が口火を切る。続いて主演女優。


「まさに悲劇としか言いようがナイ。サラーは良い子で、才能もあった」

「そうなの。ホント、脚本は重要だから…」

「演技も重要でしょう?」


女優心をくすぐるエアリ。途端に多弁になる女優。


「そうよ!その通りなの。アンジ・キャノに息を吹き込むのは私。でも、ソレを生かす脚本がなきゃ、私は単なる美人だわ」

「私の場合もそうだ。サラーは、ジョセ・フクスを深みのある役に描き上げてくれた。実に良く理解してくれていた」

「あら。でも、貴方の役なら、5才の子供でも作文出来るわ。だって、単純明快なエロ親父だから」


主演を背に堂々と喧嘩を売る女優。


「何だと?演技のエの字も知らないくせに、偉そうなコトを言うな」

「まあまあ。ブロンさん、昨日は何時にスタジヲを出ました?」

「ココを出たのは18時。帰って泡風呂に入ったわ。"与作"を聞きながら、ワインを飲み、泡が私の裸を包み込む感触を楽しんだわ」


赤いコートの下から、胸の谷間をチラ見せして男優を挑発スル。みるみる鼻の下が伸びる男優。単純w


「…で、貴方はどうでした?

「同じだ」

「"与作"からの泡風呂?」


頭を振る男優。


「違う。五反田で泡踊りだ。"与作"を聞きながら」

「ヘイヘイホーって?で、サラーに会ったのは?」

「昨夜のラブシーンの前にサラーが来て…」


女優が茶かす。


「ラブシーン?泡姫のコトかしら?私とは、拷問シーンだったわ。貴方は太り過ぎ。ジムに通えば?」

「五反田の泡姫にヤキモチ妬くな。お前だってキスした時に口臭がキツかったぞ」

「あのぉ!サラーの話に戻って良いですか?このドラマの関係者に彼女の敵はいましたか?」


男女優共に即座に首を振る。


「いない。素晴らしい子でみんなから愛されてた」

「敬意を持って人と接してた。でも、殺されるなんて。一体誰がこんなコトを」

「全くだ」


絶倫老人男優と元セクシー女優は、顔を見合わせてから…慌ててソッポを向くw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕とラギィは、監督と会う。昼メロにも監督がいるとは驚きだ。恐らく(AV?)男優崩れ?のイケメン。


「奥さんと最後に会ったのは?」

「妻と最後に話したのは昨夜だ。ソレが最後だ。ちょうどこの場所だ」

「どんな話をしましたか?」


定石通りの質問を重ねる。監督は肩をスボめる。


「何、つまらない話さ」

「何時頃でしょう?」

「18時過ぎだったかな」


監督の名は、イタリ・アーン。


「サラーは帰宅しなかったのに、不審に思わなかったんですか?」

「おいおい。脚本家は定時に帰れる商売じゃない。夜通し仕事をスル事もよくあった」

「仕事で揉めるコトはあった?」


僕も1つ質問。


「物描きは感性の商売だからな。意見が合わない人はいたが…危害を加えるような者はいなかった。"誘惑の電気街"の関係者は、みんな家族さ」

「仕事以外では、どうですか?」

「いないと思うけど…待て」


お、何か当たりそうw


「何ですか?」

「"フクスキラバ"だ!」

「誰ソレ?アフリカの酋長?」


のけぞる僕。


「"フクスキラバ"ラバーさ!1週間ほど前、スタジヲ見学に来た時に大暴れして、摘み出された女がいた。熱烈なファン、いわゆるシッパーで"フクスキラバ"ラバーのネームで"誘惑の電気街"について年中つぶやいてる」

「失敗?」

「シッパー。昼メロ中のカップルの恋路を応援する狂信的ファンのコトよ。彼女は…恐らくフクスとキラバのファンね」


何とスラスラと解説してくれちゃうラギィ。満足げにうなずくイケメン監督、イタリ・アーン。


「その通りだ。その女は、サラーを脅して、警備員につまみ出されてた」

「名前は?」

「わからない。でも、サラーの助手のリース・ハモンなら知っているカモな」


そこへ、泣きながらアラフォー女子が飛び込んで来て、監督と熱い抱擁。コレもドラマか?本番中?


「私のサラーが!」

「あぁグリア!とても残念だよ…彼女はサラの母親のグリア・チェス。グリア、コチラは捜査を担当してくれてる万世橋警察署のラギィ警部だ」

「ヒド過ぎるわ!やっと実の娘と再会出来たばかりなのに…」


ドン引きスル僕達。


「私が若い頃、あの子を里子に出してしまって…一体誰がこんな残酷な天使のテーゼ、じゃなかった、残酷なコトをするの?」

「まだわかりませんが、犯人逮捕のために全力を尽くします」

「もし捕まえなかったら警察を訴える。損害賠償を求めてやる!」


万事芝居がかってる。顔を見合わせる僕とラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「普通、損害賠償まで逝くかな?」

「表現の仕方は人それぞれってコトだわ」

「もしかすると、グリアは緊急の心臓移植が必要で、突然サラーの前に現れたのかも。親子しか適合しない遺伝性の難病だ」


うーん昼メロ的な転回だ。ところで…


「ラギィ。そういえば良く知ってたな。"フクスキラバ"のコト」

「あぁ警官に聞いたのよ」

「ソレにシッパーについても熟知してた」


トボけるラギィ。


「ネットで読んだだけよ…失礼、貴女がリース・ハモン?」


スタジヲの雑踏に背を向けて座り込んでいる女子。ラギィに声をかけられて顔を上げる。泣いている。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


サラーのオフィス。


「"フクスキラバ"ラバーの本名は、キャリ・エドワ。10万円でセット見学が出来るチャリティ企画に応募して来た。最初は大人しかったのに、サラーを見るなり、突然大声で怒鳴り始めた。"アンタが何もかも台無しにした!"って」

「リース。キャリから脅迫状が届いたコトは?あったら見せて」

「ないけど、ブログで散々悪口を描いてるわ」


PCでブログを探すリース。今どきブログかょ。


「サラーは残業してたのに、アシスタントの君は残業しなかったのか?」

「昨日の夜は、サラーに残業禁止を言われてた。彼女は、若手脚本家の育成に熱心で、私を育成プログラムに推薦してくれてたの。昨日はそのイベントで…サラーも来るハズだったのに、結局来なかった」

