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008 もう書くことが無くなってきたのだけれど、仕方ないので会社が潰れた裏話を、うわさを少し書こうと思うのだけど、本当の事は僕にはもう解らないのであしからず。

なにもないがある

 流石に倒産して一週間も過ぎると、何も書くことが無くなって来る。

 何が理由で倒産したとか、その前から兆候はなかったのかとか、細かい部分はあるのだけれど、基本的には社員に何も知らせないままに、事態は進み、社員の知らないところでわわって行ったと言うのが正直な感想である。

 もちろん、業界自体の不振とか、仕事を集められなかったとかいう問題は当然の様にあって、僕がまだあまり触れていないのは、それ以外の事についてである。

 その会社その会社に、それぞれの事情があって、残っていく会社もあれば、僕が働いていた会社の様に、消えていく会社があるのだけれど、その潰れる所と潰れないところの差と言う部分が、基本的にほとんどの社員がわからないまま潰れてしまったというのが本心である。

 デジタル化やネットに仕事を取られた上に、価格競争と原材料の高騰と言う三重苦に見舞われていた僕の所属する業界は、職種消滅の危機にあると言っても過言ではない。

 パン屋がパンを作るように、肉屋が肉を売るように、私の会社も商品をうっていたのだけれど、その業界大手はとっくに見切りをつけて、それ以外の事業に手を出して、そちらの利益の方が本業の利益の何倍にもなっており、もう本来の業務を辞めてしまうのではないかと言う憶測があるくらい、末期症状なのである。

 古代エジプトでピラミッドを作っていた職人が、ある日を境にもうピラミッドは作らないことにしたからおまえらもう来なくていいよと言われたようなピラミッド建設業界に激震が走り、職人たちが悲観に暮れ、翌日からどうやって暮らしていこうかと言うくらいのポールシフトである。

 そんな状況下で年々売り上げが下がっていき、社員の残業代も休日出勤代も会社の利益にしなければやっていけなかった会社がそんな状況になれば苦しくなるというのは通りであり、その解消のために他所の会社と組んで新しいことをやろうとしたという事が息を止める原因の一つになったとは聞いている。

 最初は両社とも手と手を取り合って共に協力してやっていきましょう的な良い関係性で始まったらしいのだけれど、それが次第に噛み合わなくなっていき、その噛み合わなさが更なる問題を呼び、その問題で対立が激化して、いざ始めましょうかと言った段階ではもはや修復不可能なことになっていたという噂を聞いている。

 あくまでも噂であり、全て社長一人で相手の会社とはやり取りしていたのでどういう経緯でそうなってしまったのかなんて事は社員は誰一人として解っていない。

 ただその会社の営業が僕が勤める会社に来た時に、ウチの社員達の目の前で、その営業さんに向かって裏切り者だの、あの会社のせいでひどい目にあっているとか、スパイしに来たなどと社長が罵り始めたのを見て上手く行っていないという噂は本当だったのだと理解することはできた。

 人前で恥をかかされた営業さんが、当然の様に頭に来ないわけもなく、それが更なる亀裂を生み修復不可能な状態になったのは当然の結末である。

 そしてそんな関係性が一社だけでなく、二社となり、三社となりと包囲網が狭まっていき、とうとう身動きが取れなくなって社長は結論を出したという。

 まぁ、早い話が金を払っていなかった。

 払える所には払っていたが、払っていないところがいろいろとそのことに対して最終通告を出してきて、その為に仕事を回すことが出来なくなり、さらに仕事を取ってきても対応できないので、仕事を取ることが出来ずに断るようになり、そんなところに仕事など頼むところも無くなって、これから立て直すことも不可能と言う音である。

 細かい所は憶測ばかりで、何で対立するようになったかは本当の意味で社長以外に解らないのだけれど、多くの社員は社長の性格によるもので、単純に取引先とケンカになり、感情的なところで取引が止まっているのだと思っていたのである。

 誇り高い社長は仕立てに出るという事が出来ず、相手がどんな大手だろうと自分たちは下請けじゃねぇと言い張った。 

 協力会社だと。

 仕事を発注した先が混んでて、こちらが求める納期では出来にと言われると、仕事と言うのはそういうものじゃないと電話の向こうの担当営業に説教をはじめ、キレられて電話を切られたり。

 社員のものの言い方に腹を立て、自分の机の上にあったノートパソコンやらスマホやら書類やらをちゃぶ台返しして、その社員に殴りかかろうとして押さえつけられたり。

 会社のいたるところの壁に怒りの鉄拳を撃ち込んだ穴が開いていたり。

 問題が起きて会議が開かれたりした時に、社員が発言しても全否定されるのは解っているので誰も発言しなくなり、社員は社長のいう事を聞くだけの場になったり。

 昨日言ってたことと、今日言ってることが正反対の事だったり。

 どうでもいいが自分の趣味であるスポーツのNPO法人に入ったりして、スポーツの大会や普及活動にいくらかは解らないけれど会社の金を入れていた疑惑とか。

 もう会社はダメだろうという末期の状態の中、そのNPO法人が開催する大会の打ち合わせを会社の事務所でしていて、それを見た社員の多くが会社がこんな明日にも潰れそうな状態の中でやっているとは、もう頭ごかしくなっているんじゃないかと言う社員もいたのである。

 もちろんもう明日潰れることにしていても、その時までばれないように対応してくれと弁護士から言われていたのだと思うのだけど、それにしたって社員に持病で通院している者もいるというのは解っているのだから、せめて少しくらいの配慮を見せてくれてもよかったのではないだろうかと思うのだ。


 閑話休題。


 手に食玩愛。

 いや、手に職がない。

 あるにはあるのだけれど、すでに廃れていて、機械の生産も終了している。

 それ専門の会社は20年前なら地方都市でも数社あったのだけど、今はネットで検索する限りでは東京圏に数社と大阪の方に数社しか検索で出てこない。

 現役の職人さんは日本にもう50人もいないんじゃないかと思う。

 なんて潰しの利かない職種で何十年も働いてしまったのだろうかと後悔してしまう。

 これからハローワーク通いの日々になるのだが、何もできない46歳を雇うところがあるだろうか?

 まあないだろう。

 職業訓練とかやらなきゃならにとは思う。

 この前、ハローワークに行ったときにちらっと見たのだけれど、webデザイナーとか基本PC操作とか、介護系もあったので受けてみようかとは思っているのだけれど、前にもらっていた給料より多くなることはないのではないかと思う。

 もちろん、残業代とか休日出勤代がきちんと出る所を目指すわけだけれど、今は今でギリというか、親父が働けなくなった時、全く足りていないレベルなので、ほぼ人生積んでいるようなものだ。



 閑話休題。


 親父が社員旅行で石垣島に行くという。

 息子がこんな時にとは思わないのだけれど、親父のが勤める会社はほぼ毎年社員旅行に行っていて、いつもは那覇なのだが、今回はさらに足を延ばして石垣島。

 72になる親父にとって面倒くさいらしいのだが、記者の行事だから仕方ないと言っている。

 そう言えば僕が勤めていた会社では一度も社員旅行と言うものは無かった。

 年に一度の忘年会。

 新入社員がいれば、その前に辞めた社員を呼んで、歓送迎会が行われるくらいだった。

 社長は飲まない人だった。

  

 飲めばいいというわけじゃないが、飲むのが好きな人もいるという事を解らなかったのではないかと思うのだ。

きょうくん

 だれもしんじつはわからないししったところでどうにもならない

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