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犬になった日  作者: 秋元智也
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第十三話

湯を貯めると身体を洗い、中へと浸かった。


彰は自分の匂いが大西と同じものだと気付くと少し照れ臭くなる。


「僕は…こんな感情持っちゃいけないんだ…」


自分は買われたんだ。

そんな事一番彰自身がわかっている。

それでも…辛い…。


辞めたいけど、言えない。


ゆっくりと湯に浸かるとさっき殴られた場所が痛みだす。

身体中痛い。


だからと言って玲那からもらったお金を渡せば穏便に済んだのか?

それは違う気がする。


あれは自分のであって、自分のじゃない。

そんな事の為に使いたくはなかったからだ。


今日は顔面も殴られた。

いつもは身体だけだったからバレなかったが、今日は顔を見られれば

バレてしまう。


どうしたらいいのだろう。


「先に食べててくれないかな〜」

「何を先に食べるの?」


いきなり声が聞こえてきて驚いた。

風呂のドアが開くとタオル一枚だけしか巻いていない姿で入ってき

たからだった。


「ぅわぁっ!!」


大声を出すと後ろに向く。


「どうしたの?一緒に入っちゃおうっかな〜って思ったんだけど?」

「どう言う神経してるんだよっ…言ってくれればすぐに出るのに…」

「違う違う、一緒に入ろって言ってるんだよ?ここ、広いでしょ?」


一体何を言っているのか!

混乱した彰には分からない。


慌てて出ようにも湯から出れば全部丸見えなのだ。

じっと見られている気配に出ることもできない。


「ちゃんとタオル巻いてるから平気だよ?」

「そう言う問題じゃ………」


向き直って言おうとすると、ハラっとタオルを解いた。


「ね?タオルだけでしょ?」

「○△♯×!」


言葉にならない言葉が出る。


「何よ〜慌てちゃって〜可愛い〜」


玲那は楽しそうに言うと、彰の身体をまじまじと見つめる。

細いとは思っていたが、予想以上にガリガリだった。

それに、身体中に無数の青痣。

今日は口元も切れて血が滲んでいる。


さっき帰ってきた時には気づかなかった。


「どうしたの!これって…」

「なっ…なんでもない!」


慌てる様に出て行くのを見送るとキッチンへと戻る。

玲那が風呂から出た時には食事を済ませたのか部屋に閉じこもって

しまっていた。


主人としてほって置けないと思うと部屋に堂々と侵入した。

布団に包まる様に横になっていた。


「彰くん、ちゃんと説明してくれる?」

「…」

「私は君の主人でしょ?言えない事なの?」

「…言いたくない」

「命令よ、話しなさい!話せないなら今すぐベランダにでなさい!」


もちろん冗談のつもりだった。

が、のっそりと起きるとベランダにでて蹲った。


「ちょっと、なんでよ?事情を言うだけでしょ?」

「…」


ただ黙っているだけで何もしなかった。


玲那も少しムキになるとそのまま鍵を閉めた。


「主人の言うこと聞かないなら、そこで反省してなさい!」

「…」


こんな事言いたかったわけじゃないのにと思うと蘭子に電話した。


「聞いてよ〜今日ね、風呂中に入ったんだけどマジで逃げるって

 酷くない?聞いてる?蘭ちゃーん…」

『うん、聞こえてるよ?あのさ〜玲那って伊波の事どう思ってる

 の?テニス部入るくらいだし女目当てのやつだって思ってたん 

 だけどさ〜あれはちょっとね…』

「何よ?他の女に鼻の下で伸ばしてたって言うの?」

『違うわよ…動画あげるから見てみれば分かるわ』


そう言うと今日の部活後の映像を送った。

殴られても、部活をやめろと言われてもただじっと耐える姿に、

言葉を失った。


「何よ、これ!」

『なんでここまでされて辞めないのかしら?』

「それは…私が入れって言ったからだ…」

『ん?なに〜?』

「私がテニス部に入れって言ったの…だって青春すら楽しめな

 そうだったんだもん」


辞めたいなんて、言えない原因を作ったのが玲那自身と分かる

とすぐに電話を切ってベランダにでた。


勢いよく開けると外はまだ冷たかった。


「何やってるのよ!早く入りなさいよ!」

「…」

「主人の命令よ!早く入りなさい。そうね、熱いコーヒーが飲

 みたいわ」


一緒に飲もうと言いづらくて命令してみる。

のっそりと彰が入ってくるとさっき風呂に入ったばかりなのに

身体が冷え切っていた。

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