「リース。サラーに最後に会ったのはいつ?」


うつむくリースに質問を重ねる。


「18時半頃にコーヒーを買って来て渡したわ…コレよ。スタジヲ見学の日のブログ。"セットには行けたけど、任務遂行ならズ"だって」

「最新の投稿はコッチだ"今度こそやってみせる。アイツはファンの背中を斧で切りつけたも同然だから"」

「"彼女こそ切りつけるべし"」


最後のフレーズは、僕とラギィが異口同音に読み上げる。そして、顔を見合わせて、僕達はニヤリ。


第2章 可愛いウェイトレス


万世橋(アキバポリス)の取調室。僕とラギィを前に堂々たる存在感のキャリ・エドワ。つまり太めw


「死んだ?サラーが死んだ?…最高のニュースだわ。ツイートしなきゃ!…え。ダメ?そう。そーなの?」

「ホントは昨夜、つぶやきたかったンじゃないの?」

「今、知ったんだけど」


平べったい満月みたいな顔を僕達に向ける。やがて、ユックリと気がついて逝くw


「…ウソょ待って!私のコトを疑ってるの?」

「だって、貴女のつぶやきには、彼女への恨みがビッシリ描き込まれてるじゃない?」

「みんなネットでは大口を叩くのょ」


鼻で笑うキャリ…マズいな、負けてるw


「君が"サラーこそ傷つけるべし"とつぶやいた日に、彼女は斧で殺されたンだぜ?」

「待って。説明するから、聞いて」

「聞くまでもない。もうわかってる。サラーに接近スルためにセット見学をしたんだな?」


ラギィからも援護射撃。


「だけど、現場を出禁にされたから、昨夜、再び忍び込んだ。そして、思い出したのよ。消防用の斧があったって」

「フン。何を眠たいコト言ってンの?私は、サラーが"キャンフォゾ"の言いなりだったから、黙っていられなかっただけ」

「キ、キャン…誰?」


あっさり挫折スル僕達の反転攻勢w


「"キャンフォゾ"。私の敵ょ。アンジ・キャノとアルフ・ヲンソがくっつくべき、と思ってる困った人達ょ。彼女にはジョセこそ相応しいのに」

「だから、殺したの?」

「そうよ…待って、違う。サラーをクビにするために、仲間と計画したわ。いつかは、この国、目を覚ますと…じゃなかった、局のトップに大量の斧を送りつける"oh No作戦"ょ。かなりの賛同者が集まった。とにかく、番組を救わなきゃ!」


やっぱり負けてるw


「…昨日の夜19時から23時の間は?」

「"フクスキラバ"同士でチャットしてた」

「もちろん、証人はいなくて、家に1人でいたンでしょ?」


寂しい独身風景だ。ところが、キャリはドヤ顔。


「いいえ、ケーンとメリィがいたわ」

「ケンメリ?シェアハウスに住んでるの?」

「いいえ。両親ょ」


疲れるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のギャレー。力任せにグルグルとコーヒーをかき混ぜるラギィ。


