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真の勇者の定理とは  作者: 山本羽布実
第一章 世界の洗礼
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第七話 王都の真実

湊人が放った言葉にリエナは反論しようと思ったがが、湊人の見ていることを見て目を伏せることしかできなかった。

人が首輪で繋がれているのだ。それを見て湊人は息を荒げて言った。


「何なんだよこれは。こんなことが許されているのかよ...。」


湊人が驚いていると、鎖に繋がれている人が転んでしまった。


「何やってんだ!さっさと歩け!」


「きゃあ!」


鎖を握っている男が繋がれている女性を蹴りつける。その時湊人が駆け出した。


「おいっ!何やってんだお前!」


湊人が男の胸ぐらを掴み壁に叩きつける。


「何をする。貴様私は貴族だぞ。こんなことをしてただで済むと思っているのか?」


「それはこっちのセリフだ!こんなひどいことをするなんてそれでもお前は人間なのか!?」


「貴様王都の人間ではないな。今回のことは許してやる。早くこの場から失せろ。さもないと貴族の権限で貴様を処刑してもいいんだぞ。」


「貴族がそんな、ムグッ。」


湊人が何かを言おうとしたとき後ろからリエナが口を塞ぐ。


「すいません。私の連れがご迷惑をおかけしました。貴族様の寛大なお心に感謝致します。」


「ふん。二度目はないぞ。」


そう言うと貴族の男は鎖を引っ張って立ち去っていった。


「何するんだよ!リエナはあれを見てなんとも思わないのか!?」


「思ってないわけ無いでしょ!でもあれ以上反抗してたらあなたは殺されていたかもしれないのよ!」


「何なんだよ王都っていうところは。」


湊人がそう言うとリエナが一年前と口を開く。


「一年前王都に魔王軍が攻めてきたの。その時勇者様はいなくて、王国軍は王都に魔王軍を入れるわけにはいかなかったからスラム街に魔物たちを閉じ込めたの。でも..。スラム街に住む人たちは家を失って、貴族たちがそんな人たちを奴隷として売り物として買うということになったの。」


「そんなことをしてても王様は何も言わないのか?」


「言ったわ。でも貴族たちは言うことを聞かなかった。もちろんそのことは問題になったわ。でも奴隷の人たちは住む場所も食べるものもない。だからあえて奴隷でいて食べ物をちょっとでもなにかもらおうとしているのよ。」


「なんだよそれ。クソッ!」


湊人は中学生の頃に歴史の授業で奴隷船など中世の頃のことは学んできて。もちろん奴隷についても学んでいた。人であることを否定される奴隷、それが目の前で起こっていることに湊人は耐えることができなかった。


「リエナ...。今から言うことは本当に馬鹿で無謀なことだと思う。それでもいいって言うなら聞いて欲しい。」


「うん。いいよミナトには命を救われたし。それにミナトが言うことには絶対意味があるって思ってるから。」


「ありがとう。俺は今からスラム街に行こうと思う。今の現状だけでも見ておきたい。あわよくば俺たちだけで魔物たちを殲滅する。」


「わかった。でも危険だと思ったらすぐに逃げるわよ。」


「それでいい。ありがとう。恩に着るよ。」


二人は話を終えるとスラム街に向かう。王都の中心から少しずつ離れるたびに街の雰囲気が廃れていく。もうそこは完全に王都とは違う場所に見えた。すると湊人たちは鉄格子の前に着いた。


