The End of ordinary days
正午のチャイムが校舎全体に響き渡る。食堂へ向かう者、隣のクラスの友人と食事をする者。
皆それぞれのペースで昼という時間を楽しんでいた。
その中に一人、チャイムに気づいていないのか教室の隅でボヤっと外を眺めている者が居た。東ミナミである。
そんな彼女に歩み寄る者が一人。
「東さん、お昼一緒に食べましょう!」
クセの有る髪の毛をポニーテールに束ねた眼鏡の少女が水色の包みを持ちながら明るく声をかけた。
「えっと・・・ごめん、誰だっけ」
「福原です・・・もう、一緒にお昼食べるのコレで三日目ですよ・・・・・・」
ミナミのリアクションに、流石にそれはないでしょうと言わんばかりに福原はガックリと肩を落とし項垂れた。
「そう、だっけ?」
「東さんってひょっとして若年性アルツハイマーですか?」
「いや、そういう診断はされなかったけど・・・・・・」
ばつが悪そうにミナミは視線をそらした。
変に言い訳しても墓穴を掘りそうだ。そう考えたミナミは当たり障りの無い返答をした。
「何というか、顔と名前覚えるのが苦手でさ」
本当は少し理由が違うのだがまぁいいか。作り笑顔も交えてミナミは話題の転換を図る。
「そうなんですか?それは失礼しました。
そうですよね、そういう人も居ます!私がいけなかった!”まだ”三日しか一緒にお昼食べてないんですもの!」
「いや、別にそこまで・・・・・・」
「では親睦を深めるために今日も一緒にお昼にしましょう!」
「・・・・・・はい」
やりづらい。そう思ったが口には出さなかった。
全く異なる性格の福原に若干圧されながら、今日も一緒に昼食をとる事となった。
ミナミの向かいに座ると福原は自分の水色の包みを解き、平型の弁当箱と子袋のごま塩と箸を取り出し蓋を開けた。
弁当の蓋を開けると日の丸弁当が現れた。
昨日も一昨日もこの日の丸弁当を見た記憶がある。
ミナミの中で
福原 よく話しかけてくる 日の丸弁当 やりづらい人
と、顔以外の情報で福原が記憶されていく。
「東さんの今日のお昼は何ですか?」
「さぁ?何だろう」
ミナミは鞄からチェック柄の包みを取り出すと解き、二段重ねのお弁当箱と箸を取り出し蓋を開けた。
「ミニハンバーグ!美味しそうですね~」
まるで欲しい玩具を目の前にした子供のように眼を輝かせながら福原は歓喜した。
「・・・・・・ひとつ食べる?」
「良いんですか!」
よほどその提案が嬉しかったのかミナミの眼前、二センチメートル近くまで身を乗り出した。
流石に三日連続の日の丸弁当を見せられてはおかずの一つも上げたくなるが、ここまでのリアクションをミナミは予想していなかった。
「ど、どうぞ・・・・・・」
「んではではお言葉に甘えて~」
たじろぐミナミを気にも留めず、福原は両手を合わせ軽く一礼するとミニハンバーグをひとつ口へと運んだ。
この人はひょっとして私からおかずを貰うために毎日寄ってきているのではないだろうか?
ミナミの中でよくない考えが生まれたが、彼女はそれをすぐに頭の隅へと追いやった。
この人はそんな人じゃない、ただ友達になりたくて寄ってきただけだ。そう自分に言い聞かせ、先ほどの考えを封印する。
「ん~美味しい~。いいな東さんは~こんなに美味しいお弁当いつも作ってもらえて」
「そうかな?」
「そうですよ~」
ミニハンバーグを噛みしめながら福原は自分の日の丸弁当から一口食べるとごま塩を振りかけ始めた。
「話し変わりますけど聞きました?他の地域で起きた事件」
「知らない」
「えーっとですね」
ミナミの素っ気無い態度を気にする素振りも無く、ごま塩を振り掛けるのを中断し手帳を取り出すと、メモを取ったページを開き事件の内容を話し始めた。
「先ず最初に起きたのは五日前、一高の地域で。一年生の斉藤ミユキさんが。二件目と三件目は三高の地域で四日前と二日前に。こちらも一年の山吉ユウコさんと笹尾リカさんが被害にあってます。今のところ死者は出ていませんがどれも全員意識不明の重体です」
「・・・やけに詳しいね」
「将来の夢は”探偵”ですから」
まるでアニメキャラの決めポーズのように、メガネのブリッジを中指で軽く持ち上げると、福原は不敵に笑って見せた。
「そう、なんだ・・・」
福原の大胆告白に若干引きつつもミナミは確信した。この子なら間違いなく進路希望に”探偵”と書くだろうと。
「あとコレ未発表ですけど、なんでも被害者は全員大やけどを負ってるとか」
「やけど?」
「油でもかけられたんでしょうかね?詳しくは分かりませんが首から上は丸焦げみたいです」
「丸焦げ・・・・・・」
口に運ぼうと箸で掴んでいたミニハンバーグの焦げ目が、目に留まる。
人間の身体がこうなったのかと想像が働いたためか、箸が少し止まったのだ。
「先生方はこれから緊急の会議みたいです」
「ふーん。じゃあ午後の授業は無しになるかな?」
グロテスクな妄想を頭から払拭するとミナミは食事を再開し、ミニハンバーグを口へと運んだ。
「可能性は十分あると思いますよ。この辺の学校は小中高、軒並み強制下校でしょうね~」
福原は手帳をしまうと再び残りのごま塩を振りかけ始めた。ごま塩を振りながら福原はミナミに問いかけた。
「ところで東さん?」
「何?」
「もう一口もらえませんかね?」
福原の日の丸弁当の一角だけゴマが振っていない箇所が出来上がっていた。白飯とミニハンバーグを楽しむ為だろう。
それを見たミナミに先ほど封印したものが舞い戻った。そんなミナミの返答は当然こうである。
「ダメ」
福原はガックリと肩を落とし項垂れ、残りのゴマを振っていないエリアに渋々かけた。
―― 同日 十四時頃 ――
二高学区の駅前商店街の端に並ぶ、廃墟や空きばかりになった雑居ビル郡。
その中に、周りの雰囲気に似つかわしくない小奇麗な看板の掲げられたビルが一つ。
そのビルへミナミはためらい無く入って行った。
看板には『東整形外科』と書かれていた。そう、ミナミの実家である。
曇りガラスのドアを開けると、十人程が入れる待合室と、奥へと続く廊下、無人の受付が目に入ってくる。
受付のすぐ横、従業員通用口と書かれた扉を開けると、事務机が向かい合って並んで事務所となっていた。
事務所へ入ると、ミナミは一番奥、一つだけ向きの違う書類の山となった事務机に向かって挨拶をした。
「ただいま、院長」
「お帰り~」
黒い長髪を後ろで無造作に束ねた、身長百九十センチにギリギリ届かない位の、サングラスをかけた院長と呼ばれる男が、山積みになった書類の向こうからパソコンを打ちながら出迎えた。
「さっき学校から連絡あったよ。高校生活始まったばかりだってのに災難だね~」
「別に。コレで文句言われることなく休めるわけだし、ありがたいありがたい。動画サイトでも見てのんびりしますかね~」
妙なテンションで喜んでみせると、ミナミはそこらに散らばった事務椅子の一つに鞄を投げ、曇りガラスのパーテーションに区切られた、商談用スペースのソファーに横になった。