「キャリは、犯人じゃなさそうだ。多分、昨夜は家から1歩も出ていないだろう」

「もっとソープな展開を気にしてたのに。ねぇ彼女って昼ドラっポイと思わない?」

「ラギィがソープって言うと、なんだか妄想しちゃうな」


あれ?テレるラギィ。何なんだw


「テリィたん。集中して」

「ラギィこそ」

「でも、聞いたでしょ?彼女は、もう昼メロの世界に夢中なのよ。頭の中は、アジェの恋のゆくえや、マルグ・リットのガンのコトや…」


待て待て待て。


「ウソだろ?」

「何が?」

「ラギィ、実は君自身"誘惑の電気街"のファンなんだな?」


慌てるラギィ。


「なんで?違うわ」

「そうか!そうだったのか!マルグ・リットのガン

の話なんて、誰もしてなかった。シッパーの件だって君は熟知してた」

「ソ、ソレは…」


慌ててギャレーを出ようとするラギィを、鼻先で壁ドンして止める…あれ?何かを期待スル眼差しw


「と、とにかく。ラギィは"誘惑の電気街"の大ファンだ。どっぷりハマっちゃってる」

「いいえ…うーん1回位は見たカモ」

「前の職場で"新橋鮫"と恐れられたラギィが昼メロのファンだったとは驚きだ」


ムダにドヤ顔の僕←


「そーゆーテリィたんだって"月世界ER"の大ファンでしょ?」

「全然状況が違う。アレは(月面ナースのw)リサーチのために見てただけだ」

「あら。何のリサーチ?」


突然エアリが割り込む。僕とラギィは異口同音w


「別に!」

「…ま、まぁ良いけど。ケーンとメリィの両親がキャリのアリバイを証明したわ」

「そう。番組関係者はどーなの?」


マリレが加わる。


「全員アリバイを確認した。で、サラーの予定を見てたら"M"が頻繁に登場するワケ。殺される前日に会い、翌日も会う予定だった」

「マックで小説でも描いてるのかしら」

「アシスタントも夫も"M"については、何も知らナイ。ただ、サラーは"M"と会った後は、いつも不機嫌だったらしいわ。あ、アシスタントと夫から聞いた話だけど」


さらに、重要情報。


「ソレから、サラーの自宅を見て来たけど、家から夫の持ち物が全部消えてた。残ってるのはサラーのモノだけ。で、聞いてみたら夫とは2ヶ月も前から別居中だって」

「あらあら。今どき別居は普通だけど、なぜ、私達に黙ってたのかしら」

「うーん何か隠してるな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


スタジヲにイケメン監督イタリ・アーンを訪ねる。


「積極的に隠した事実はナイ。ソンなコトを言ったら疑われると思っただけだ。警察は冤罪量産マシーンだからな」

「認めるわ。でもね、ウソをつく方が冤罪と同じくらい卑怯ょ」

「なんで別居した?」


視線を落とすイケメン監督、イタリ。


「サラーは出世して忙しくなり、自分の妻なのに予約しないと会えない状態だった。だから、俺が家を出た」

「そーかしら?サラーが貴方を追い出し、離婚を迫ったンじゃないの?」

「財産分与でモメるパターンだ」


2人がかりでイタリを追い込む。


「待て。俺は殺してナイ」

「じゃ彼女が殺された事件の夜、何をしてたの?」

「泊まってるホテルだ。撮影後は、真っ直ぐホテルに帰った」


ドヤ顔のイケメン監督。絶対に元はAV男優w


「ソレを証明出来る人はいるの?どうせ証人はいないンでしょ?ちゃちゃっと逮捕させてょ」

「…俺は1人じゃなかった」

「まぁ!誰と一緒にいたの?」


ラギィが突っ込むと視線を床に落とすイタリ監督w


「…マディ・ブロソ」

「マディ・ブロソ?"誘惑の電気街"の主演女優のアジェ役で元AV女優の?」

「YES。そのマディ・ブロソだ」


溜め息をつく"新橋鮫"。


「…なるほど。彼女も泊まったのね?」

「いいや。彼女は帰った。19時頃、サラーからメールが来たので…だから、お預けだ」←

「事件の夜、貴方の妻は、貴方の愛人にメールをした。そのコトをなぜ私達に黙ってたの?」


回答は明快だ。


「大したコトじゃナイからだ。マディに聞いたら、新しい脚本が上がったから読んで、と言うメールだったらしい。彼女は、暗記するために帰るコトにしたんだ」

「その後は1人でいたの?」

「YES。ミニバーの酒を全部飲んで、YourTUBEを見てたよ。調べろ」


本日最大の溜め息をつくラギィ。


「確認スルわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


スタジヲのケータリング。力任せにグルグルとコーヒーをかき混ぜる僕。


「夫も違うな」

「でも、動機はアルわ」

「だけどさ。夫が金のために妻を殺すナンて、何かちょっち…」


呆れ顔のラギィ。


「普通過ぎる?」

「うーん怪しいのはやっぱりマディだな。被害者の夫と熱烈に不倫してた主演女優。しかも、事件の晩に愛人の妻から謎のメールを受け取ってて、不倫中のホテルを飛び出してルンだぜ?」

「そもそもメールの件は夫のウソかもしれない。でも、マディにはエクスプレインしてもらいましょ」


ヒラメく僕。


「エクスプレイン…エアラインと語呂が似てる」

「何言ってるの?お願い。つまらないコトは言わないで。疲れるから」

「職場恋愛中の超天才ルイナとエアリのコトを今度から"エアルイナー"と呼ぼう。"フクスキャン"みたいにさ。だって、2人はいつもエアライナーに乗ってるって"ウワサ"だし…あれ、ミユリさん?」


何とミユリさんの登場だ。もうクライマックスなのか?因みに彼女はメイド服。だってココは…以下略


「驚いたわ、ミユリ姉様。どうしていらしたの?」

「ホントにビックリだ。クライマックスまで出番はナイって、いつも話してるだろ?」

「テリィ様。私は悲しんでいるのです」


元カノと捜査してるTO(トップヲタク)が気になり様子を見に来た今カノ…スーパーヒロインとは逝え女子は女子だw


「でも、被害者は脚本家だぜ?ミユリさんは知らないだろ?」

「このドラマの関係者は、全員家族です。ソレに私は力になれる。スパイになって出演者の内幕を探ります…あら、ランス・ヘイスだわ」

「ミユリ姉様、お知り合いなの?」


明らかに迷惑そうなラギィw


「カンパニー時代、彼の恋人の役だったわ。そして、実際に交際もキャッ!…彼と役の上で結婚した後、私はUFOに誘拐され、金星で生き埋めにされ、シン遊星仮面に襲われ、そしてまた誘拐され、下北沢の下水道に監禁されたの」

「で、ミユリさんの出演期間は?」

「2週間でした、テリィ様。じゃ逝って参ります」


スタスタと助演男優に近づく。肩を叩き熱いハグw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ラギィ警部、サラーのメアドにログインしたわ。何を探しましょうか?」

「サラーが殺される直前に送ったメールを見たいの、リース」

「となると…コレね」


クリックするアシスタントのリース。


「"オフィスに今すぐ来て"ですって。"誘惑の電気街"主演女優のマディを呼び出してるわ」

「不倫のコトを問いただすつもりだ」

「さぁどーかしら。添付がアル…次回の脚本だわ!ねぇ舞台は熱海ょ!熱海で職場旅行だって!」


小鼻を膨らませ興奮するラギィ。


「ウソでしょ?昭和?」

「げげ。しかも、マディの役は、熱海でカバに踏まれて死ぬぞ?」

「サラーは、マディをドラマから降板させようとしてたのね?」


僕の的確な妄想w


「だから、降板させられる前に殺したのか!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室の隣室のドアからマリレが小声で呼ぶ。


「テリィたん、来て。容疑者だとはワカッテルけど、最高にセクシーなの」

「ホントだ。さすがは元AV」

「ミユリ姉様には黙っててあげる」←


ロケットガールと拳をぶつけ合う。マジックミラー越しの取調室には元グラビア嬢だった女優がいる。


「セクシー過ぎるのが仇となり、被害者の夫と不倫関係に陥るが、ソレに気づいた被害者は、彼女をドラマから降板させる…」

「まさに昼メロっぽいよな」

「チキータは見てた?」


バナナ?


「見てない。何それ?」

「華流のドラマ。日本兵の目から殺人光線とか出ないわょ…多重人格の欧陽菲々は、夫が双子の姉と不倫してるコトに気づく。でも、その相手も多重人格で、実は欧陽菲々の別人格だった!」

「何と!…待てょ。ソレじゃ不倫にならないぞ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「マディ・ブロソさん。自分の役が死ぬ、つまり、ドラマを降板させられるとわかって、どんな気持ちになりましたか?」

