第壱話 いつもの日常
平和な女子中学生を演じてきた。
いや、ほんとうにそうだったのかもしれないけど、
私はフツウじゃないってことくらい、とうの昔に分かっていた。
これは、私の表の姿とでも言おうか…
いつもの日々。
食パンをかじりつつ、テレビを見、
髪をとかして登校。
毎日毎日…
私はただの中学生の少女です。
頭はいい方だけど、容姿がね…まぁ、気にしないでください。
お兄ちゃんは一流の高校で、今まで一緒に頑張ってきた。
そう「色んなこと」を二人で。
いつもどおりの登校。
こんな私に彼氏なんていう大層なもんは一度も居たことが無いから、
1人で進み行くこの行為に対して寂しさなど感じず生きてきたから別にいいんだけど。
学校に行って、ベンキョーして、休み時間には友達とペチャクチャしゃべって、そうじして、
部活やって、帰宅。
スタートからゴールまでほとんどすべて同じコース。繰り返される時間。
そんなある日、転校生がやってきた。
お父さんの転勤とかで。
「この時期で転校?」めずらしいな、なんて思ってた。
黒板の前に男子転校生が立った。
「坂下 シンジです。お父さんの急な引越しできました。よろしくお願いします」
うわッメチャ好みだよ…顔ヤバ!
そりゃあ、私だって健康な若い乙女よ。惹かれたり、憧れたりするわ!
ああ、残念!遠い席だよ!ちぇっ
たまにはこういうフツウっぽい感じもあったりしていいわよね…
どうせ叶わないって、あきらめてるけどね。
あ、そういうところが彼氏いないというところに繋がってくるのかなぁ…
キーンコーン…
もう清掃の時間か…
ロッカーから箒を手に取る。
「ねぇ、柊さん?」
語尾上げ気味で聞かれた。
「はい…っっっっ!!」
後ろ振り返って驚いた!
だってアコガレの
「シンジ…くんだよね?」
だったから…。
「そ。覚えてくれた?」
「そりゃあね」かっかっこういいし!
「ふーん。柊さんってモデルとかやってんの?」
「ううん」
「へぇ可愛いから…違うんだ?」
!!!最近の男っつーもんはこうやって口説くんだ!
と、わなに分かりながらもハマって行く私。
ドッドッドッドッドッ 心臓が行進を始めた。
「シンジ君の方が、格好言いと思う」
われながら恥ずいことを言った!
「くすっ」 なぬ?
「恥ずかしいこというね」私だって思ったが、最初に言ったのはキミではなかろうか?
髪を振り上げ、笑顔で言ったシンジくんのヒトコト
「じゃあさ、今度デート行かない?」
ドク…ン…ドク…ン 心臓が後退をはじめた。
目が虚ろ
私の目はそんな感じになっていたと思う。
やっぱムリ。シンジなんて所詮、所詮…
「ナルシよぅ!!」
こんな毎日。
本当はとっても大切だって、分かってる。
転校生が来て、ナルシでいきなり失恋しても、
これは幸せだなんていえないけれど、平和なこの日常が大切だって、
あの行為と比べれば…
断然ね。
「柊さん、掃除サボリだって先生呼んでるよ!」
今はそれどころじゃないかもしれないけれど…
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