妙なテンションを疑問に思ったのか、男は問いかけた。
「何か学校であったね?」
「・・・・・・」
「図星か」
数分ほど沈黙状態となり、事務所にはパソコンを打ち込む音だけが響いた。
観念したのか、雰囲気に耐え切れなかったのか、ミナミが先に口を開き静寂を破った。
「有ったには有った。でもそんな大した事じゃない。ちょっと面倒なだけ」
男はパソコンを打つ手を休め、事務机を離れると、ミナミの向かいのソファーへ長い脚を器用に曲げて座り、優しく声をかけた。
「言ってごらんよ。仮にも私は君の保護者だ」
男に諭され、ミナミは渋々事の経緯を話し始めた。
「・・・・・・顔」
「顔?」
「顔の判別が出来ない。それでちょっと面倒があっただけ」
「判別が出来ないってのは具体的はどういう風に?」
「何ていうか・・・・・・全部同じ?に見える。マネキン、マネキンみたいに誰を見ても同じに見えてしまう」
適した表現を探しながら、ミナミは自分に起きている異常を男に伝えた。
「いつから?」
「気づいたのは学校に行くようになってから」
男は胸ポケットからペンを出すと両手に持ち、彼女の前に突き出した。
「これは――」
「六本、左手の二本が手前。もうその検査はいいです。遠近感しか調べられないですよね?それ」
男が言い終わるより早く、ミナミが不機嫌に答えた。
何度目か分からないペンを使った遠近感の検査にうんざりしながらも、しっかりと答えるのは彼女の優しさだろうか。
「うーん」
悩む素振りをしながら、男は胸ポケットにペンをしまうと立ち上がり、分厚い書籍の詰まった本棚へと向かった。
戸を開け、本を一冊抜き取り、頁を探し始めた。
お目当ての頁を見つけると目を通しながら男は問いかけた。
「ちなみに私やスリーの顔は判別できるのかい?」
「判別も何も高身長のグラサン男と、前髪で表情の分からない同居人二人しか居ない状況なんですが」
こんな環境で何を言ってるんだという視線を背中に受けながら、男は本を元あった場所に戻すと、事務所の隅に何故か設置されている、屋外用公衆電話ボックスへと入って行った。
受話器を取ると短縮ダイヤルの”三三三”を押し、二階の部屋へと繋いだ。
「もしもーし。検査してあげて欲しいんだけど、今お願いできるかな?」
『・・・・・・分かった』
「よろしく」
短い電話を終え、電話ボックスから出てくると男は事務机に戻った。
「よし、じゃあスリーに診てもらってきてよ」
そう言うと男は再びパソコンを打ち始めた。
「どっちが医者だか分からないですね」
皮肉たっぷりに言うとミナミは起き上がり事務所奥のドアへと向かって歩き出した。
「医者は私だよ。彼女は助手」
ミナミの皮肉を屁とも思わぬ様子で男は笑いながら言い返した。
「はいはい」
ぶっきらぼうに返事をすると、ミナミは二階へと通ずる階段を目指し奥へと消えていった。
―― 同日 十四時三十分頃 ――
廊下からパタパタと二人分のスリッパの足音が聞こえると、検査衣姿のミナミを連れた、身長百五十センチ程の、前髪で口以外を隠した白衣姿の少女が事務所へと入ってきた。電話でスリーと呼ばれていたのは彼女だ。
スリーはカルテを挟んだバインダーを男に差し出しながら呟くように一言口を開いた。
「検査終了」
受け取ったミナミの診察結果の書かれたカルテに目を通しながら、男はスリーに問いかけた。
「異常なし?」
「無い」
「どこにも?」
「無い」
「となると原因は?」
「分からない」
頭上にハテナマークが乱立して見える程に、とても不思議そうに二人は揃って首をかしげた。
本当にこの人は医者なのだろうか。ミナミは不安になったのか、大事なことを問かけた。
「今更だけどこの擬体大丈夫ですよね?」
ミナミは目の前に居る自分の四肢と眼球に、擬体を取り付けた主治医とその助手に対し、最大級の疑惑の視線を送った。
「大丈夫だよ。この私が作った特注オブ特注の擬体だ、二百年保証をつけてもいい」
男は火消しのつもりだったのだろうが、ミナミの疑惑の視線は全く緩まなかった。
助けを求めて、男はスリーのほうに視線やったが、既にスリーはそこになかった。
巻き込まれる前に逃げ失せたのだろう。
「まぁほら、後遺症の一つかもしれないし?顔をいろいろ見比べていけばそのうち出来るようになっていくと、思うよ?」
「はぁ・・・」
男の苦し紛れの言い分に呆れたのか、ミナミはため息をつくと軽く項垂れた。
「そういう事にしておきます」
諦めよう。医者は神様ではないのだから分からないことも有るだろう。
男に対する疑念は払拭できなかったが、ミナミは自分をなんとか納得させた。
「ありがとう。じゃ検査費用は来月のお小遣いから引いとくからね」
「お金取るんですか!?」
「当然。ここは病院だよ?」
「ケチ!守銭奴!金の亡者!ロンゲ!」
ミナミは思いつく限りの悪口を言うと口を尖らせた。しかし男はヘラヘラと笑ってるだけで、全く気にも留めていなかった。
不機嫌になっているミナミを余所に、男は事務机から立ち上がると、いつもとは違いまじめな雰囲気で話し始めた。
「さてと。じゃあ”ライノ”、初のアルバイトしてもらおうかな?」
男はミナミを”魔術師名”で呼ぶと、ニコニコしながら大き目の茶封筒を書類の山から取り出して、ミナミに見せた。
魔術師名で呼ばれたということは、”裏の仕事”だ。ミナミは男への不満を一旦頭の隅へと追いやり、意識を切り替える。
男は茶封筒を開けると中に入っていた数枚の写真と、顔写真のついた書類を取り出しミナミの傍の事務机に並べた。
「魔術連盟からの依頼だ。内容は『五日前から発生してる連続少女焼身事件の犯人確保』だってさ」
男は事務机に並べた写真をミナミの前に出しながら話を続けた。
「午前中、被害者全員の容態を見てきた。全員が全員、魔術的痕跡の有るやけどだったよ」
「これ、生きてるんですよね?」
写真を見ながらミナミは不安そうに問いかけた。昼に想像したのより、実物はかなり酷いものだった。
「生きてはいる。生きてはね」
男は自分の事務椅子に座りなおすとパソコンを開き、いつもの様に打ち始めた。
「魔術って痕跡残るものなんですか?」
「何にだって痕跡は残るものだよ。特に私はそういうの見分けるのは得意分野だからね」
男は顔をミナミに向けると微笑んだ。サングラスの奥で、男の魔眼が青く輝く。
「それで、犯人が誰なのかとかは分かってるんですか?」
「ぜーんぜん全く」
男は両手のひらを上に向け、肩をすくめ、お手上げのポーズをとると、あっけらかんと答えた。
「その辺も含めてお仕事だから頑張ってね」
「そういうものなんですか?」
「そういうものだよ」
男がそう言うのだからそうなのだろう。自分は仕事に関しては全くの素人だ。口を出せることじゃない。
ミナミは並べられた資料や写真を一通り頭に入れると、正面玄関へと通じるドアへと向かった。
「じゃあ、えっと・・・捜査?行って来ます」
「気をつけてね~」
男は書類の山の向こうから片手を挙げヒラヒラと振って送り出した。