「私の役が死ぬ?あり得ないわ。番組の視聴率は、私が稼いでるのょ?」

「でもね。サラーの脚本だと、そうなってるの。アンジ・キャノは、熱海でカバに踏まれて死ぬわ」


鼻で笑う主演女優。


「カバに?熱海ょ?あのね。サラーは、役者に緊張感を持たせるために、良く死ぬシーンを描いて寄越すのょ」

「でも、サラーはこのシーンは事件当日の夜に描いてる。貴女は、サラーの旦那とホテルで不倫中にメールをもらったのょね?そして、貴女はサラーに会いに行った」

「…た、確かに。サラーは私が降板すれば、夫とやり直せると思ってたわ。バカな女」


死人を平気で鞭打つ。コレが芸能界か。


「だから、貴女は怒って彼女を殺したのね?」

「いいえ。でも、あのクソ女には伝えたわ。私は"誘惑の電気街"の魂そのモノだって。でも、説得に応じなかったから帰ったわ。無理に殺す必要はナイもの」

「どうして?」


常に上から目線のマディ。


「別の手があった。TV局がマジで信頼してるのは脚本家トップのサラーじゃナイ。 2番手のピター・コネリょ」

「どんな手を使ったワケ?」

「女優なら誰もが使う手ょ。あの後、直接ピターのタワマンに行って、私の魅力で彼を説得した」


ドヤ顔のマディ。


「翌日は朝帰り。作戦は成功した」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


脚本家No.2ピターのタワマンは神田花籠町だ。


「YES。確かにマディは昨夜来たよ。モビルスーツを着てた」

「モビルスーツ…機動戦士ランダム?コスプレしてたの?」

「YES。しかし…モビルスーツだけを着てたんだ。だから、脱いだ時には心臓発作を起こすかと思ったょ。マディにはグラビアの頃からお世話になってたが、まさかリアルでお世話されるナンて、夢にも思ってなかった。還暦過ぎても仕事を続けてホントに良かった」


無邪気に笑顔で語るNo.2。


「…で、彼女は何と?」

「サラーに"誘惑の電気街"を降板させられるとカンカンだった。そして、延々と語り出した。自分の演技がマスコミにどれだけ評価されてるかをね。朝まで語り続けて指1本触れさせない。仕方ないのでサラーに話すと約束したさ」

「…でも、もう話す必要はナイ」


うなずくピター。その時、偶然通りかかったアシスタントを呼び止める。


「リース。君の脚本も使う。準備しとけ」

「マジですか?ピターさん」

「2度言わせるな。早くしろ」


喜び勇んで走り去るリース。


「いよいよ人手不足か?」

「何とでも言え。テリィたんが執筆するのは、良くて1年に1冊だろ?」

「ベストセラーはな」


堰を切ったように語り出すピター。


「我々は、1年で250本を制作スル。以前、リースが描いたゾウリムシの話をサラーはとても評価していた。サラーが殺された今、使える人材は全部使わないとな。もし良かったらテリィたんも使ってやるぞ」

