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犬になった日  作者: 秋元智也
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第十一話

部活の間中ずっと素振りだけだった。

一年はコートにすら入れて貰えない。


素振りが終わったら周りに飛んでいったボール拾いだ。


「やってらんねーよな〜」

「でもよ〜先輩と仲良くなればお得じゃね?」

「だよな〜、それに女子の部員ともお近づきになれる場が多いって言うし

 やめらんねーよな?」


部員達の声が聞こえてくる。

狙いは金持ちの繋がりと、大西玲那が狙いの生徒が多いらしい。


身が硬いと言われる彼女を落とした男はいないらしい。

そもそも、理想が高いのだろう。


あれだけ容姿が良ければ、理想だって高くなる。

そう思うと、自分は恵まれているのだろう。

そんな彼女と一緒に住んでいて、しかも着替えやその他の世話もして

いるのだ。

普通なら考えられない。


年頃の娘に男を近づけさせるなんて…

いや、彰は男とすら思われていないのだろう。


部活を終えて着替えると出て行く。


「おい、待てよっ!」

「僕ですか?」

「お前しかいねーだろ?曽根崎と仲がいいんだって?だったらわかる

 よな?」

「なんでしょうか?」


何を言いたいか分からず首を傾げる。

2年の先輩だが、言いたいことは言ってくれないと分からない。

目の前に差し出された手には何もない。


「あれだよ。わかるだろ?今から遊びに行くんだよ」

「そうですか?…お疲れ様です」

「待てって、何帰ろうとしてんだよ?」


引き止められると肩を掴まれた。

力を込めたせいか痛い。


「あの…意味がわからないんですが…」

「金だよ。どーせはした金だろ?俺らが遊ぶ分出せって言ってんだよ!」


はっきり言われてやっと理解した。

が、彰には自分の使えるお金などなかった。

もちろん学校には小銭は持っていっているがそれ以外は財布すら持ってい

ない。


「持ってないので、自分の分は自分で払ってください」

「おいおい、マジで言ってんのか?」


いくら脅されても、ないものは無い。


いきなり鞄を持っていかれると中身をひっくり返された。

もちろん勉強道具しかない。教科書を踏みつけるとお金を探している様だ

った。

が、あるのは小銭入れのみ。

しかもジュース代くらいしかない。


「明日はちゃんと持って来いよ?」

「どうしてですか?僕には余分な遊び金はないので失礼します」

「こいつっ…生意気だぞ?」

「だなっ…」


一瞬言葉が切れると腹に痛みが走った。

言い終わる前に蹴り上げられ、床に転げ回った。


他にも一年が出てくると、目を逸らす様に逃げていく。

誰も助けようとはしない。


痛みに耐えると今度は頭上から鞄が落ちてきた。


「いっ………っ……」


「鈍臭い奴〜自分で転んでやんの〜」

「情けねーの」


そう言って帰っていった。

何をされても反撃しない。言い返さない。

これが一番楽だった。

中学の時も貧乏人と言われいじめにあった。


高校に入って、新たに歩むはずがこんな惨めな思いをする事になるとは…


「情けない…な……」

「大丈夫か?」

「…?」


さっきのを見ていたのか話しかけてくる人がいるとは驚いた。

それは小金井だった。


「平気…よくあることだから」

「平気じゃねーだろ?やられっぱなしでいいのかよ?」

「仕方ないよ…お金ないんてないし…絡まれない方法が…わからないんだ」

「お前……」


初めに比べると小金井のあたりが弱くなった気がする。

普通に話してくれる様になったからだった。



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