それと同時にスリーがミナミの着替えが入ったカゴを持って事務所に入ってきた。
それを見て、ミナミは自分がまだ検査衣姿だという事を思い出した。
―― 同日 十六時頃 ――
三高地域の駅前交差点。信号待ちをしながら、ミナミは途方に暮れていた。
手当たり次第に人に聞いてみたものの、目撃情報もおろか、何一つ手がかりが得られなかったのだ。
「どうしたものかな~・・・」
ボヤっと空を眺めていると、信号は既に青に変わっており、人波が動き出していた。
どうやって情報を得よう。横断歩道を渡りながら考えていると、ある人物が浮かんだ。
だがその人物を巻き込んでよいものだろうか?ミナミは迷った。だが、このままでは進展が無いと判断したのだろう。
「・・・・・・聞いてみるか」
そう呟くと、ミナミは携帯電話を取り出し、電話帳から昼食時に交換した番号に、繋いだ。
呼び出し音を聞きながら歩いていると、相手が電話に出た。
『はい!どうしました?東さん』
スピーカーから元気よく福原の声が聞こえてきた。
「あの~お昼に言ってた事件のことで聞きたいんだけども、時間ある?」
『ありますあります!東さんの頼みならタイムリープしててでも時間作りますよ~』
「あぁ・・・うん、ありがとう」
相変わらずの福原の勢いに、ミナミはやりづらさを覚えた。
タイムリープまではしなくて良い。そう思ったが口にはしなかった。
慣れよう、この子はこういう人間だ。
『それで今どちらに?』
ミナミは辺りを見渡すと、目標物となりそうな喫茶店を見つけた。
「三高地域の駅近くの喫茶店なんだけど分かる?」
『分かります分かります!そこなら近いんですぐに行きますね!』
「うん、待って――」
『着きました!』
「着きました!」
「うえぇ!?」
携帯電話と後方から、サラウンドに福原の声が聞こえた。
突然の出来事に変な声を出しながら、ミナミは慌てて振り返ると、そこには携帯電話を構えながら福原が笑顔でこちらを見ていた。
『ここのコーヒーはマスターのオリジナルブレンドなんだそうです。美味しいって評判なんですよ~』
「ここのコーヒーはマスターのオリジナルブレンドなんだそうです。美味しいって評判なんですよ~」
「そ、そう、なんだ・・・・」
一体いつの間に背後に来たのだろうか。
「ささ、立ち話もなんですから入りましょう!」
携帯電話をしまうと、戸惑いを隠せないミナミの手を取り福原は喫茶店へと入って行った。
ベルの付いたドアを開け喫茶店へ入ると、女性店員が明るく出迎えた。
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
「はい!」
「ではこちらのお席へどうぞ」
店員に誘導され、窓際の席へと座ると福原はメニューを見ずに注文をした。
「じゃあコーヒー二つで」
「はい。ただいまお持ちしますね」
軽く一礼すると店員は厨房へと向かっていった。
それを見届けると福原は口を開いた。
「連続暴行焼身事件の情報ですよね~何にか気になることでもあったんですか?」
「まぁその、アルバイトでちょっと」
「アルバイトってまさか!探偵補佐ですか!?」
福原はミナミの眼前、二センチメートル近くまで身を乗り出した。
なんとなくこのリアクションを予想していたのか、今回は対応が早い。
ミナミは興奮する福原の両肩を優しく押し、席へと座らせ、話を続けた。
「んまぁ、そんなところ・・・」
「いいなー!私にもその事務所紹介してください!」
「今募集あるのかな?どうなんだろう・・・・」
そもそも探偵事務所ではない。ウチは整形外科だ。
正直に言っても面倒になるので、ミナミは心の中で小さくツッコミを入れた。
「今回の事件情報提供しますんで推薦してください!」
「うんまぁ、聞いてみるよ一応」
「ありがとうございます!えーっと今ある情報は~」
福原は学校で見せたのとは別の、少し大きめの手帳を鞄から取り出すと、事件の最新情報をメモした所を開き、語り始めた。
「被害者は全員同じ中学校出身です。それでもって中学の時は同じグループに属してみたいです。ただ、あまり評判はよくないですね。所謂イジメを行っていたグループみたいで、そうとうヤンチャしてたみたいですね」
福原が一通りメモを読み終えると、二人の席に先ほどの店員が盆を片手に戻ってきた。
「失礼します。コーヒー二つお持ちしました」
「「ありがとうございます」」
「ではごゆっくりどうぞ」
伝票をテーブルの隅に置くと、店員は軽く一礼し、戻っていった。
一旦会話を中断し、二人は出されたコーヒーにミルクと角砂糖を入れ、かき混ぜ始めた。
一口飲むとミナミが話を再開した。
「そうなってくると犯人はそのグループにイジメられていた人物かな?」
「軽く一クラスは居ますね。被害者リスト要ります?」
「一応貰える?」
「はい、どうぞ」
福原被害者リストになっている頁を二枚破るとミナミに差し出した。
「こんなに居るんだ・・・・」
「被害者のほうはまだ回れてないんで今は情報無いです、すいません」
福原は一口コーヒーを口にすると少し首をかしげ、角砂糖を追加した。
甘さが足りなかったのだろう。
「ありがとう。参考になったよ。ところでどうやってこんなに情報集めたの?」
「それは企業秘密です」
福原はニヤリと口元を歪ませ、人差し指を唇の前に立てながら答えた。
「あぁ、そう・・・」
危ない方法で情報を集めているのなら、友人として止めるべきかとも考えたが、言った所でこの子は止まらないだろう。
ミナミは苦笑いするしか出来なかった。
「ちなみにイジメグループのメンバーは後二人。中井カオリと横山レイコの二名です。住所調べてありますけど要ります?」
「要る」
「はいどうぞ」
福原は再び手帳から頁を破りミナミに差し出した。
頁の受け渡しを終えると福原は残ったコーヒーを飲み干し、手帳をしまうと席を立った。
「じゃあ私はイジメグループの被害者に会って来ますね~。何か分かったら明日、お伝えしますね。」
「ありがとう。気をつけてね」
「はい!東さんもお気をつけて!」
そう言うと福原はあっという間に店を出て行った。
残されたミナミは、少しゆっくりとコーヒーを堪能してから伝票を取りレジへと向かった。
「お会計、五百六十円になります」
「え?そんなにします?」
「はい、お連れ様の分と合わせますとそうなります」
やられた・・・あの子は本当にちゃっかりしている。
斯くして、福原はミナミに会計を押し付け、コーヒー代を浮かせる事に成功したのだった。
―― 同日 十六時四十分頃 ――
福原から貰ったメモに従い、中井カオリの住宅の近くまで来ると、沢山の野次馬の人だかり、救急車と消防車が止まっており、とても前に進めない状態になっていた。野次馬の視線の先では住宅が一軒、燃え盛っていた。ミナミは福原から貰ったメモに書かれている簡易地図を見直した。簡易地図に書かれた中井カオリの住宅の位置は、不幸にも、今丁度、燃え盛っている住宅だった。
「参ったな・・・・・・」