「no thank you。サラーが死んで、マディは降板を免れ、君は昇格した。みんな動機がアルな」

「我々はプロの集団だ。アジェは"誘惑の電気街"の魂だから残しただけだ」


呆れるラギィ。


「どっかで聞いたセリフだわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


帰り道、万世橋の上でラギィのスマホが鳴る。


「ラギィ」

「記録によると、夫は23時半まで、確かにホテルのミニバーを使ってた。ホテルにも確認済み」

「監督やってるイケメン夫はシロか。三角関係が原因じゃなかったのね」


エアリは、スマホしながら捜査本部の階段を駆け降りてる。


「いいえ。未だ三角関係カモょ。あとサラーのカード履歴から"M"って手がかりが浮上。2人が会ってた場所がわかったけど」

「何処?」

「7番街のメイドカフェ。予定だと、多分1時間後に会うコトになってる」


スマホを切って、僕を振り向くラギィ。


「テリィたん。御帰宅しない?」


第3章 可愛いウェイトレスは犯罪に巻き込まれる


「おかえりなさいませ!御主人様、お嬢様!」

「ただいまー!」

「ご注文は?」


翠髪メイドにサラーの画像を示す。


「メイドさん。情報が欲しいの。この人に見覚えはアル?」

「アルわ…でも、何で?」


急に怪訝な顔になる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翠髪メイドは、大泣きに泣いている。


「死んだなんてウソよ。信じられないわ」

「残念だけどリアルなの」

「不公平だわ!こんなの不公平過ぎる。私は、どうすれば良いの?」


余りの大泣きに社員が飛んで来るが、ラギィがバッジを見せて追い払う。


「サラーとは親しかったの?」

「いいえ。全然知らないわ」

「え?」


僕とラギィは、顔を見合わせる。


「じゃ何でそんなに泣いているの?」

「だって、彼女は約束してくれたの。私の脚本を読んで、気に入ったら仕事を紹介スルって」

「彼女はココで誰と会ってたの?」


ラギィは懸命に聞き出そうとスルが、翠髪メイドは大泣きして全く取り合わないw


「どうでも良いじゃない。彼女は死んだの。私は、チャンスを失ったのよ!」


すると、ラギィが僕をチラ見。慌てて首を横に振ると何でょ?!と目から殺人光線をホトバシらせるw


気の乗らない話を切り出す。


「こうしよう。君が知ってるコトを話し、捜査に協力してくれたら"地下鉄戦隊メトロキャプテン"の作者である僕が脚本を読み、気に入ったら仕事を紹介しよう」

「あ。貴方は…あの国民的SF作家のテリィたんね?マジに私の脚本、読んでくれるの?私の目を見て。約束して」

「マジだ」


本人の目を見てウソをつく。神田明神ょ許し給へ。


「サラーは、いつも男と会っていたわ。なんか怪しい感じの男だった。そこの席ょ。Cの4番」

「相手の男の特徴、プリーズ」

「今、御帰宅して来た、あの御主人様がソックリ…あら、本人だわw」


黒の革ジャンを着た男が入って来る。一般人(パンピー)だw


「テリィたん、私の脚本は?」

「終わったら取りに来るよ。約束だ」

「あぁ神様!」


涙ながらに微笑む翠髪メイド。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


C4テーブルは、メイドの動線からは、かなーりハズれた、絡める可能性が皆無のいわゆる流罪席だw


「私はサラーの大の親友ょ」

「そうか。金を払いに来たンだな?」

「あら。何のお金かしら?」


ラギィが聞き返すと、男は怒り立つ。


「おい!俺は頼まれた仕事はしたぞ。金を払うのは当然だろう!」

「サラーは、貴方にどんな仕事を頼んだの?」

「関係ねぇだろう。アンタ、誰だ?」


スゴむ男。眉間にシワを寄せ、ガンを飛ばすw


万世橋(アキバポリス)ょ。サラーは、殺された。だから、関係があるの。貴方は誰?」

「ジョニ・ダムズと申します!探偵です。サラーは、顧客でした。殺されたって何ゴトでしょう?」

「意味は明らかでしょ?」


探偵は、声がひっくり返ってるw


「そう。貴方は、夫の不倫調査で雇われたのね?」

「え。あの監督、不倫してたンすか?夫じゃなくて、母親のグリア・チェスの身元調査でした」

「母親か!やっぱり遺伝性疾患に拠る、極秘の臓器移植の件だな?不治の病界隈?」


妄想的中に勢いづく僕だったが…


「ソレは存じませんが、でも、わかったコトがあります。グリアは、サラーのモノホンの母親じゃなかった」

「やったー!ニセ母だ、まさに昼メロ的な展開。後は記憶喪失が欲しいな」

「テリィたん、黙って」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「サラーのニセ母についての資料か?」

「YES。グリア・チェスは3年前、サラーの前に突然姿を現し、自分が母だと名乗った。サラーは、当然怪しんでグリアの身元調査を始めたワケょ」

「そりゃそーだ。で、グリアは、どんな恐ろしい計画を立ててた?サラーのクローン人間を量産してゼロ・インパクトを起こし、人類を群体から…」


ラギィに遮られる。


「お金が目当てだった」

「…お金?」

「YES。グリアは結婚詐欺師だった。過去に何度も夫を騙しては財産を騙し取ってる。最近は保険金詐欺も手掛けてる」


やれやれ。だから、リアルは嫌いだょ。


「OK。で、彼女は今どこ?」

「捜索中。タワマンのドアマンが今朝スーツケースを持って家を出るトコロを目撃してる。サラーは、グリアの素顔を知り、事実を問いただした。そして、グリアは口封じのためにサラーを殺した…」

「そして、グリアは僕達の前で悲しみに沈む母親を演じた後、アキバから逃げ出したワケか。ヤラレタ」


その時、エレベーターの扉が開き、この暑いのにネッカチーフに黒サングラスの女が連行されて来る。


「神田リバー水上空港でプーケット行きの飛行艇に乗り込もうとしてた人がいたわ」

「だって!秋葉原にいると、サラーを思い出すのょ。娘が死んだと言う事実から逃れたかった。だから、この街を出る決心をしたワケ」

「グリア。ソレを高飛びと言うのょ」


サングラスを取るグリア。全く悪びれない偽母。


「否定しないわ。私は…罪深い女」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室。ネッカチーフとサングラスを取ると、派手な化粧女が現れる。


