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〜出会いと別れの物語を〜
「必ず帰ってくるから、お利口に待ってるのよ」
母は私の頭を撫でながらそう言った。
「うん、わかった!」
まだ幼く何も分かってはいなかった私はその言葉の意味をそのまま受け取り木の小さな家で1人待ち続けた。
何日も、何ヶ月も、何年も待ち続けていたのに、母は帰ってこなかった。いやもしかしたら帰ってきていたのかもしれない。どちらにしろ、今の私には何も見ることが出来ない。腐敗してろくに動かすことの出来なくなった足を引きずり、私は家の中を這う。私は今日、初めて母との約束を破った。
「ごめんなさいお母さん。私悪い子だね」
小さく掠れた声で私は囁くと、力がすくすくと抜けていきいつのまにか玄関を出てすぐの木の近くで倒れていた。最後に目を閉じた時、翠色の光が入り込んできたような気がした。
「あれ…私、まだ生きてる…?」
次に目が覚めた時、私の腐りきっていた足は綺麗な肌色に染まっていた。それでいて、足から根や葉が少し生えているようにも見えた。
「よかった…これでまたお母さんを待てる」
私は体が以前とは違うものになっているのに母にまた会えることを考えるとそれはあまりに小さなことに思えた。
それからは私はこの奇妙な現象を誰かに伝えることが出来るように、紙に記すことにした。




