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ー0ー


 家に帰ってる途中、交差点を歩いていたらトラックに突っ込まれました。


 これが流行りのトラック転生か……あれ、むしろ最近擦られ過ぎて遅れてるよな、とかバカなことを考えていたら、突如ブレーカーが落ちるように意識がなくなった。





 目を開けたら、拘束具に雁字搦めにされて真っ白いメカメカしい部屋にいたんですが……





【検体番号:β-012】

 学生時代は至って真面目、授業態度は可も不可もない平凡な学生。卒業後、一般企業へ就職し営業マンとして活躍。帰宅途中にトラックとの事故により右腕と左足が千切れる。救急搬送され医師が千切れた部位を近づけたところ、神経同士が突如接合する。数秒足らずで傷跡すらない状態へ。担当した医師が上司に相談した結果、私たちの元にも情報が届き急遽、ここへ収容された。その後、長い間昏睡状態になっていたため、覚醒を促すと称してありとあらゆる薬品や劇薬、汚染物質を投与するが全く反応なく、四肢を切り落としても数時間で再生。その時のバイタルサインは常に正常値を示していた。






 数日経ちました、俺は今日も元気に過ごしております。

 ただ数時間ごとにお医者さんが毒々しい薬品を注入しては意味深に頷いて去っていくんですが、怖いので説明してくれませんかね。


 そんなよくわからん時間を過ごしていると、ものすごいボインボインな白衣を着たお医者さんがやってきて話しかけてきた。


 今の状況はわかるかね?

 どこか痛みは?

 手足の痺れは?

 何か体の変化は?

 食欲は?

 気分は?


 って感じですっごい質問攻めしてくるんですけど。


 俺はまだMを極めていない初心者なので、質問攻めじゃ興奮できませんが……


 強いて言えばこのメカメカしい拘束具外してくれませんか?

 って言ったらボインちゃんが苦笑して帰っちゃいました。


 え、えぇ……人の話聞いてました?






 ー主任ー


 苛立たしい……

 私は額に手を置いて一枚の紙を見ていた。それは前任者がずっと隠していた報告資料の一部。ここへ来て数十年。よくここまで隠し通せたと褒めてやりたいが、それ以上に殺意が湧く。

「ふぅ……」

 これに関わったやつらも大方前任者が飛んだ後、逃げたのか始末されているんだろう。今となってとは私の手足になっている部下も当然この内容を知らない。このことは上層部も気づいていないだろう。知っていたらこんな代物を私の手の範囲に置くはずもない。

 書いてある内容を要約すれば、検体番号β-012という存在が何百年も眠っていることだ。前任者はそいつにありとあらゆる毒物や劇物を投与。人体実験を施し、それの産物でできた物を自分の手柄として改竄したということ。わざわざ書類に残っていること自体、作為的な物が見え隠れするがどうでもいい。私は私のことを成すだけ。


 その書類を見つけたのがきっかけになったのか、それとも……まぁいい。

 数週間後、信頼できる部下からβ-012が目を覚ました報告をもらった。直ちにその隔離室へ向かう。私が気にもせず中へ入ろうとしたら部下に止められてしまった。

 部下は顔を真っ白にして「ガラス越しに見てください! いきなり暴れる可能性もあります!」と嗜められた。「研究者の性として、研究対象はこの目で見ないとわからないだろ?」と言えば「…………護衛として数名の人間も同行させていただきます」と部下が言うので鷹揚に頷いてから入室した。

 そうして中へ入り、休眠状態以外のβ-012を見ると、とても前任者にズタボロになるまで遊び尽くされた様子もなくピンピンしている。

 以前は人間だったという内容だったが、やはり微塵たりともそんな雰囲気はない。****の影響で変異したのか、あるいは……元からなのか。


 β-012は最初からこちらへ気づいていたようで、こちらを無機質を相手にするかのように、逆に私を実験動物のような目で見ていた。その視線の圧に後ろにいる護衛の奴らがたじろぐのがわかる。

 私は嗤いながら検体に話しかけた。


「体はどうかね? いや、失礼初めましてだったね。君は今までずっと休眠状態だったからね、ついつい挨拶を忘れてしまったよ。私はここの主任のものだ」



「GAAAAaaaAAA!!」



 まるで獣のように、いや、訂正。獣が吠えた。


 あまりにも大きく吠えるので私は片耳を塞ぎながらさらに質問をしてみる。

 しかし相変わらず、どの質問にも吠えてくるので、半ば諦めながら最後に何かして欲しいことがないか聞いた。


「kou……ソウグ……を外せ」


 今までと同じように獣のように吠えるのかと見ていると、聞き取りづらいが人の言葉で話し始め、最後には流暢になった。


 少し驚きながらβ-012を見れば、β-012も私の目をジッと見ていた。私はもしお前が暴れないと言うのであれば検討しよう、と言うと後ろにいた護衛の奴らがうるさく騒ぎはじめた。

 彼らを無視してβ-012を見ていると、


 フンッ


 とこちらを小馬鹿にするように鼻息を浴びせてきた。私はそれに苦笑をして、後で外すから大人しく待ってろと言って隔離室を出た。


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