野次馬に紛れながら途方にくれていると、頭上から良く通る鳴き声が聞こえた。
「ん?」
声の主の方に視線をやると、そこには『毛量、当社比六十パーセント増し!』の謳い文句が似合う、モップのような黒猫がミナミのことを見下ろしていた。
「・・・今、私のこと呼んだ?」
ミナミの問いに対し、黒猫は軽く頷いて見せた。
言葉が理解できるのかとミナミが驚いていると、黒猫は視線を野次馬の後方へと向け、片前足をその方向へ差し出した。
まるでそっちを見ろといわんばかりに。
黒猫に促され、野次馬の後方に目をやると、電柱の傍らに隠れるように佇む一人の男子学生の姿があった。
燃え盛る中井邸を眺めなら、学生は不気味に笑っていた。
ミナミの直感が告げる。アイツが犯人だと。ミナミは急いで学生の元へと向かった。
「すいません!通ります!すいません!」
野次馬を掻き分け、人だかりを抜けてきたミナミに気が付いたのか、学生は一目散に逃げ出した。
思わずミナミは学生に向かって叫んだ
「待て!」
待てと言われて待つはずがない。逃げていく学生をミナミは全力で追いかけた。
学生は住宅街を右に左に曲がりながら、ミナミの追跡を振り切ろうとする。
逃すまいと、ミナミは曲がり角でも極力速度を落とさないよう、陸上選手のように器用に重心を移動させ、少しずつだが学生との距離をつめていく。
学生は住宅街から商店街の方に進路を変え、更に逃走する。学生の後方、十メートル程までミナミは距離をつめていた。
このまま行けば確実に追いつける。ミナミは確信していた。だが、現実はそう甘くはなかった。
商店街に近づくにつれ、通行人の量が、一人、二人と増えていき、思うように学生との距離がつめられなくなってくる。
学生は、店の外に展示されている商品棚やワゴンを引き倒し、ミナミの進路を妨害し少しずつだが距離はなしていく。
そして洋服店の前に差し掛かった時だった。学生は前にいた通行人を突き飛ばすと、移動式ハンガーラックを倒れた通行人に向かって引き倒した。
ミナミは慌ててハンガーラックを退けると、突き飛ばされた通行人を抱き起こした。
「大丈夫ですか?」
大丈夫だ、と言うが、通行人は手のひらを大きく擦り剥き、流血していた。
視線を商店街の先へとやったが、そこにはもう、学生の姿はなかった。
「やられた・・・・」
―― 同日 十七時四十分頃 ――
パソコンを打つ音だけが事務所に響いている。
ミナミが帰宅してからおよそ三十分が経過しただろうか。
事務机に顎を乗せ、潰れたカエルのような姿勢で、ミナミはずっと不貞腐れていた。
「まぁ一日で事件解決はそうそうないよ」
「・・・・・・うん」
「今日はもう休んで、明日また頑張れば良いさ。お風呂入ってきちゃいなよ」
「・・・・・・うん」
男に促され、ミナミはようやく起き上がると、重い足取りで二階を目指し、事務所の奥のドアから階段へと向かった。
二階に着くと、廊下の真ん中に待ち構えるように、普段着のTシャツ姿のスリーが立っていた。
Tシャツには大きく明朝体で『脱税』と書かれている。彼女はいたって真面目に、この服を選んでいる。スリーという人間はそういう人間なのだ。
「どうしたの?」
「検査する。来て」
それだけ言うと、スリーは自分の研究室へと入って行った。
何か気になることでもあったのだろうか。ミナミは黙ってスリーに続く。
入ると、一般的な診察室のようにベッドと事務机、衣服を入れる籠や、診察器具の乗ったワゴンが目に入ってくる。窓のカーテンが閉まっており、明かりも少なく、全体的に薄暗かった。
「座って」
ベッドを指差し、そこに座るようスリーは促した。事務椅子をミナミの方に転がすと、スリーは器具の乗ったワゴンを事務机の傍へ運び、乗っていた黒い円柱状の検査器具を頭に装着し、ミナミに眼帯を差し出した。
「コレで擬体を隠して」
言われた通り、ミナミが眼帯で右目を隠すと、スリーはミナミの正面に事務椅子を動かし座り、ミナミの頭を両手で掴むと、先ほど頭に装着した器具の反対側をミナミの左目に当てた。
「そのまま真っ直ぐ見て」
ミナミは真っ暗な器具の中を、言われた通りまっすぐに見つめる。
スリーが器具のスイッチを入れた。すると器具の中がゆっくりと明るくなり、青い目が浮かび上がった。
「私の目、見える?」
「うん」
「瞳の奥をよく見て」
ミナミはスリーの目をじっくりと見つめる。
すごくキレイ、透き通った海のような青色だ。そう関心しているミナミに、スリーから指示が飛んだ。
「・・・・・・もっと瞳の奥をよく見て」
ミナミは青い虹彩の中央に有る、深淵な瞳に集中する。
何も起きない。一体何の検査なのだろう。と、思っていると、再びスリーからの指示が飛ぶ。
「もっとよく見て」
ミナミは更に瞳の奥に集中する。ずっと見ていると、引き込まれ、戻って来れなくなりそうだ。
そんな事を考えながら、集中してみていると、瞳の奥にもう一つの目が現れ、ミナミを見つめ返した。
言い知れぬ恐怖を感じ、ミナミは慌ててスリーを振り払い、跳び退いた。押されたスリーが傍にあった診察器具の乗ったワゴンにぶつかり、一緒に床に倒れた。
「ご、ごめん」
「いいよ」
何事もなかったかのように立ち上がると、頭につけていた器具を外し事務机に置いた。
「今の、何?」
「さぁ?私は、あなたが何を見たのかは知らない」
スリーは興味なさそうに答えると、倒れたワゴンを起こし、散らばった器具を乗せると部屋の奥へ運んでいった。
戻ってきたスリーに、ミナミは恐る恐る問いかけた。
「・・・何か、分かった?」
「分かった。あなたの魔眼は”観ようとしていない”。
観るのか観ないのか、ハッキリしない中途半端な状態だから、顔の判別ができないという形で異常が出ている」
「はぁ、えっと・・・・どうすれば?」
「もっと意識して魔眼を使って、完全に開眼すれば良い。」
「どう使えば?」
「自分で考えて」
「・・・・・・やって、みます」
ミナミの返答に満足したのか、スリーは軽く笑うと、手の平を上にして、右手をミナミに差し出した。
「検査費五千円」
「えっ!?」
あの医者にしてこの助手あり。ミナミの出費が、また増えてゆく。
―― 翌日 九時頃 ――
ミナミはいつもよりゆっくりと起床した。昨晩、学校から連絡があり、月曜日まで臨時休校となったのだ。
ゆったりと朝食をとろうとしていると、裏口のインターホンが来客を告げた。
スリーが出迎えると、元気な声が食卓まで響いてきた。
「おはようございまーす!」
福原である。ミナミの優雅な朝食の時間は、はやくも終わりを迎えた。
「お、おはよう」
「あれ?東さん今からご飯ですか?」
スリーが迎え入れると、福原は意外そうにミナミに問いかけた。
ミナミの中で天使と悪魔が論争を始める。悪魔は言った、福原はまた食を集りに来たのだと。天使は言った、たまたま朝食の時間に被ってしまっただけだと。
ミナミは頭の中の天使と悪魔を握りつぶすと、深く考えるのやめた。
「うん、さっき起きたばっかりで」
