断罪からの婚約破棄を懇願する令嬢の話
ここは、学園の講堂、王太子でもあり、生徒会長でもあるギルバートが、終業式の後、急遽、集会を呼びかけた。
全員参加し、何事かと疑問に思うが・・・王太子の背後に、ピンクブロンドの男爵令嬢、聖女の資格を持つサリアがいた。
まさか、婚約破棄か?と皆の頭に浮かんだ。
「皆の者、良く参加してくれた・・・これより、断罪を始める!パーマス侯爵令嬢、前へ来い」
「王太子殿下、畏まりましたわ」
・・・フフフ、婚約者なのに、名前で呼んでくれないのね。その調子よ。
私は侯爵令嬢、クリスチーネ、王太子の婚約者、半年前に、前世を思い出した。
ここは、ゲームの世界、私は日本人だった。
・・・フフフフフ、断罪が始まり、その後、婚約破棄、
その直後に・・・学校の校長をしているイケオジの王弟陛下、32歳か、それとも、外国の王子、褐色のズルベスタン、
もしかして、巻き毛の義弟のダグラス?・・・近衛騎士団長の息子、マッシュ、
宰相の息子、オルト・・はいいわ。彼は勉強ができるだけ、つまらないわ。
誰が出てくるのかしら、楽しみだわ。
ゲームのクリスチーネは、本当に残忍で、心の冷たい人であったの。
使用人をこき使い。義妹を、勉強と称して、間違えたら、ムチを使いイジメル・・・数えられないほど、あるわ。
だから、私は、目覚めてから、皆に、優しくしたの。
義妹には、
「リリー、今日は、お勉強はお休みよ。お話しよう。好きな人はいるの?」
「へ、義姉様・・・困ります。勉強をしなくては!」
「フフフ、詰め込み教育は体に毒よ。学校だけで充分じゃない」
そして、使用人たちには、
「貴方たちは働き過ぎよ。週に2日、お休みをあげます」
「「「そ、そんな」」」
「私たち、何か悪い事をしましたか?」
「何を言っているのかしら、私の命令よ」
・・・使用人たちは、怯えていたのね。しきりに遠慮したわ。
無理もない。クリスチーネは、心根がとても残酷な人だったわ。
月に、1日しかお休みをあげなかったの。
しかも、女神教会に礼拝に行くためと称して、皆にかろうじて休みをあげていたの。
そしたら、
男爵令嬢の聖女、サリアがしきりに、カラんできた。
私のお茶会に乱入しようと騒動を起こしたり。
自分のお茶会に招待しようともした。
低位の男爵の礼法と上位貴族の礼法は違うわ。
そんなことも分からないお花畑の男爵令嬢のピンク頭、
勿論、都合によりと拒否したわ。
「あのね。私は侯爵令嬢なの。礼儀をわきまえて下さい!」
「クリスチーネ様!お話をさせて下さい!」
「あら、私を名前で呼ぶ許可を出しましたか?」
フフフフフ、そして、王太子は、聖女といい仲になり。私に難癖をつけて、婚約破棄をするわね。
「・・・義妹の虐待に近い放置、使用人に対する非道、そして、何よりも、聖女に対する非礼の数々、パーマス侯爵令嬢・・・クリスチーネ、そういないか?」
私は、カテーシを優雅に決めて、ニッコリ微笑んで答えた。
「全て、事実無根です。義妹には話し相手になり。使用人には休みをあげ。聖女様は、男爵令嬢です。
招待状を送ってもいないのに、お茶会に来るなんて、そちらが礼を失しているかと・・」
・・・そうよ。ここで、攻略対象者、出て来なさい。どの子が、ヒーローなの?
「そうか・・・罪を認めないか?
サリア嬢は、男爵令嬢であって、男爵令嬢ではない。男爵令嬢出身の聖女だ。聖女、孤児出身でも、聖女の託宣を受けたのなら、聖女として扱わなければならない。
私の姉が、招待状もなく、お茶会に来ても、皆は席を用意するだろう?
それと同じだ。聖女は、王族に準じる扱いだ。
聖女が招待もしていないのに、お茶会に来たら、席を用意しなければならない。それは緊急の用事だ。
君の変わりすぎた行動に対して、調査を依頼したのだ。
それを知らないお前は、誰だ!」
・・・へ、何を言っているの?
「義妹は、平民出身だ。だから、勉学、マナーがいささか遅れている。だから、クリス・・は、間違えたら、優しく、紙のムチで頭を叩く。
そうすると、ゲーム感覚で覚えやすくなるからだと、君は一生懸命考えていたのではないか?」
・・・紙のムチ?
「それに、クリスは、貧窮貴族の子女を好んで雇っていた。彼女らは、給金のほとんどを実家に送っている。
その彼女らに、週に2日も休ませたら、その日は、侯爵邸の賄いは食べられない。給金が減る。
クリスは、月に1日だけは、女神教会詣での公休で休ませていた。
その日は、食事代も出るし、給金が出るように手配していたのに・・・」
・・・そうだったの?クリスチーネは残酷な悪役令嬢ではなかったの?
「取り調べろ。この女の背後を探れ。拷問の使用も陛下から許可を受けている。
この女は、クリスと入れ替わった魔族のスパイかもしれない」
「ちょっと、待って、私は転生者・・・私は」
「引き立てろ!」
「「「御意」」」
「待って、婚約破棄をしてもらわなければ、ヒーローが登場するフラグが立たない!婚約破棄をして下さい!」
「何を言っている。クリスは最愛の令嬢、お前は、クリスではないであろう。クリスが受けた苦しみの10倍の苦痛を味合わせてやる!」
ヒーローは誰も現われなかった。
その後、クリスチーネは、病死と発表された。
また、王太子の新たな婚約者捜しの公報が出され、各家は躍起になった。
最後までお読み頂き有難うございました。