008.52 ダンゴムシの交尾はドッグスタイル
だんごむしはみたことない
「え?ゾウリムシじゃなくて?」
「ゾウリムシじゃないですよー、ダンゴムシですよー。ウチのマンションの周りには両方いますよ?」
何でその話になったのか、今となってはすっかり思い出せないのだけれど、すでに入社して三年目を迎え、社内に置ける立ち位置と、ポジションを手に入れた同僚の田所さんは自信に満ちた表情で、そう言った。
「ダンゴムシの存在は知っているけど、子供の頃から一度も自分の生活している範囲では見たことはないよ。だってダンゴムシを見たことがないから、ゾウリムシを捕まえては体を無理矢理丸くして、ダンゴムシって言っていたくらいなんだから。たぶんこの街にはダンゴムシは生息していないんじゃないだろうか」
僕はそう言った。
「いや、いますって。毎日見かけますもの。コロコロしていて可愛い奴なんですよ。じゃぁ、こんど捕まえて持ってきてあげますよ」
「いや、いいから」
ネットで検索してみると、やはり本来ならば私の澄む地域はダンゴムシの生息圏ではないのだけど、内地から引っ越しなどで付いてきたダンゴムシの繁殖が限られた地域で確認されているという。
ゴキブリも同じである。
「きっと田所さんの住むマンションに、内地から引っ越してきた人がいたりして、近所で局所的に繁殖したんだろうね」
私がそう言うと、田所さんは納得したようで、
「こんど捕まえてきますから」
と笑ったのだった。
「それで、昨日仕事から帰ってダンゴムシを捕まえようとして捜したんですけど、ぜんぜん捕まらないんですよ」
翌日の朝一でおはようございますの挨拶と共に、ダンゴムシの話を始める田所さんであった。
「いつもは沢山いるのに、捜し始めると見つからないなんて、まるでマーフィーの法則かと思いましたよ。それで仕方ないから少し大きめの石をひっくり返したりしてみたんですよ。そうしたらようやく見つけたんですけど、何かいつもと違うんです。よく見たら……交尾してたんですよ」
田所さんは満面の笑みでそう言うと、スマホで撮影したダンゴムシの性交画像を見せてくれた。
「犬とかと一緒ですよwワンワンスタイルですよw 初心者に優しい後背位っていう奴ですね」
まるで昆虫図鑑の貴重な写真のようなダンゴムシの性交画像を見せられたのだけど、さすがにちょっとリアルで引いたよ、田所さん。
きょうくん
まじひくわ




