4話 遺書
人懐っこそうに。
エルフのような長い耳をした毛。
ふさふさの生き物。
足元で頬をすりすりしていた。
「…♪」
「……」
なんだかとても嬉しそうである。
くだらないテレビ番組が流れている。
エアコンの風の音。
部屋のドアが開いた。
買い出しに行ってきた彼女が戻ってきた。
「あら何か書いてたんだ」
「ちょっとね」
「じゃあこれ飲んで」
「はい」
そう言うと俺のぶんまで買ってきていた。
がぶ飲みミルクメロンソーダ。
「?」
「ポリシー気にしちゃう感じ?」
「だったらいらないかな」
「いや飲むよ」
そう言ってジュースに手を伸ばす。
俺は石田三成じゃないから。
「なつかれているな」
「あれは何だ」
目の前に何かが立っている。
一風変わって獣のようである。
が、その言葉がわかるようであった。
クスクス
彼女が笑っている。
口元を押さえて、
「死にたくない」
「え、なんたって?」
彼女が片方のイヤホンを外す。
「あ、ごめん」
聞こえていなかった様だ。
良かった。
しゅわしゅわと口の中で弾ける。
喉の喉に飲み応えが感じられる。
この商品はやはり美味しい。
やがて意識が遠のいていく。
机の上。
飲みかけのがぶ飲みミルクメロンソーダ
キュッという音がする。




