第三話
次の日は学校もいかず、連絡もしなかった。
スマホに何件も連絡が入っていたが全部無視して過ごしたのだった。
夕方になってインターホンが鳴った。
無視しているとドンドン、ドンドンとうるさくドアを殴りつけてきた。
昨日の男達だろうか?
「おい、開けろ!いるんだろ?分かってるんだぞ!」
ドスの聞いた声が近所の人にも聞こえているのだろう。
ヒソヒソとは話声が聞こえる。
仕方なくドアを開けると目の前には昨日の男達二人とメガネをかけた真
面目そうな男が立っていた。
だが、多分…普通の人ではないだろう。
「騒がせてしまってすまないね。中、入ってもいいかな?」
「…」
紳士的に言ってはいるが、後ろにいる男達が普通じゃない為か、怖くて
何も言えないでいた。
黙っているのを肯定と捉えたのかそのまま押し込まれるように入ってき
た。
「昨日聞いたと思うが…ちょっと顔を見せてくれるかな?」
「えっ…」
俯く彰の顎を掴むと無理矢理自分の方を向かせた。
左右にしてじっくりと眺めるとやっと放した。
「う〜ん、並くらいか…」
一体何を言っているのだろう…彰には分からない事が恐怖でしかない。
「脱がせろ…」
「へい」
たった一言言われた言葉に横にいた男達が立ち上がった。
「なっ…何をッ…」
逃げようとしたが、腕を捕まえられると無理矢理服を剥ぎ取られる。
パンツ一枚になるとメガネの男はじっと眺めてくる。
「な、なんなんですか!」
「痩せすぎだな…まぁ、だが…そっちに売りさせてから臓器を貰っても
悪くはないだろ。連れて行け!」
「おい、自分で服を着ろ。ここから出るんだよっ、さっさとしろ!」
乱暴に言われ、腕を離されると突き飛ばされた。
軽く頭を打つつけ、額を抑えながら脱ぎ捨てられた服を着直す。
このままついて行ってもきっと、いい事なんて何もない。
ならいっそ……
「おい、行くぞ?」
男の声に咄嗟にキッチンの方へと走った。
流しにあった包丁を取ると目の前に出す。
「おい、一丁前に抵抗すんのか?」
「いかない…僕はお前らなんかについて行かない…」
「おいおい、我儘は借金返してから言えよっ!」
「借金なんて知らない!僕は何もしてないし、借りてさえ…いない」
静かになったところにインターホンが再び鳴り響いてきた。
誰も出ない。
メガネの男が呆れるように男に命令するのを聞きながら彰は包丁を
自分の首に当てた。
「動くな!動いたら死んでやるからなっ…」
手が自然と震え出す。
両手でしっかり握ると力を込める。
首筋にチカっとした痛みが走る。
自分の人生くらい自分で決めたい。
親の勝手で苦しんだ分、自分の力で抜け出すと誓ったのに…
これで終わりなんて…なんで産まれてきたんだろう。
カチャッ。
「こんにちわ〜伊波くんいますか〜?」
いきなり玄関のドアが開いて入ってきた若い女性の声に全員の視線が
集まった。
そこにはクラスで見た顔があった。
「大西…玲那…?」
一瞬視線を外したのが間違いだった。
男の手が腕を掴むと一気に包丁を取り落としてしまった。
押さえつけられると床に頭部をぶつけられ軽く目眩を起こした。
「手を焼かせやがって。こいつどうします?」
「そうだね〜、後悔するまで痛い目に遭ってもらうのがいいかね〜」
「あの〜、ちょっといいですか?貴方達ここで何をしているんですか?」
能天気な声に男達は視線を向けた。
「お嬢さん、これも仕事なんだよ。彼はもう俺らのモノになったんだよ?
借金返せなくてね〜困ったもんだよ」
「でも〜それって彼の借金じゃないでしょ?彼ってそんな余裕なお金の使
い方してないですよね?」
「そんな事はどうでもいいんんだよ?借用書に書かれた名前がこいつだか
ら、返すのは当然だろ?」
「なら〜それ、私が払います。それならいいでしょ?」
いきなりの言葉に一瞬止まった。
「お嬢さん、一体何を言ってるんだ?4千万だぞ?払えるのか?」
「4千万ですね?では、小切手でいいですか?」
横から出てきた女性が小切手に金額を書き入れると差し出してきた。
そして一緒に名刺も差し出してきた。
「私、こういう者です。弁護士をしてます、受け取り書、書いてもらえ
ますよね?」
出来る女性の目だった。
男達はメガネの男性を戸惑いながら見ると、すぐに契約は成立し彰は解
放されたのだった。