「それはそれは失礼しました。ささ、お気になさらず食べて食べて」
食卓が賑やかなのに気が付いたのか、男がやってきた。
「おや?お友達?いらっしゃい」
「あ、どうもお邪魔しております~」
「良かったら食べてくかい?」
何故そうなる。ミナミは食べながら、心の中でツッコミを入れた。
「良いんですか!?実は塩握りしか食べてなくて!」
何故、君はいつも白米しか口にしていないんだ。ミナミは心の中で、更にツッコミを入れる。
「どうぞどうぞ~。おーいミサトちゃん、お友達さんの分もご飯用意してあげて~」
男が言い終わる時には既に、スリーが福原の分の味噌汁をよそり終え、ご飯を盛り付けていた。
何故三人家族で四人分の朝食が用意出来るんだ!ミナミの心の中で、ツッコミを入れるのが間に合わなくなってきていた。
「いや~すいませんわざわざ」
ミナミの向かいに座った福原のもとに、スリーが朝食を運んできた。
「ありがとうございます。では、いただきます」
両手をあわせ軽く一礼すると、福原は美味しそうに食べ始めた。
三割ほど食べたあたりで福原が鞄から手帳を取り出し、話し始めた。
「ほほへへふへ、ひほうほははいへんはほ――」
「飲み込んでからにして、聞き取れない」
ミナミに怒られ、味噌汁で流し込むように飲み込むと、福原は再び話し始めた。
「それでですね、昨日の中井邸の火災事件の情報なんですけど。日本の消防は優秀ですね。
アレ程の火災の中からでも救出できたそうですよ。ただ、二階から出火したらしく、逃げ遅れた中井カオリは大やけど、重体だそうです。母親のほうは一階で夕飯を作っていたので怪我はなかったみたいですけど」
「これで四人目・・・・・・」
「残るは横山レイコなんですけど、昨夜から家には戻っていないそうです。どうやら彼氏の家に遊びに行ってそのままかと」
「うーん・・・」
ミナミは悔しそうに唸ると、天井を見上げた。
「どうかしました?」
「昨日ね、中井カオリの家から商店街まで犯人らしき男子学生を追いかけたんだけど、逃げられちゃって・・・」
「そうなんですか!?あっ!でしたら~。良い物有りますよ~」
そう言うと、福原は鞄から大き目の物体を取り出し、ミナミに見せた。
「じゃーん!三中の卒業アルバムでっす~。この中から犯人と思しき生徒を顔で探せば――って、どうしました?」
ミナミはテーブルに突っ伏していた。男は見兼ねて、フォローを入れた。
「ミナミちゃんね~。実は後遺症で顔の判別が出来ないんだ」
「顔の判別?あっ、お昼の時・・・・・・」
福原は、昨日の昼のやり取りを思い出した。
「・・・・・・そういうこと」
ミナミは突っ伏したまま答えた。
「そうとは知らず、すいません」
「いいよ、そっちに非はないもの」
「でも少しは進みましたね!”男子”生徒を虱潰しにあたって行けば犯人に行き着けるんですから!」
ミナミは顔を起こし、驚いた様子で福原を見つめた。
その発想はなかった。ミナミは福原の頭の回転の速さに感心した。
福原は手帳から被害者リストの頁を出すと男子生徒の名前に丸をつけていく。
「そうと決まればゆっくりしてられない!」
残りを勢いよく食べ終えると、福原は手帳と卒業アルバムを鞄へしまい、裏口へと向かった。
「ご馳走様です!では!行ってきます!」
「「「気をつけて~」」」
三人は声を揃えて、福原を送り出した。
「嵐のような子だね~。良いね、若いってのは。良い友達が出来たね」
「まだ慣れないですけどね」
「そうそう、出かける前にコレを授けよう」
男はそう言うと、どこからかアタッシュケースを取り出し、蓋を開け、ミナミの前に差し出した。
「これは?」
アタッシュケースの中には二丁のリボルバー拳銃と、ホルスターが二つ入っていた。
「リボルバー拳銃型の魔武器だよ。好きだろ?こういうの」
「大好きです」
目を輝かせながらミナミは即答した。
何を隠そうミナミは無類な拳銃好きだ。実父がそういったものが好きでそれに影響され、今では動画サイトのお気に入りリストは、銃の紹介や試射動画などで埋まっている程である。
「でも何でいきなりコレを?」
「もしもの場合、流石に素手喧嘩だけじゃ厳しいだろ?まぁ並みの相手ならその擬体で負ける事は先ず無いだろうけどね、念のために用意したんだ。それはね、君を認識し、君の魔力を弾にして撃てる銃だ。他の人じゃ撃てないから安心して」
「魔力を弾にって言いましたけど、どうすればいいんですか?」
「擬体の使い方は教えだろう?空間を掴もうと”思えば”掴める。空間を蹴ろうと”思えば”蹴れる。あれと同じさ。
撃とうと”思って”引き金を引けば撃てる。魔術を使えて当然だと”思えば”魔術は使える。ありえないと思っているうちは魔術は使えない。まぁ、君はもう擬体を使えてるし、すぐ撃てるさ」
男はそう言うと白衣を丸め、鞄を持ち、裏口へと向かった。
「時間が有る時に試し撃ちでもしてみてよ。じゃ私はお仕事に行ってくるね~。今日中には戻ると思うけど戻ってこなかったらちゃんと戸締りしてね~」
「はい。お気をつけて」
「あと、それ。まだ出力とか調整してないから。物に向けて撃っちゃダメだからね。んじゃ、行って来ます」
男はそう言い残し、裏口から出て行った。
男が出て行くと、ミナミは早速ホルスターを両脚太ももに装着し、リボルバーを挿した。
カッコいいな~。でも流石にコレは目立つな・・・そう思っていると、スリーがカードを持って寄ってきた。
腰を下ろし、ホルスターにカードをかざすと、ミナミが制した。
「待った!」
「何?」
「お金取るんなら何もしないで」
「コレ”は”サービス」
そう言うとスリーはニヤリと口元を歪ませ、カードに施した術式を発動させた。
カードから放たれた魔力がホルスターを包み込んだ。
「コレで周りからは見えない」
「・・・ありがとう」
「次からは自分でやるように」
そう言い残すと、スリーはカードを持って食卓を後にした。
スリーの方があの男よりも保護者らしいのではないだろうか。ミナミはスリーに対する認識を改めた。
「さて、私も犯人探しに行きますか」
朝食の食器を片付けると、ミナミは身支度を整え、裏口へと向かった。
―― 同日 二十一時三十分頃 ――
ミナミは帰宅するなり応接用ソファへと突っ伏した。
昨日の現場付近に何か痕跡がないかと慣れぬ魔眼で見て回ったが何も見つからず、ならば最後の一人を警護する方針に転換したが
こちらも行方が分からず空振りに終わったのだった。
しばらくじっとしていたミナミは携帯を取り出し時計を確認した。
一応福原さんにも捜索頼んだけど、この時間だし今日は諦めるかな。起き上がり伸びをすると、いつの間にか傍らにスリーが立っていた。
思わず伸びのまま固まるミナミの前にスリーは白紙を置いた。
「…これは、なんでしょうか?」
恐る恐る訊ねるミナミに一言だけ
「魔眼の練習」
と言い残し、スリーは去っていった。
「練習って…」
ミナミは紙を拾い上げ、光にかざした。
しかし、何かが透けて見えたりはしない。
魔眼なら見えるってこと?
