第4話 ジキルとハイド
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―数日前―
クロノ「(母さんの体に母さんの記憶を移すことは失敗できない。なんども繰り返し実験しておかなければ…。)」
クロノは、母の体に母の記憶を移すための力の使い方を模索していました。
記憶碑から記憶を引き出すことは使命として受け継がれており、そのやり方も習わずともできるようになるのですが、記憶碑にはもっと色々な利用方法があるとクロノは考えていました。
その一つが記憶を移すことであり、それができなければ母は蘇らない。
そのためクロノは記憶を移す実験にほとんどの時間を費やしていました。
フォイ「失礼します。社長、犯罪者の用意ができました。」
MMCの幹部であり、技術部門の責任者であるフォイが、扉をノックしてからクロノの部屋へと入ってきました。
クロノ「あぁ、ありがとう。今回はどんなやつなんだい?」
フォイ「12番街のスラムで快楽殺人を繰り返していた畜生です。アノスが拘束してカプセルに入れています。」
クロノ「そうか。じゃあこないだの7番街の轢き逃げ犯と入れ替えてみようか。」
フォイ「かしこまりました。手配いたします。」
クロノ「僕も一緒に行くよ。」
そう言ってフォイと共にクロノは研究室へと移動しました。
研究室には人が一人入るサイズのカプセルが数機並べられていました。
その内の二機に先ほど話題に上がった犯罪者が入れられていました。
二人はカプセルから噴出されるガスによって眠らされており意識がありませんでした。
クロノがカプセルの中心にある一際大きなカプセルに入りました。
クロノ「始めてくれ。」
クロノがそう言うと、フォイが制御端末を操作し始めました。
クロノは自身に宿る原初の記憶碑の力を引き出し、二人の記憶をすべて抜き出しました。
そしてカプセル同士を繋ぐコードを通して二人の記憶が入れ替わっていきました。
片方の男性の器にもう片方の男性の記憶が、お互いに入り込んでいきました。
クロノは脳が焼き切れそうな激しい痛みをカプセルから排出されるガスで緩和していました。
それでもなお激痛がクロノを襲います。
フォイが何度も装置を止めようかと葛藤している内に、記憶を移し終えたクロノがカプセルから排出されました。
クロノ「…フォイ、確認…してくれ……。」
フォイ「…かしこまりました。」
制御盤を操作し、片方の男の睡眠ガスを抜きました。
フォイ「ハイド、気分はどうですか?」
フォイはジキルの体に尋ねました。
ハイド「あぁ、悪くないな。これで俺はこいつとして生きていけるんだろ?」
フォイ「そうなりますね。ですが、我々の監視の元、定期的なメンテナンスが必要になりますのでお忘れなく。」
ハイド「しばらくは殺しはなしになりそうだなぁ…。何度でも協力してやるからまた殺させてくれよぉ。」
クロノ「それは成果次第だな…。僕は君の殺人になんて興味はないけど、僕にとって良い結果がでないのなら用はないからね。」
ハイド「いいぜぇ。とことん協力してやるよ。これからもよろしくな、社長さん。」
今まで何度か実験していましたが、今回やっと、クロノによる記憶の入れ替えがうまくいったのでした。
ですがまだ成功と断定するには早計であるとクロノは思っていました。
記憶の混濁がないか長期的に確認する必要がありました。
どの道母の記憶もまだ集まっていませんでした。
クロノはハイドとは長い付き合いになることを予感し、同時にハイドだけではデータが少な過ぎるためもっと事例を増やす必要があると考えていました。
そしてジキルの記憶を持ったハイドの体はカプセルに入れたまま、記憶の混濁のみを調査しました。
ある程度、混濁がないと判断した後、記憶の複製の実験を兼ねてハイドの犯行に関する記憶のみを複製してハイドの体に移植しました。他の実験体にも犯罪の記憶を移植していましたが、ハイドの体にハイドの記憶が一番適合していました。
結局ジキルとハイドの体は継続的に実験を行い、その過程で利用していた小犯罪者にハイドの記憶を移植して警察に放り出すことにしたのでした。