「貴女は、別名シャリ・セラズ。かなり忙しいキャリアの持ち主ね」

「次元難民の極貧生活から抜け出し、大金持ちになった。しかし、ただ1つ問題が残った。全て自分の金じゃなかったんだ」

「渋谷で詐欺。池袋で横領。五反田で偽装同性婚」


鼻で笑うグリア…いや、セラズかw


「全部誤解だった。そして、私は全て償ったわ」

「その後、貴方がターゲットにしたのは、世界的ヲタク富豪コンス・プレデ氏。彼の後はエルネ・クルス氏だった」

「2人とも君に一言アルそうだ。金返せって」


シレッとした顔で反論するセラズ。


「2人とは結婚してたから、私のお金ょ。だって、私にはソレだけの価値がアルから」

「化粧品のコマーシャル?で、そのお金も使い切ったから、次のターゲットとしてサラーを見つけたワケね」

「サラーが里子だと知って、リサーチして消息不明の母親のフリをしてアキバに現れた」


結婚詐欺師としての場慣れ感がハンパない。


「確かにサラーは、私のコトを母親だと思っていた。でも、私はサラーを殺してないわ。だって、サラーのコトは好きだったモノ」

「ヤメて。だのに、母親だと偽ってダマしたのでしょ?貴女には、殺人の立派な動機がある」

「動機?」


初めて怪訝な顔をスル結婚詐欺師。まぁ結婚自体が詐欺みたいなモノではアルが…


「サラーは、生前遺言で貴女に3000万円を残そうとしてた」

「え。3000万円?あぁ優しい娘だったのね」

「君の娘じゃないだろ?」


すかさず突っ込む。


「そして、貴女はサラーから騙してたコトを問い詰められた。だから、サラーが遺言を描き替える前に殺す必要があった」

「ナイス妄想。でも、残念だけど私は殺してナイ。調べルンだったら"あの男"を調べた方が早いと思うけど」

「"あの男"とは?」


セラズは、切り札を切る。


「サラーにアーサー・ランダムの2カラットのダイヤのイヤリングを送った男がいる」

「その男の名前は?」

「聞いてないけど、多分サラーとその男は、最近別れたばかりみたいょ」


いつの間にかドヤ顔になってる結婚詐欺師。


「そんな曖昧な話、信じられると思う?」

「でも、リアルょ」

「とにかく!貴女はウソつきのプロだから」


しかし、セラズは余裕綽々だ。


「とにかく!サラーが死んだ夜、私は殺害現場にはいなかった。自分の時間を有効に使ってたわ」

「ボランティアとか?」

「まぁ、近いわね。寄付ょ」


納得の回答だ。


「スロット」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


引き続き捜査本部。


「確かに、犯行時間中、セラズはスロット屋の防犯カメラにバッチリ写ってた。加えて、スタジヲに来たと言う証拠は無いわ」

「セラズは犯人じゃナイってコトか」

「どーやら違うみたい。サラーの部屋でセラズが言ってたイヤリングが見つかったわ」


ヲタッキーズのマリレが小さなケースを開ける。


「わぁ!素晴らしいな!」

「コレは100万円はスルわねぇ」

「え。こんなイヤリングが100万円もスルの?」


ドン引くエアリにラギィがささやく。


「ルイナはダイヤが大好きょ」

「カードが添えられてる…"君への思いは永遠だ"だって。臭いセリフだな」

「夫のカード履歴も調べたけど、彼が送ってないコトは確認済みょ」


マリレが口を挟む。考え込むラギィ。


「じゃセラズが言ってた通り、サラーは不倫してたのかしら」

「筋は通るな。サラーは夫と別居中だし」

「仕事で疲れて帰宅しても、タワマンで1人寂しく寝るだけ。一方、いつしか彼女は、謎の男に癒しを求めるようになる…」


妄想スタート!ラギィがシンクロw


「でも、夫とやり直したくなって、愛人のマディをドラマから降板させる…」

「"謎の男"とも別れないと!」

「でも"謎の男"とは別れたくナイ…」


呆れて見ているヲタッキーズ。


「何?テリィたん。いつもなら、このやりとりはミユリ姉様とでしょ?なのに今回はラギィと息がピッタリ?リハでもした?」

「ほらほらヲタッキーズ。バカ言ってないで、このイヤリングはアーサー・ランダムの東秋葉原店で買ってる。誰が買ったかを調べて」

「ROG」


エアリの鼻先でパタンと小箱を閉めるマリレ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


市場時代から、アキバは夜が早かったが"秋葉原マンハッタン"が不夜城となり、眠らない街となる。


その谷間にある万世橋(アキバポリス)も眠らない。


「グリアは完全にシロだった。ナイター馬券のバーでバーテンダーが23時15分に目撃してるわ」

「サラーがグリアに騙されたのもワカルな。母親がいなくて、若手脚本家の養成にも熱心…彼女はアキバに家族を求めていたんだ」

「テリィたんにしては、随分と現実的な妄想ね」


マジで驚いてるラギィ。捜査本部のホワイトボードの前で悩んでたらヲタッキーズが帰って来る。


「ラギィ警部にテリィたん(呼ぶ順が逆だw)!アーサー・ランダムの東秋葉原店に行って来た。イヤリングを買ったのは誰だと思う?このリストを見て」

「え。誰だょ?…ランス・ヘイス?!マジかょ?」

「マジょ。あと、ランスのカード履歴を見たら、別の発見もあった。事件後にタクシーでスタジヲに戻ってる」


エアリに続いてマリレ。


「私達が聞き込みした時は、18時には帰ったとか言ってたのに…結局その後スタジヲに戻って実際に帰ったのは20時頃ってワケ」

「ランスは、十分にサラーを殺せるじゃナイの!今すぐ連行して!」

「ソレが、ラギィ。ランスは家にはいないし、スマホにも出ないのょ」


嫌な予感がスル。スマホを抜く。


「さっき、ミユリさんがスタジヲでランスと話し込んでたな…あ。スピア?ミユリさんは?」

「…」

「どうしたの?姉様は?」


みんなの視線が僕に集まる。


「タイヘンだ。殺人犯はミユリさんと一緒だ!」


第4章 ラストショー


「ミユリ姉様に限って心配はナイわ。秋葉原最強のスーパーヒロインなんですモノ」

「まぁな。でも…」

「この秘密を知ってしまった以上、生かしておくわけにはいかない。覚悟してもらおう、ムーンライトセレナーダー」


ランスの住まいは"秋葉原マンハッタン"でも最高峰のタワマン。ドアの外まで聞こえるランスの声w


「ランス、お願い。考え直して!」


ミユリさんの…金切り声?よほどのピンチなのか?荒々しくドアを(ラギィが)蹴破り、突入スル僕達。


「キャー!」


ムーンライトセレナーダーの首筋に、ラッパ型に開いた音波銃の銃口をピタリと当てたランスがいるw


「ヤメろ!」

「ランス!音波銃を捨てて両手を挙げなさい!」

「待て待て待て!おい、一体何ゴトだ?」


戸惑い顔のランスからミユリさん…いや、ムーンライトセレナーダーを抱き寄せて(かば)う。ところが…


「テリィ様、何しに来たの?」

「スーパーヒロインのピンチを救いに来たのさ」

「テリィ様、アレは音波銃型のオモチャです。シャボン玉しか撃てません」


ランスが引き金を引くと…ラッパ型の銃口から色とりどりのシャボン玉がワーッと噴き出すw


「どーゆーコト?」

「テリィ様。コレは、かつて私達が主演したミュージカルの1シーンの再現なのです」

「その通りだ。ミユーリと久しぶりに会ったので、セリフを忘れてないか、互いに確認していたのだ」


両手を挙げて応えるランス。僕は…テレ隠しw


「音波銃はオモチャだが…斧はモノホンだろ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


とりあえず、取調室に"任意同行"を求める。


「ランスさん。貴方は、事件の夜の行動について、ヲタッキーズの2人にウソの供述をしましたね?」

「真実を知りたいのか?」

「ええ。歌ってちょうだい」


すると、ランスは大袈裟な仕草で怒鳴る。


「だったら真実を教えてやろう!」

「大岡越前?とにかく、事件の夜、貴方はスタジヲに戻ったでしょ?ナゼ戻ったのかを説明して」

「…同僚と話をスルためだ」


急に慎重になるランス。


「同僚?貴方はサラーから、こう伝えたんじゃないの?夫とやり直すコトにした、と」

「おいおいおい。何んでソンなコトを言われなくちゃイカンのだ?」

「ソレは、君がサラーにフラれたからさ」


120%のウンザリ顔になるランス。


「警察は、ソンな勘違いをしてるのか。サラーと私が交際してたとでも?誤った先入観で、またも無実の市民に冤罪を着せようとしている!」

「貴方は、サラーに好意を抱き、高価なイヤリングをプレゼントした。とっくにワカッテルのょ」

「ソレは…私が"誘惑の電気街"を降板スルために送ったモノだ」


"誘惑の電気街"を降板スル?