そう考えミナミは目に集中した。ミナミの瞳が、薄くだが青く輝く。
紙面に僅かだが色が浮かび上がる。
ミナミはさらに意識を集中させた。すると若干見え方が変わり、色は何かの形を描いているのが分かった。
”あなたの魔眼は観ようとしていない”
スリーに言われた一言が頭をよぎる。
「見る…見る…見る…」
口に出し、言い聞かせるようにしながらミナミはさらに意識を集中させる。
さらに見え方が変わり、色が文字の羅列であることが分かってきた。だが、まだ何が書かれているかは読めない。
時間を忘れ集中していたミナミの隣で爆音の”交響曲第九”が流れた。
「うえっ!?」
思わず飛び上がり臨戦態勢をとったが、すぐに音源が自身の携帯であることに気がついた。
そういえば渡されたまま弄ってなかった。ミナミが画面を確認するとそれは電話の着信を知らせるものだった。
画面には”福原”の二文字が出ていた。
「もしもし」
『見つけましたよ東さん!横山レイコ!』
「本当に!?場所は?」
『一高地域駅近くのカラオケ店だそうです!』
「わかったすぐに向かうね!」
ミナミは紙を放り出し、勢いよく飛び出していった。
―― 同日 二十三時頃 ――
月や星がきれいに見える程、雲ひとつない夜空。街は寝静まり、外を歩く人はほとんど居なくなっていた。
そんな中、雑居ビルの並ぶ裏路地を、全力で走る少女と、それを追いかける男子学生が居た。
「はぁはぁ・・・・」
「ほ~らどうした~?逃げろ逃げろ~」
少女を追う学生は不気味に笑いながら、右手に火球を作り上げると、前を行く少女に向かって投げた。
投げられた火球は、少女の足元に着弾し、激しく燃え上がる。その衝撃で、少女は軽く吹き飛ばされた。
少女は慌てて立ち上がると、後ろも見ずに再び走り出した。
学生は再び火球を作り、少女に向かって投げた。火球は少女の左肩を掠めると、ビルの壁面に当たり、燃え上がる。
学生は第二、第三と火球を次々作り放ってゆく。
だが、どれも少女には当たらず、辺りを燃やすだった。学生はわざと火球を外し、逃げ惑う少女を見て楽しんでいる。
学生は更に火球を放った。放たれた火球は、少女のすぐ脇を抜け、路地の先にあるゴミ箱にぶつかると、激しく燃え上がった。
燃え上がったゴミ箱に進路を阻まれ、少女はやむなくわき道へと逃げ込んだ。
少女が逃げ込んだ先は、残念なことに袋小路だった。
「そんな・・・・・・」
「ざーんねん。行き止まりだったな~」
学生はヘラヘラ笑いながら右手に再び火球を作り上げると、ゆっくりと少女に歩み寄った。
「お、お金なら返すわ!中学の時の事も謝る!だからお願い!命だけは助けて!」
少女がそう嘆願するが、学生は表情を変えず、更に近づいていく。
「俺が助けてくれと言った時、お前らはどうした?やめなかったよなぁ?」
学生は火球を放った。放たれた火球は少女の二メートル手前で着弾し炸裂した。
吹き飛ばされたアスファルトの破片が少女の腹を直撃した。
「うぐっ!」
痛いみに悶える少女を余所に、学生は再び火球を作り出した。
「痛いよなぁ!?苦しいよなぁ?」
学生は再び火球を放った。火球はビルの壁面に着弾し炸裂する。吹き飛ばされたビルの破片が少女の頭に直撃した。
少女の額から血が流れ落ちる。
「ううっ!」
「痛いよなぁ?怖いよなぁ?でもお前らはやめなかった!
事あるごとに俺から金をむしり!ストレス発散の為に俺を殴った!蹴飛ばした!何回も!何回も!」
学生は火球を辺りに撒くように放ち、破片で少女を甚振っていく。
少女は丸くなり必死になって破片から身を守るが、あちらこちらに生傷が増えていく。
「なんで悪い事してたてめぇが一高で!真面目に勉強してた被害者の俺が!二高に行かなきゃ!ならねぇんだ!!
なんで!なんでだ!お前さえ!お前らさえ居なきゃ!俺は!!」
そう叫ぶ学生の頬には涙が流れていた。いじめられていた時の記憶が、痛みが、悲しみが、憎しみが、恐れが、学生の脳内に溢れかえり、無意識のうちに、泣いていのだ。今にも震えだしそうな脚を必死に立たせ、本音を押し殺すように、一心不乱に火球を放ち続けた。
「もうやめて!!!お願いします!!!!」
少女の悲痛な叫びに驚き、学生の手が止まった。
「どうか・・・・・この通り!」
苦痛な表情を浮かべながら少女は痛みを堪え、必死に身体を動かし両膝を地面に付け、両手を付き、頭を深く下げ土下座した。
学生は戸惑いを見せた。痛みに苦しみながら、必死の思い出許しを請う目の前の少女に、過去の自分が重なって見えていた。
ここでやめるという選択肢が学生にはあった。だが。
「・・・・今更なんだよ」
そう呟くと学生は目元を腕で拭った。
「ん、何でも・・・します。だから――」
「今更になって!遅いんだよ!!!」
学生は火球を作り、大きく振りかぶった。
「良い声で鳴きながら死んじまえ!!!」
無慈悲にも、土下座をしている少女に向けて火球を放った。
だが、火球は少女には届かなかった。学生と少女の間に突如、上空から二メートル四方程のビルの壁面が落下し、火球の射線を遮ったからだ。
「何だ!?」
たじろぐ学生を余所に、落下してきた壁面の影から人影が現れた。東ミナミである。
「よいしょっと。間に合った~」
壁面を軽々と持ち上げ、横に除かし、ミナミは学生と対面した。学生は驚愕の表情を浮かべた。
「お前!あの時の!」
「えーっと・・・あっ、そうだ」
何かを思い出したのか、ミナミは姿勢を正し、学生に向き直ると力強く言い放った。
「大人しく投降しなさい!さもなくば容赦はしません!」
うん、決まった。念願の台詞を決め、ミナミは見えないように小さくガッツポーズした。
「邪魔するな!」
学生は火球を作るとミナミに向けて勢いよく放った。
ミナミは学生が火球を放ちきるより早く、壁面を正面に立て直すと、右脚を少し引き、構えた。
「せーのっ!」
脚に意識を集中させ、鋭い回し蹴りを放った。ミナミの蹴りは壁面を砕き、破片の弾幕を飛ばした。
火球を消し飛ばしながら、数多の破片が学生を襲う。
「うわっ!」
学生は破片を両腕で防いだが、勢いに押され尻餅をついた。
ミナミは再び学生に静かに言い放った。
「最終警告。おとなしく投降しなさい」
「クソっ!」
学生は再び火球を作りミナミに向けて放つと、一目散に逃げ出した。
ミナミは足元に残っていたビルの破片を蹴り上げ、火球を消し飛ばすと、学生の後を追いかけた。
「待て!」
学生は来た道を退きかえすと、角を曲がって来た人物とぶつかった。
「邪魔だ!」
学生はその人物を突き飛ばすと、再び走り始めた。
「うわっとと!何なんですか!もう!」
「すいません!奥に人が居ますんでお願いします!」
「えっ!?東さん!?ちょっとー!何がどうなってるんですかー!」
福原の叫びが、虚しく路地裏に響いた。
不気味なほどに静まり返った大通りを、学生は疾走していた。
後を追うミナミは、通りの静けさに若干の違和感を覚えたが、今は目の前の学生に集中した。ミナミの脳裏に昨日の逃走劇が浮かぶ。
昨日みたいに逃すわけにはいかない。今夜でケリをつける。そう硬く決心すると、ミナミは両脚の擬体に意識を集中させた。
ミナミの周りに銀のコロイドが立ちこめる。
実際にはその場に銀のコロイド等は存在しない。魔力が一時的に、可視出来るほどに高まったからそう見えるのだ。
「・・・行くよ、”私の脚”」
そう呟くと、ミナミは勢いよく地面を蹴った。
ミナミの身体が重力から開放されたように飛び上がり、二十メートル前方を走る学生を軽々と飛び越え、三十メートル先に着地した。
「追いかけっこはもうお仕舞いにしようよ。また手がかりから探すのはごめんなんだ、私」
「何なんだよお前は!何で俺の邪魔をする!」
学生の問いに、ミナミはしっかり向き直ると言い放った。
「私はただの女子高生で、君を確保するのが仕事だからさ」
「ふざけやがって・・・・・・ヒヒヒ、逃げる必要はねぇ、今の俺なら何だって出来る。そうだろう?
