第1話 探偵、イヴ
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「待てこのやろーーーーーーー!」
長い黒髪を激しく揺らしながら走る女性が、慌てて駆けていくフードで顔を隠した男性を追っていました。
その女性の名は「イヴ」
高層ビルが立ち並び、夜はネオンで明るく照らされ、眠ることがない国として知られているアルカディアで探偵業を営む女性でした。
イヴ「あんたが犯人だってことはわかってんだから!待ちなさいよ!!!」
犯人と思しき男性「証拠でも持ってこいってんだ馬鹿野郎!」
イヴ「そんなもんあったら今頃警察に突き出しとるわーーーーーーーー」
そういってイヴが犯人と思しき男性に飛び掛かり、二人は地面にぶつかって静止しました。
イヴ「御用改めじゃーい!」
そう言って高らかに笑うイヴの手に手錠がかけられました。
イオス「君がね。暴行罪の現行犯逮捕だね。」
コートを羽織った刑事らしき男がイヴに手錠をかけていました。
イヴ「こいつ!こいつが犯人なんだって!」
イオス「君の力は知っている。間違いなんだろうけど、ここは法治国家で君も彼も法の下に平等だ。何度も証拠を辿ってからの逮捕だと言ってるだろう。」
イヴ「ちんたらやってると逃げられんだろ!」
イオス「君が先走って逃がしたことはいくつもあったね。」
二人のやりとりを横目に、犯人が恐る恐るその場を離れようとしていました。
テス「逃がさんぞ。」
先ほどからイオスの傍にいた凛々しい女性が犯人を踏みつけた上で手錠をかけました。
テス「イオス貴様はイヴに気を取られ過ぎだ。」
イオス「申し訳ありません、テス長官」
イヴ「なんで長官がこんなとこにいんのよ?」
イヴはとても嫌そうな顔でテスを見ていました。
テス「貴様に用があってきたのだ。気になることができてな。貴様の力を借りたいのだ。」
イヴ「ならこれ早く外してよ。」
テス「罪には罰が必要だろう?貴様の罰は、何にしようか。ふふふ」
テスは恍惚とした表情を浮かべ、イヴを見ていました。
イヴ「…だからこいつ嫌いなのよ……。」
イオス「テス長官、この者にはまた奉仕活動をさせておきます。まずは長官の御用をお済ませください。」
テス「そうだな。こいつを借りていく。ご苦労、イオス警部。」
イオス「はっ!光栄であります!」
そしてテスはぶつぶつと文句を垂れるイヴを無視し続けて警察署の取調室まで向かっていた。
テス「この男が最近起こっていた連続殺人の犯人だと自首してきたんだ。」
テスが、取調室で尋問を受けている男を顎で指し、イヴに伝えました。
イヴ「早期解決おめでとー」
テス「我々の捜査結果で上がってきた犯人とは明らかに別人なんだ。だが、犯行の一部始終の証言は合っている。犯人しか知り得ない情報を、だ。」
イヴ「また…記憶の入れ替えが疑われてるってことだね…。」
テス「そうだ。アカシックレコードを使える人間は限られている。イヴ、貴様でないことはわかっている。であれば犯人の目星はつくだろう?」
イヴ「クロノだって言いたいんだよね…。」
テス「そうだ。彼はアカシックレコードの力を使ってMMCを立ち上げた。今や大企業となって財閥を築くほどに成長している。そんな彼が罪人の手助けをする理由はなんだ?貴様には心当たりがあるのではないか?」
イヴ「…ないよ……。私にも…わからない……。」
テス「…そうか。どのみちこの件は立証できない。我々は動けんのだ。そこで貴様に協力を要請したい。アカシックレコードを使える、貴様にな。」
イヴ「その言い方は…いや……。」
テス「そうだったな、すまなかった。」
イヴとクロノは原初の記憶碑の現代のアーカイバーであり、この世界で記憶碑の力を使える唯一の双子でした。
二人は代々アーカイバーを務めてきた家計の末裔であり、長い歴史の中でもアーカイバーとしての資質を持った当代が二人、それも双子として生まれることは初めてのことでした。
二人の性格は正反対でした。
イヴは天真爛漫ではあるが、使命に関しては保守的で、原初の記憶碑を今まで通りにしておくことを良しとしていました。
クロノは冷静沈着ではあるが、使命に関しては革新的で、原初の記憶碑を使って、より人々の暮らしを豊かにしたいと考えていました。
二人が成人し、先代からアーカイバーとしての使命を引き継ぐ時、先代、二人の母は命を落としていました。
アーカイバーは原初の記憶碑を使うために常人とは比べ物にならない情報を処理する能力を持っています。それは本来人間に耐えられるのものではなく、当代のアーカイバーは加護ともいえる不思議な力によってその負荷から守られていました。
アーカイバーの資質を持つものは、18歳になった瞬間その負荷がかかり始めます。
双子はどちらもアーカイバーとしての資質がありました。
そしてその力も強大でした。
二人の母のアーカイバーとしての力も強大でしたが、結果的に母は、持てる全ての加護を二人に与え、自らが生きていくだけの加護すら残さず、その強大な負荷に耐えられずに命を落としてしまったのでした。
その時の記憶は双子に深い傷を残しました。
目、鼻、口、耳からとめどなく血を流しながら、優しい笑顔で二人を包み込み、その命を極限まで絞りだし、二人に加護を与えた母の姿が脳裏から離れなくなってしまいました。
その日からクロノは少しずつ変わっていきました。
原初の記憶碑の力を使って、記憶を商業利用するといって会社起こしたのです。
イヴはクロノを止めようとしました。
結果的に、父は失踪し、クロノはMMCを立ち上げて出ていき、イヴは一人になりました。
イブは何度もクロノに会いに行きましたが、クロノがイヴに会うことはありませんでした。
そしてクロノは原初の記憶碑をアカシックレコードと呼び、商業利用を始めたのでした。