「どーして降板スルの?」

「コエン兄弟から出演の依頼が来たんだ。"水戸黄門【月面編】"の主役を演じるコトになった。賞が確実に狙える本編(映画)だ」

「水戸黄門は月まで行くの?…じゃなかった、えっと、あの、事件の夜、なぜスタジヲに戻ったの?」


明らかに動揺してるラギィ。まさか月面黄門とは…


「サラーに直接お礼を言うために戻った。エージェントを通じてサラーが降板を許可してくれたと聞いたからな。ただ、後で秘密保持契約を結ぶコトになるから、警察(アンタら)にも映画出演の話は黙っていた」

「お礼ならスマホで良くない?」

「気持ちを直接伝えたかったんだ」


無理もナイw


「…ホントに御礼を言っただけ?」

「YES。ただ、あの夜、サラーは何かの脚本を読んでて心ココに在らズだった。しかも、とても怒っていたょ。理由を聞いたら、ある人に裏切られたと言っていた」

「ある人?誰?」


首を横に振るランス。


「最初は、勝手に番組を降板スル私のコトだと思ったが"その人の裏の顔が見えた"と話してた」

「"その人"の名前は?」

「ワカラナイ。とにかく、私は私の降板の件をサラーが考え直すとマズいから、サッサとスタジヲを後にしたワケだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


真夜中のサラーのオフィスに取って返す。乱雑なデスクの書類の山から1枚のペーパーを摘むラギィ。


「"誘惑の電気街"に係る合意書だわ。ランス・ヘイスのサインがアル。サラーは、確かにランス降板の合意書にサインしてる」

「ウソじゃなかったか」

「こりゃ…ミユリさんに殺されるな」


やれやれ。決死の救出劇のハズが…凶


「きっと心配してくれて感謝してるわよ。いつだって、乙女は王子様に救い出してもらいたいモノ」

「甘いな。ムーンライトセレナーダーの淡い夢をブチ壊したンだぞ。どうなるかわかってる?恐ろしい報復が待っている」

「…とにかく!サラーは、誰かの裏の顔が見えたと言ったのでしょ?誰のコトかしら」


脳内を怒れるミユリさんが支配し、頭が働かないw


「ソレは悪の女幹部よりタチの悪い女に違いナイ。ムーンライトセレナーダーって、元は"地下鉄戦隊メトロキャプテン"の敵組織の女幹部だったンだぜ?」

「そーなの?まぁソンなコトより、サラーは、グリアのウソには、とっくに気づいてたンでしょ?夫のコトはどーかしら」

「うーんランスと話した頃には、とっくに夫とやり直す意思を固めてたと思うけど」


男の性か、自然と夫の弁護に回る自分が情けない。


「仮に、やり直そうと思っていたとしても、夫を疑っていた可能性は残るわ」

「確かにソレもアルけど、夫にはアリバイがアル。全員そうだ。全員アリバイがアル」

「でも、アリバイがない人がいるハズょ。ソレを見つけないと」


カフェインが切れて頭に(もや)。腕時計を見る。


「寝ながら考えよう…えっ?一緒には寝ないょ。全くイヤラシイんだから」


瞬間ウレしそうに僕を見上げたラギィだったが、視線をズラす。立ち去る僕を粘っこい視線で追う。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「ただいまー」

「おかえり。ミユリ姉様のデートを台無しにしたんだって?」

「おいおい。アレはデートだったのか?危険を顧みズに助けようとしただけだ。少しぐらいは感謝してもらえナイかな」


カウンターの中で肩をスボめるミユリさん。彼女は、御屋敷(メイドバー)のメイド長だ…僕はオーナーだけどw


「とにかく!謝罪のプレゼントを選んでおきましたので御覧になってください。47ページです。わかりやすく折り目をつけておきました」

「ロングの正統派メイド服か…僕的に需要はナイょミユリさん」

「はい、存じてます。あと、靴もバッグもお願いします…ところで、この本は?」


カウンターに積まれた本を手にスル。


「ソレは、脚本家を夢見るウェイトレス女子が描いた作品さ。約束したから読まなきゃいけない」

「新手のナンパ?…でも、キャラは立ってるし、筋書きも面白いわ。ちょっちエッチだし」

「あら、姉様。ウェイトレスは強敵ょ。テリィたんの大好物だから」


にっこり微笑み合う僕の大好き女子達。


「OK。翠髪ウェイトレスに伝えておくょ」

「いけません。テリィ様が読むってお約束したのでしょ?はい、しっかりお読みください」

「読むさ。でも、先ずは事件を片付けてからさ」


カウンターの中と外に別れて、ミユリさんとスピアは、細い肩を震わせ、クスクスと笑う。 


「またまた、お得意の先延ばしだわ」

「あのさ。違うょ、も少しで謎が解けそうナンだ」

「あのぉランスが犯人じゃナイってコトは、ハッキリしていますょね?」


ミユリさんの念推し。うなずかざるを得ない。


「じゃその謎ってどんなコトでしょう?」

「サラーは、ある人に裏切られたと言ってたンだ。で、きっとソレは犯人のコトだね」

「でも、裏切りナンて昼メロの世界じゃ名刺交換みたいなモンょ誰でもあり得る。言っておくけど"誘惑の電気街"は、一般人(パンピー)の汚さとか裏切りとか、ムキ出しの野望がゴチャ混ぜになった坩堝(るつぼ)ナンだからね!」


ごもっとも。スピアは僕の理想の元カノNo.1だ。因みに僕の元カノ会の会長(自称w)も務めてくれてる。


「で、スピア。その中でも最も計算高く、あくどいのは誰かを教えてくれナイか?」

「ソレをパパパッと妄想しちゃうのが、私の理想の元カレ様なんだけど?」

「わかったょ。とりあえず、先にウェイトレスの原稿を読ませてくれ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