てめぇを焼いて!それからアイツを焼けば良いだけの話じゃねぇか!」
学生は叫ぶと、両手に炎を纏った。
ミナミは身構え、目の前の学生に全神経を集中させた。ミナミの瞳が、薄くだが青く輝く。
「燃えろ!」
学生は右手から火球を放った。ミナミの眼は火球の軌道を的確に捉えた。
最低限のステップで火球を避けると、ミナミは学生との距離を縮めるため走り出した。
学生は両手から火球を放ち、接近するミナミを迎撃する。
次々に飛んでくる火球を最低限のステップで左右に避けながらミナミは学生の前方およそ五メートルまで距離を縮めた。
それでも学生は怯まず、火球を放った。その火球を飛び越え、ミナミはそのまま跳び蹴りを狙う。
その時、ミナミの眼が先ほどとは違う学生の動きを捉えた。危機を察知したミナミは咄嗟に空間を掴んだ。ミナミが空間を掴んだ瞬間、学生は自分の足元に火球を放ち、巨大な炎の壁を作り上げた。
ミナミは掴んだ空間を支点に、鉄棒の大車輪のように体を振り、炎に触れる寸前で後方へ跳び退いた。
再び二人の距離が空く。
「そう簡単にはいかないか・・・」
ミナミは悔しそうに呟くと姿勢を起こした。
「なんなんだその動きは!ウザってぇな!」
学生は苛立ちを露わにする。
「あぁそうか・・・避けれねぇ程デケェのをくれてやれば良いいだけじゃねぇか」
学生はそう呟くと先ほどの数倍の大きさの火球を作り上げた。
「コレならどうだ!」
放たれた大火球をミナミは側転で回避した。間髪入れずに学生は二つ目の大火球を放つ。それをミナミは先ほどとは逆方向に側転し回避する。
学生は更に連続で大火球を放つ。ミナミは連続側転とバック転を駆使し回避していく。
学生の攻撃の手がどんどん激しくなっていく。ミナミは体操の床の選手のように飛び回りながらすべての大火球を回避していく。
「ほらほらどうしたよ!?さっきの勢いはよぉ!」
ミナミが攻めて来ない事で気が大きくなったのか、学生はミナミを煽り始めた。
ミナミは学生の煽りを気にも様子もなく。大火球を回避し続ける。
激しく動きながらも、ミナミの眼は学生と大火球の動きを確実に捉えている。その瞳は先ほどよりハッキリと青く輝いていた。
ミナミは攻めに行かず、スリーの言う、”観る”という事に意識を集中させていた。
ミナミは回避しながら眼で得た情報を整理しする。
火球は直線的にしか飛ばず、追尾能力はない。
学生は明らかに戦闘慣れしていない。
左手から放たれる火球の方が弾速がわずかに遅い。
これらの情報から、ミナミは一つの作戦を思いついた。
「・・・よし、やってみるかな」
ミナミは側転回避から次の大火球をバック宙回避すると、着地と同時に学生の左側へ回りこむように走り出した。
「チッ!チョロチョロすんじゃねぇ!」
学生は、走るミナミに大火球を放つが、ミナミが通り過ぎた所に着弾する。
次の大火球も、その次の大火球も、ミナミには当たらないかった。
「クソッ!」
学生は後追い射撃では当たらないと気づいたのか、ミナミの進路に置くように大火球を放った。
ミナミの眼はそれを見逃さなかった。学生が狙い方を変えた瞬間、左腕の擬体で空間を掴み、勢いを殺さず直角に曲がり、学生の懐まで一気に距離を縮めた。
「何!?」
ミナミの突然の方向転換に、学生は全く反応出来なかった。
ミナミは学生の顔面を右手で鷲づかみにし、大きく踏み込み、体重を乗せながら地面に叩き付けるように投げた。
学生の身体が浮き上がる。このまま地面に叩きつけ、気絶させればミナミの勝ちだった。
だが、あと一歩のところで、それは失敗に終わった。
「うおおおおおお!!!」
雄叫びと共に、学生の全身が発火し炎に包まれた。ミナミは投げるのを中断し、急いで飛び退いたが、掴んでいた右手の擬体が燃え上がっていた。急いで火のついた右袖を肩から引きちぎり、そのまま右手の擬体を包み、鎮火させた。
「熱ちち・・・マズった」
ミナミは擬体の様子を見た。擬体の手の平は剥がれ落ち、人工筋肉が剥き出しになっている。
コレじゃ使い物にならない。どうする?ミナミは状況を打開するため、必死に考えを巡らせた。
「ハハハハハ!こりゃスゲェ!コレなら俺は無敵だ!」
炎の鎧を身に纏った学生が一歩一歩、ミナミに歩み寄る。学生の通った後のアスファルトがグニャリと溶け、変形していた。
「どうしたどうした~?今なら泣いて土下座したら許してやらねぇことも無いぜ~?」
完全に勝った気でいる学生を、ミナミは静かに睨み返した。ミナミの瞳が、再び青く輝く。
考えを巡らせた結果、ミナミはいくつかのプランを思いついた。
一.隙を見て撤退し、立て直す。
二.右腕の擬体を犠牲にして強引に仕留める。
三.それら以外。
まず、『一』はありえない。丸一日かかってようやく見つけた犯人を逃したくない。
ミナミはプラン『一』を頭から削除した。
なら『二』はどうか。右腕の擬体を捨てる覚悟で行けば仕留められるであろう。だが、その考え方は今後の為にならない。擬体だからといって無茶なことをしていては、いずれ命を落とす事になるだろう。何よりあの男が二つ返事で擬体を治してくれる保障は何処にもない。ミナミはプラン『二』を頭から削除した。
すると残るはプラン『三』、それら以外だ。ミナミは小さく笑った。
「フフッ」
「あ?何がおかしい?」
「別に。ただ片手を潰しただけで勝った気になってるからさ。思わず笑っちゃっただけだよ」
「んだとぉ?」
ミナミは学生を挑発すると、真っ直ぐ向き直り、構えた。右腕の擬体から一切の力を抜き、左腕の擬体に全神経を集中させた。
ミナミの辺りに銀のコロイドが立ちこめる。
学生は右手を上げると、頭上に今までの火球とは比べ物にならない程の、超巨大火球を作り上げた。