「ここから先がスラム街か?」


「そのようね。ここから先は魔物の巣のようなものよ覚悟は出来てる?」


「それはこっちのセリフだよ。まあ、いざとなったらまた守ってやる。命に代えても。」


「いえ、これは命を大事にしていく作戦よ。お互い死なないわ絶対に。」


「そうだったな。いざとなったら逃げる。よし、行こうか。」


「ええ。」


鉄格子を越えて二人は歩く警戒して歩いていたが、魔物の姿は確認できなかった。


「全然いないじゃないか。もういなくなったのか?それなら一安心なんだけど。」


「いえ、いるわねこっちから大量の気配を感じるわ。」


リエナは気配のする方へと歩いて行った。


「なっ!?」


声を上げたのは湊人だった。しかし、この現状を見て声を上げずにはいられなかった。


「これは想像以上にひどいわね。湊人どうするの?私は一度撤退して応援を呼んだほうがいいと思うけれど。」


「そうしよう。これは僕たちだけでは解決できないかもしれない。」


スラム街の状況は最悪といってもいいほどだった。街を見渡せばわかる限りで数百匹いると思われる。しかし、家の中にも魔物がいた場合その数はとてつもないことになるだろう。この時の湊人たちの判断は正しかった。


王都に戻って湊人たちがとった行動は早かった。旅人や冒険者が集うギルドへと赴き、スラム街の奪還を頼もうとしたところまではよかった。しかし、ギルド側がスラム街奪還をよくは思っていなかった。


「今、やることでしょうか?そこまで魔物の数が多いなら、後から時間をかけてやっていくべきだと思うんですが?」


「確かにそのとうりだと思います。でも後からっていつやるんですか?実際一年間も放置していたそうじゃないですか?」


「こちらにも事情というものがあります。スラム街の魔物の数を調べてきてくれたのはとても有難かった。この問題は王宮でも問題としてちゃんと捉えられています。然るべきが来た時に動くはずです。」


そんなことを言って本当に動くのだろうか?湊人とリエナは疑問に思っていたが。ここにいるだけでは埒が明かないので、一旦ギルドを出ることにした。


「あれは当分動きそうにないわね。」


「そうだね。でも俺たちの力であの数が相手にできるかわからないし。」


湊人とリエナが今後について話していると、小さな足音が近づいてくる。湊人が振り返り足音の正体を発見した。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん!街を救おうとしてくれてるの?」


女の子はグイっと湊人たちに食いつき気味で話しかけてくる。


「そうなんだけどな、お兄ちゃんにはできないかもしれない...。」


「え...。」


女の子が顔を俯かせる。それを見てリエナが女の子に話しかける。


「あなたスラム街に住んでたの?」


「うん!!」


「名前は?」


「クレアだよ!」


「そう、パパとママは?」


「今は、偉い人に働かされてる。でもね、お姉ちゃん達のこと聞いてこの街も変わってきたってパパ言ってた。」


「私たちの...?」


「うん。お兄ちゃんが偉い人に逆らってまで守ってくれたって。」


「ああ、そうか。あの人はクレアのお母さんだったのか。」


「だからね。もうパパとママが苦しまないようにして欲しくてね、お兄ちゃんたちに頼みに来たの!」


「そうか、クレアはパパとママが大好きなんだね。」


「うん!好き!」


湊人はこの時誓った。この子の笑顔は奪ってはいけないと。


「リエナやっぱり俺...。」


「わかってるわ。仕方ないわね。あんな無邪気な笑顔見せられたら頑張ろうってなちゃうわ。」


「ああ。そうだな。よしゃ、頑張ろうか。今日は必要なものを揃えよう。」


「そうね。じゃあ行きましょうか。」


そう言って湊人たちは王都の商店街に向かった。

ポーションいざという時の予備武器。必要なものを買って、揃える。気がつけば日が暮れかけていた。


「そろそろ帰ろうか。」


「そうね。」


二人はそういい宿を探す。お手頃な値段のところがあったので、そこに決める。宿に着くと早速明日の作戦を決めていた。


「魔物は夜行性もいるけど、大体が私たちと同じで夜になると寝るわ。そこを狙いたいと思うわ。」


「そうだね、魔物が混乱している隙に一気に叩く作戦だね。」


「そうよ。でもこれも同じよ、命を大事にしていくわ。ここで死んだら元もこうもないもの。」


「わかった。」


二人は作戦会議を終え寝床に入る。その時湊人もリエナもそこにはもう一人人がいたことに気がつかなかった。

スラム街奪還作戦まで残り二十時間。





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