スタジヲ。直前の脚本変更で現場は大混乱だw


「突然、警官役ナンて…契約はどうなってる?」

「おーい!カメラテスト!」

「ちょっと!台本の読み合わせ、お願い。急いで!」


ラギィと阿鼻叫喚の現場に足を踏み入れる。


「テリィたん、行くわょ」

「待てょ。僕が初めて描いた昼メロなんだから」

「ソレより逮捕しなきゃ」


先を急ぐ"新橋鮫(ラギィ)"。まぁ警官だからなw


「ダメダメダメ。いよいよ、このシーンで犯人が明かされるんだ。聞いたコトあるだろ?"芝居こそ王を捕らえる最高の舞台だ"…ハムレット」←

「もう犯人はワカッてる。時間の無駄だわ」

「自供スルかもょ?」


天の声が下る。


「スタンバイ!本番入ります」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


スタジヲを見下ろす調整室。正面に陣取るイタリ監督。真後ろに脚本のピターがリースを従えて着席。


「ダメだ。送り返せ!…やぁ警部さん、テリィたん(呼ぶ順が逆w)。どうぞ、中に入って」

「テリィたん、何なの?」

「良いから見てて。本番だぞ」


僕は眼下で始まる本番のセットを指差す。イケメン監督のイタリが僕を振り向く。うなずく僕。


「誰か!マディが良く映るようにドアを閉めてくれナイか?…よしOKだ。スタンバイ。5, 4, 3…2番カメラ!」

「ノックしてょ。着替え中ょ?」

「何度も見て来たカラダだ。そして、楽しませてもらった」


スタジヲで芝居が始まる。マディとランスの絡み。


「テリィたん。何なのコレ?」

「な?グッと昼メロっぽいセリフになったろ?」

「いや、そーじゃなくて…」


お構いナシに芝居は進む。何しろ本番だしw


「ジョセ、何の用?私達の関係なら、もうとっくに…」

「そのコトじゃない。君の論文のコトさ。脚本の若手育成プログラムに応募した、君の論文だ」

「え。結果が出たの?」

「合格すれば、TVの仕事のチャンスが与えられる素晴らしいプログラムだ。だから、君を推薦したのだ」


調整室では、監督のイタリの鋭い指示。


「はい、1番カメラ!」

「…で、私は合格?」

「はい、3番カメラ」


シャープに切り替わる画像。芝居は続く。


「アジェ。実は今朝、コーヒーショップの店員から論文を渡されたンだが、不思議なコトに君の論文とソックリだった」


調整室では、ピターがリースをガン見w


「ソレは、何かの誤解だわ」

「アジェ。君は、他人の論文を自分が描いたと偽り、プログラムに応募したな?残念だが、私は今からプログラムの担当者で電話でこのコトを伝える。因みに(1呼吸置くw)…君はクビだ!」

「カットォ!御苦労さん!良い出来だ」


調整室を支配してた緊張が瞬時に解ける。多くが緊張から解放され笑みを浮かべる中、真っ青なのは…


「あのぉコレ、どーゆーコトですか?昨夜の打ち合わせとは、かなり違いますけど」

「リース。アレからちょっと変更したンだ」

「でも、違和感はなかったハズさ。身に覚えのアル展開だったろ?」


僕は昼メロの出来に満足だが、ラギィは職務執行w


「リース。貴女は、仕事で他の人の脚本も読むコトが多いのね?」

「何でソンなコトを聞くの?」

「本番を見てたろ?物描きなら、物語のシーンが持つ意味を正確に理解スル必要がアルな」


ラギィをお手伝いスル僕。


「確かに他の脚本と似た箇所があったカモしれないわ。でも、事件の夜、私はイベントにいたの。アリバイがアルわ」

「リース、20時以降は誰も貴女を見てナイの…ソレと、犯人はサラーを斧で切りつけ、服や靴に大量の返り血を浴びた。血液ってね、何度洗っても、目に見えなくなっても、検出出来るモノなの。今、令状を取って貴女の自宅を捜索してるわ。だから…貴女が自供スルなら今しかナイ」

「私の自宅を?」


泣きそうな顔になり、唇を噛むリース。今や、調整室の全員が彼女を注目している…逃げ場はナイ。


「私が彼女にどれだけ尽くしたか知らないでしょ!犬の世話をしたり、クリーニングの受け取り、残業もしたし、土日もサラーに仕え、休日もなかった!」


金切り声だ。一斉に全員が視線を落とす。


「そんな毎日の中で、どうやって、いつ脚本を描けと言うの?今日まで、犬のように忠実に働いた。だから、私がプログラムを受けるのは当然よ。ソレを邪魔する理由はナイわ!」


魂の叫び。素晴らしいモノローグに幕を下ろす僕。


「理由はアル。君に才能がナイからだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


手錠をかけられ、連行されて逝くリース。


「盗作を隠すために殺人か。冷酷だな」

「動機としては、普通だったカモ」

「近道で成功しようとして、つまずいた…執筆には近道ナンかナイんだ」


ヲタッキーズのメイド達が合流スル。


「でも、大好きな"潜り酒場(スピークイージー)"への近道なら知ってるわ」

「全ての道は"潜り酒場(スピークイージー)"に通ズ。テリィたんも御帰宅しょ?」

「モチロンさ」


陽気なメイド達と拳をぶつけ合って盛り上がる。僕は、関係者と立ち話をしてるラギィに封筒を持参。


「テリィたん、何?」

「ラギィにプレゼントだ」

「だから、何?」


封筒を渡す。中から写真を出すラギィ。


「"誘惑の電気街"の出演者全員のサイン入りブロマイドだわ!ねぇ何処で手に入れたの?」

「今回、色々と知り合いが増えてさ。で?」

「何?」


僕は、無い目力で答えを迫る。微笑むラギィ。


「…OK。私、9才の時に扁桃腺の手術をしたの。苦しんでいると、母が仕事を休んでくれた。そして、一緒にソファでくっつきながら、TVを見たの。その時に見たのが"誘惑の電気街"だった。だから、今でも、あのドラマを見ると家に帰ったような安心した気持ちになれる…以上ょ笑えば?」

「いや。笑えないさ。僕は毎日、もっと下らない昼メロを見てるからな…でも、今の話は聞けて良かった。や?シン彼のDr.ジョシから電話だぞ。出ろょ」

「…写真をどうもありがとう、テリィたん」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「なぜ、もっと早くに美しいメイド長を、この腕に抱きしめなかったのだろう」

「もう言葉に意味はないわ。唇で語りましょう」

「ただいまー。お?ミユリさん、またセリフの練習か?熱心だな」


僕が御帰宅したら、ミユリさんがランスとハグしてる。昼間も見た光景だ。今さら驚きもしない。


「あ!テリィ様、違うのdeath。2人で、ただ、その、お話しをしてただけで…」

「テリィたん、静かにしろ。本番中だ」

「え。どーゆーコト?」


おいおいおい、ミユリさん!僕と逝うTO(トップヲタク)がいながら!



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"昼メロ"をテーマに、脚本家、そのアシスタント、2番手の脚本家、脚本家に憧れるウェイトレス、昼メロに渦巻く女優、男優、恋仇役、結婚詐欺師、熱烈なファン、その父母、街の探偵、脚本家殺しを追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。


さらに、今回は初めてヒロインの浮気な素顔をサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、インバウンドのお陰ですっかり国際都市となった秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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