「だったら勝ってみろよ!なあ!」
学生は超巨大火球を振りかぶった。
ミナミの眼は、学生の全身に流れる魔力を捉えた。
学生の身体を覆っている炎の鎧も、頭上に形成されている超巨大火球も魔力で燃えている。それらの魔力はある一点から放出されていた。
その一点は不自然なほどに大量の魔力を有していた。魔眼は気温や風、あらゆる情報を捉え、その一点までの理想軌道をミナミの脳にフィードバックした。
「燃えてなくなれや!!」
学生は豪快に超巨大火球を放った。それと同時に、ミナミの左手が動いた。
学生が放つ寸前、ミナミは左太もものホルスターから銃を抜き、見事な”早撃ち”を決めた。
放たれた銀の弾丸が、学生の右肩に突き刺さり、激しく炸裂する。
炎の鎧は爆散し、学生の右腕は肩から吹き飛び宙を舞った。
「ぎゃあああああ!」
学生は断末魔のような叫びを上げる。
放たれた超巨大火球は形を失い、ミナミに到達する前に霧散していった。
右肩を押さえながら、学生は後ろに倒れ、ピクリとも動かなくなる。
「試し撃ち、しておくんだった・・・」
ミナミの脳裏にあの男の言葉がよぎった
『まだ出力とか調整してないから。物に向けて撃っちゃダメだからね。』
ごめんなさい、次からはそうします。ミナミは心の中であの男に謝った。
突然、ミナミはその場にへたり込んでしまった。
「あれ?おかしいな・・・・」
激しい戦闘で消耗していたところに、未調整の放出系魔武器を使ったため、ミナミは人生初の魔力切れを起こし、動けなくなったのだ。
数分座ったまま呼吸を整えると、近くの車止めに寄りかかりながら立ち上がり、ミナミは学生の許へ向かって歩き始めた。
「生きてる、よね?」
学生の周りには、先ほどまで纏っていた炎の一部がまだ燃えていた。
崩れる様に腰を下ろすと、ミナミは倒れている学生の口元に手をかざした。
「よかった、息はしてる・・・」
安堵するミナミの後方に人影が現れ、声をかけた。
「ご苦労だったな、スリー」
ミナミは驚き、声の主の方へ振り向いた。
そこにはグレーのスーツに身を包み、タバコを咥えた豊満な身体の女性が、ゆっくりとミナミの許に向かって歩いていた。
「ん?知らん顔だな。あぁ、新しく弟子に取った子か」
ミナミは無理やり立ち上がり、臨戦態勢を取った。
「・・・どちら様ですか?」
「ん?聞いてないのか?私は雨宮サキ。君の所のグラサンの友人だよ。」
そう言うとタバコを一口吸い、指で摘み路上に捨てた。
捨てられたタバコが地面で跳ねると燃え上がり、跡形もなく消え去った。
「そう殺気立つな。私は敵じゃあない。すまんが話はまた今度ゆっくりしよう。今はこの子を引き取らせてもらうよ」
サキは何処からか応急キットを取り出すと、学生に手早く処置をはじめた。
「ガーゼをくれ」
「え?」
「何をボサっとしている?ガーゼだ、早くしろ」
「は、はい!」
ミナミは臨戦態勢を解くと急いでサキの傍に座り、処置を手伝った。
処置を終えると、サキは学生を担ぎ上げた。
「すまんがそこの腕拾ってくれ」
吹き飛ばした学生の腕を拾い上げると、切断面から血が滴り落ち、アスファルトに新たな血溜まりを作った。
「ど、どうぞ」
「そのまま渡すな馬鹿者。キットに袋があるだろ。それに入れろ」
「すいません!」
険しい表情のサキに怯えながら、ミナミは応急キットから袋を取り出し学生の腕を入れ、サキに手渡した。
「では失礼するよ。あまり帰るのが遅くなるなよ、”女子高生”」
そう言い残すと、サキは術式を展開し、煙の中へと消えていった。
激しい戦闘の跡が残る大通りに、ミナミは一人取り残された。
「・・・・どうしよう。帰って報告すればいいのかな?」
途方に暮れるミナミの許に駆け寄る人影があった。
「居た!!東さん!」
息を切らしながら、福原がやって来ると、開口一番、文句を言い放った。
「もう!どうなってるんですか!騒がしいから来てみたら突き飛ばされるし!東さん飛び出してきてどっか行っちゃうし!言われた通り奥に行ったら横山カオリは血まみれで倒れてるし!」
「ごめんごめん、今度ちゃんと説明する――」
ミナミがなだめようとした時、福原はあることに気が付き、絶叫した。
「きゃー!!!東さん!手!どうしよう!?止血!?消毒!?」
「大丈夫だから落ち着い――」
「先に救急車!?119番!?あれ!?110番!?あっ!タオル持ってた!」
福原は完全にパニックになってた。
「福原さん!」
「ひゃい!?」
ミナミが大声で呼ぶと、ようやく福原は大人しくなった。
ミナミは呼吸を整えると福原に諭すように話し出した。
「ウチのところ病院だから。整形外科だから。帰って診てもらえば大丈夫だから」
「あぁ、そうでした、東さん家そうでしたね・・・すいません」
「じゃあ、帰ろうか」
「はい、そうしましょう」
二人は駅を目指し歩き始めた。
「終電間に合うかな?」
「とっくに行っちゃいましたよ」
「どうしようか・・・」
そう言いながら、二人は夜の街へと消えていった。
斯くして、東ミナミ最初の仕事は、幕を閉じた。
最後までご覧いただきありがとうございました。
本作は初めて書いた小説の加筆修正版です。
その為すでに別サイトにて完結しております。
至らぬところ多々あると思いますが、それでも続きが見たいと思う方はお手数ですがそちらのサイトへお願いします。
こちらに投稿しなおしたのは以前に「餅は餅屋だ」と助言を受けていたのと、ここ最近になって1話目をもう少し良くできるんじゃないかな、あの話カットせずに入れておけばよかなったと思ったからです。
良ければ感想をよろしくお願いします。
ありがとうございました。